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HMVインタビュー:DJ HIROKI

Wednesday, February 3rd 2010

interview

DJ Hiroki

DJ HIROKI インタビュー
聞き手:西崎信太郎(HMV渋谷)

日本人のR&B DJで楽曲プロデュースやREMIXワークで作品を量産するDJは極僅かですし、そういった文化がまだあまりないですよね。海外だったら当たり前ですけど。日本でも色々なDJが制作をやるようになって、それぞれのカラーが出るようになればいいと思います。でも色々と企画は考えていますよ。

--- オフィシャルMIX CDの3作目、リリースおめでとうございます。前作のタイトルと同じで、今回は「CLASSIC」ということですが、 これは以後シリーズ化したいという思いで?

いや、そういった訳ではないのですが、今回は選曲がR&Bのクラシックが多かったので、まぁその流れでみたいな。

--- 前作リリース後、HIROKIさんの中でDJとしての変化はありましたか?

前回も今回のもそうですが、自分のオリジナルの楽曲が入っているじゃないですか。だから自分の曲が増えたかなっていうのが一番大きいですかね。

--- 確かにそうですね!日本人アーティストの楽曲もプロデュースされていますし。今回のMIX CDにもオリジナルの曲が入っていますね。

今回はR&Bクラシックの楽曲、4曲のカバーをプロデュースしました。AROUND THE WAYの「REALLY INTO YOU」、MARIAH CAREYの「EMOTIONS」、CRAIG DAVIDの「TIME TO PARTY」、SHANICEの「I LOVE YOUR SMILE」の4曲です。

--- この4曲を選んだ基準は?

これは単純に自分が好きだっていうのと、これらの曲の今風なのがあれば良いんじゃないかという思いで。

--- 他に候補はあったのですか?

他にも色々あったんですけど、この4曲にすんなり絞れたっていう感じでした。MARIAH CAREYの「EMOTIONS」のカバーって無かったですからね。 AROUND THE WAYの「REALLY INTO YOU」やSHANICEの「I LOVE YOUR SMILE」のカバーは、R&Bに限らずHOUSEやラヴァーズのカバーはありましたが。

---AROUND THE WAYの「REALLY INTO YOU」など既存のカバー曲がある中で、HIROKIさんのこだわりをどう表現されたのですか?

SHANICEの「I LOVE YOUR SMILE」はそこまでフロア栄えは意識していなくて、お洒落よりなイメージで。やっぱり原曲には敵いませんからね(笑)。 AROUND THE WAYの「REALLY INTO YOU」は、原曲のBPMが94くらいだったと思いますが、オリジナルよりBPMを上げて113くらいの速いバージョンにしました。 でも、AROUND THE WAYはリリース当時から売れていなかったですし、遅咲きというかジャパニーズヒットですよね。

---確かに。本国で「REALLY INTO YOU」のカバーはありえないですよね(笑)。

日本人くらいしか知らないんじゃないですかね?KOMORIさんがカバーされて、その前にも日本語のカバーもあったりとかして。日本人はこの曲大好きですよね。

---楽曲を作る際はどういったイメージで作るのですか?

新譜を聴いてインスパイアされ似てしまう部分も多少あります。でも今の日本人アーティストは新譜色強かったり、USっぽい曲が多いですよね。音は完全にUSっぽくても言葉が日本語っていうだけで、ニュアンスも違ったりして良い意味で違和感もなく。

---HIROKIさんは今までも日本人アーティストの楽曲をプロデュースしてきましたが、今後も?

それは勿論やっていきたいですね。こと日本人のR&B DJで楽曲プロデュースやREMIXワークで作品を量産するDJは極僅かですし、そういった文化がまだあまりないですよね。海外だったら当たり前ですけど。日本でも色々なDJが制作をやるようになって、それぞれのカラーが出るようになればいいと思います。でも色々と企画は考えていますよ。





---一昔前に比べれば、オフィシャルのMIX CDでも色々なDJが出てきましたよね。その辺りの現状についてはどう思われますか?

時代なんじゃないですかね(笑)。繋ぎの感動やMIX CDでしか出せない事って多いから、そこは面白いですよ。でもオフィシャルは楽曲が限られちゃいますが(笑)。

---限られた楽曲でのMIX、そこはどうクリアするんですか?

今回は40〜50曲くらいの楽曲があって、その中から29曲でMIXしました。今回はキャッチー系の王道っていう感じですね。この辺りの楽曲ってMIX TAPEを作りだした時に使っていた曲が多くて。R&B のクラシックに飽きた後に流行った所謂「ヨゴレ系」っていうやつです(笑)。FLIP DA SCRIPとかTONI COTURAとか。自分がこういったジャンルが好きになったキッカケの曲を入れました。でも最終的にはまとまりは良かったですね。

---確かに一時流行ったというか、ヨーロッパ物が突如現れた時期がありましたね(笑)。

US物が見えちゃったというかある程度掘り尽くされた後に、皆ヨーロッパにはしって(笑)。

---あれは2000年前後でしたっけ?

6〜7年くらい前だったかも。色々なレコ屋が掘り出して、ちょっとしたブームでしたね。

---今回の「WE LOVE R&B CLASSICS」に収録の中で一番思い入れが強い曲は?

FLIP DA SCRIPの楽曲ですかね。当時、そういった誰も知らないヨーロッパ産R&Bを扱うレコ屋があったんですよ、1,800円で売ってたりして。その時はグランドビートが流行っていたんですけど、ヨーロッパ産のキャッチー系を聴いたら意外とかっこよくて。皆行ってましたよ、マイク(DJ MIKE-MASA)とか。開店前から並んで皆で取り合いでした(笑)。それを 自分が出ているイベントでかけたりして。皆その店で売っているのを知るとどんどん客が増えちゃって、値段も上がっちゃってみたいな(笑)。DJが掘って、クラブでかけて、ブートが出る、みたいな流れがありました(笑)。あの頃はシーンがそういうものだったけど、今はもう、その流れは全くないですね。

---レコードも相当買われて。

その時はレコードばかり買ってましたね。とりあえず、このマニアックなレコードを買っていたのは俺とマイク(DJ MIKE-MASA)ですね。

---FLIP DA SCRIPは今でもクラブでかけるんですか?

かけないですね(笑)。

---え?そうなんですか(笑)?

昔のもたまにかけますけど、キャッチー系はかけないですね。流れ的に難しいというか。かけてもTONI COTURAの「ON & ON」くらいです。でも90年代のクラシックはかけます。 BRAND NEW HEAVIESの「YOU ARE THE UNIVERSE」とか。あとはイベントによりますね。

---今の若い世代は、この辺りの曲を知らないですよね。

あ、知らないと思います(笑)。自分を含めてですが、DJが現場でかけないですからね。若い世代は知りようが無いというか(笑)。勿論、自分のスタイルを貫いて「キャッチー系」をかけ続けるDJもいますが、そのポリシーを持ち続けるのはカッコいいと思いますよ。リスナーを育てているんでしょうね、逆に自分から発信することで。

---HIROKIさんはレギュラーイベント+地方でもDJをやられていますが、どこの地方が熱いですか?

最近だと宇都宮じゃないですか。群馬も熱いですし、北関東熱いですね!宇都宮は衰えを知らないです(笑)。箱がしっかりしているというか、お客さんは付いていますね。近郊の他県からも人が集まっちゃうみたいな熱さです。正に外れがないです。

---そのイベントはR&Bオンリーで?

いや、オールジャンルですね。R&BだけのイベントってKOMORIさんとかの「APPLE PIE」くらいしか無いんじゃないですかね?都内でも少ないですから、地方はもっと少ないんじゃないですかね。シーンがそういう流れになっているというか、R&B DJでもオールジャンルかけますし。良い意味で進化していると思います。でも他のDJ達も「キャッチー系」はあまりプレーしないと思いますし、音的にやっぱり古いっていう括りになっちゃうんですかね。もっと古いダンスクラシックはかけたりしますが。

---HIROKIさんは元々ダンスクラシックから聞かれていましたもんね。

そうですね、元々97年くらいのHIPHOPから入って、ダンスクラシックとかFREE SOULとか聴いて。

---ダンスクラシックの中で一番好きな曲は?

DENISE LASALLE の「I'M SO HOT」っていう曲ですね。昔MUROさんが使っていた曲で。CDでは普通にあるんですけど、アナログ盤がUSのPROMO盤だけで凄く高くて、当時6万とか。1年前くらいにようやく買いました(笑)。今でもそれなりに値段は張るものの、当時からすればやっぱり買いやすくて。でも、今はDISCOでDJやっているんですけど、上の人からは「そんなの当時関係者から貰ったよ」みたいな(笑)。そんな年配のDJの方達も現場ではLADY GAGAとかかけますしね(笑)。

---昔の楽曲の知識もそうですが、HIROKIさんは新譜の情報量も多く持ってますし、情報早いですよね!

USじゃなくても、例えばフィリピンとかマレーシアとか、東南アジア系のDJって結構熱いですよ。あとブラジル。自分でREMIXバージョンを勝手に作ってネットにアップしたりしていたりとか。普通にカッコいいですよ。でも新譜の流れとは別に、やっぱり90年代のR&Bは好きですよ。

---最近、再び90年代のR&Bも再ブームの兆しも見えてきたんじゃないですか。

先ほどの話じゃないですけど、若いリスナーはクラシックと言える楽曲も知らないですよね。もうラウンジミュージックっていう括りなんじゃないですか?曲が良いのは分かるけど、盛り上がらないじゃんみたいな。だったらPITBULLの方が良いでしょ、っていう感覚じゃないですかね。

---昔の曲と、今の曲、どちらが好きってありますか?

それぞれの時代の良さがありますよね。嫌いな音楽とか別にないですし、単純に良いものは良いと思います。例えば、今のSTARGATEの音は勿論良いと思いますし、STARGATEがMIS-TEEQをUSで売り出そうとしていた時の音も良いと思います。今聴けばちょっと古いですけど、当時の2000年前後からするとかなり斬新だったと思います。

---当時の新譜はチキチキ系が主流でしたね。

あの当時、所謂「キャッチー系」とかが好きなR&Bリスナーが聴くっていったらMIS-TEEQとかだったと思います。チキチキ系が受け入れられず(笑)。正にあの時期がシーンの移り変わり、新譜の音に抵抗を持つ人も少なくはなかったような気がします。そこにちょうど未発掘のヨーロッパ産R&Bが日本に入ってきて、一つのブームにはなりましたね。

---当時のストリートのMIX CDも相当売れていましたよね。

こういうMIX CDが普通に5千枚とかそれ以上売れるってありえないですよね(笑)。正に時代でした。

---DJ側の意識とかスタイルも変わりましたしね。

昔は「この曲、どこで売っているんですか?」だったのに、今は「この曲、どこで落とせるんですか?」ですもんね(笑)。

---ちょっとマイナス思考的な話になりがちですが(笑)。HIROKIさんは今でもレコードやCDは買ったり掘ったりは?

レコード自体は買わなくなっちゃいましたがCDは買いますよ、100円のを掘ったりとか。勿論、昔のレコードは聴きます。

---HIROKIさんはレコード何枚もってらっしゃるんですか?

えー、どれくらいだろう?1万枚くらいじゃないですかね。CDはそんなに持っていないですけど。パソコンに落として処分しっちゃうDJの方もいますけど、自分は思い出と共に一生持っておきたいですね。例えばLORRAINE CATOとかのCDに入っていないバージョンとか、いざ聴きたくなった時に聴けるように。ジャケットもあったりして良いじゃないですか、そこはコレクター的なこだわりですかね。でも、元々はこういったマニアックな物って売れるとは思っていなかったですし、単純に自分が良いと思って買ったわけですし。

---次にMIXを作るとしたらどういった作品を作りたいですか?

色々面白い事はやりたいですけど、NEW JACK SWINGとか良いんじゃないですか。オフィシャルでもないですし。BABYFACEの「GIVE U MY HEART」とかBOBBY BROWNの「SOMETHING IN COMMON」とか、定番物が全部入っていたら面白いと思います。DISCOでDJやる時はBOBBY BROWNの「EVERY LITTLE STEP」がかかると、年配の人たちは皆踊りますよ!僕らが20年後にNE-YOを聴くイメージじゃないですかね(笑)。

---HIROKIさん的に90年代のクラシックと言ったらやはりその辺り?

そうですね、BABYFACE、EN VOGUE、SHIRO、WENDY MOTENとか。

---なるほど。色々とマニアックなお話を聞かせて頂きましたが、今年のHIROKIさんの目標は?

MIX CD制作、楽曲プロデュースなど、諸々面白いアイデアを考えて形にしていきたいですが、自分にしか出せないテイストをどんどん出していきたいですね。人の良い部分を広げるっていう事と、自分の良さを広げるっていうのが今年のテーマです。

---最後にHMV ONLINEをご覧の皆様へ一言お願いいたします。

NE-YO系、美メロ系もいいですが、たまにはキャッチーR&Bを聞いてみては!アナログ音源でしか聞けなかったレアなバージョンも沢山収録しています。恐らくこのCDでしか聞けないでしょう!正にキャッチーR&Bの王道MIX CDです。「キャッチー」という単語(笑)?に興味がある方は是非聴いてみてください。