エレクトロニクスと歌声の蒼き蜜月関係
新旧の要注目ビートメイカーが紡ぎあげるそれぞれのメランコリーとノスタルジー
前作『Black Sands』が世界中でヒットし、もはや現在の <Ninja Tune> を代表するアーティストまで登り詰めたと言っても過言ではないボノボことサイモン・グリーン。生楽器を多用した儚くも叙情的なフレーズは長きに渡り彼の音楽が愛されてきた理由のひとつであると言っていいだろう。3 年ぶりに届けられた最新作『The North Borders』でもそのメランコリックなノスタルジーは健在だ。シングル「Cirrus」を筆頭にむしろ、前作までブレイクビーツ主体だったリズムが 4/4 や 2 ステップ・ビートなどよりミニマルに、よりハウシーにスペースを作り出したことによってその情感が培養されて一層引き立つような進化が見られる。そして、今作においてもボノボは「歌声」と自らのエレクトロニクスを上品に、そしてエモーショナルにブレンドする意匠を発揮している。冒頭ではシネマティック・オーケストラにも参加するグレイ・レヴァランドと心地よいダウンテンポ・ソウルを、UK フォーキー・ソウルの才媛ジュアディーンの儚い歌声も絶妙な匙加減でアルバムに花を添える。ハイライトはエリカ・バドゥの参加だ。客演では実験的な歌唱も多い彼女のジャジーなメロウネスを見事にボノボは引き出してみせた。もう一人、新世代ならではの手法でエレクトロニクスと「歌声」を融解させる才能がラパラックスことスチュワート・ハワードだ。フライング・ロータスも墨をついた UK の若き才能は、チルウェイヴやポスト・ベース・ミュージックの中にピッチ・ベンドした官能的な R&Bサンプルを溶かし込むことによって、ラグジュアリーな独自の表現方法をいち早く手元に手繰り寄せた。ボーダーレスなジャンルの交配にもっとも寛容なポスト・インターネット世代から大きな支持を集める氏の初作では、期待通り「歌」も「声」も旋律やテンポから解き放つことによって、よりエモーショナルな音像を立ち上げている。歌声とエレクトロニクスの蜜月関係は静かに更新されながら、ノスタルジックなメランコリアを描き続けるのだ。
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※表示のポイント倍率は、ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

