Quiet Corner クワイエット・コーナー Vol.9

Quiet Corner クワイエット・コーナー

『トリス』〜この先に、同じ音が鳴っている

レーベル・ディレクターをしていて毎度悩むのが、リリース資料やCDにつける帯などで、アルバムの内容をいかに簡潔な文章で伝えるかということ。作品に惚れ込んで聴き込むほどに、ここは聴いてほしいと思う部分が細部に渡るまで現れてしまい、故に文章は長くなり、短くまとめるのにまた四苦八苦して…を締切まで繰り返してしまう。アンドレ・メマーリ/シコ・ピニェイロ/セルジオ・サントスという現代ブラジル音楽を牽引する3人による合作アルバム『トリス』は、僕が10年以上ディレクターをしてきて最も悩んだ1枚と言えるかもしれない。ブラジル音楽のさまざまな要素を取り入れながらも、クラシックやジャズなどを融合させた14曲は全て素晴らしいコンポジションが揃い、高い演奏力に支えられ緻密に練られたアレンジは愉しみどころが満載。3人の自由なひらめきが全編に渡って散りばめられているが、調和の美は決して失われることがない。この先に鳴るべき音のイメージがピタっと重なり合うこのアルバムを作っているあいだ、彼らはそんな感覚を幾度となく味わったのではないだろうか…と、この文章でもまた言葉を尽くして本作の魅力を記そうとしているわけだけど、果たして。最後に、機会があれば聴いていただきたい共演/合作アルバムの好盤をご紹介したい。音楽は個人的体験であり、音楽家同士、そしてリスナーである僕たちをつないでくれる素晴らしい媒介でもあるのだと改めて思う。
文●稲葉昌太(ディレクター / Inpartmaint Inc.)

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