【連載コラム】Akira Kosemura 『細い糸に縋るように』


profile

[小瀬村 晶 / AKIRA KOSEMURA]

85年生まれ、東京出身の作曲家・音楽プロデューサー。
07年「It's On Everything」でデビュー。同年、音楽レーベル「SCHOLE」を設立。
自身の演奏によるピアノを主体とした様々なスタイルの音楽作品を発表する傍ら、映画や舞台、CMの音楽なども手掛けるアーティスト。
壮絶な恋愛劇であるコンテンポラリーバレエ公演「MANON」(12)では、運命に翻弄される男女の人生に呼応するように美しくも儚い楽曲を、また、柳楽優弥が主演した劇場映画「最後の命」(14)では、かすかな希望と救いを感じさせるような、静けさのなかにも熱を帯びた胸を打つ楽曲を作り上げ、好評を博した。
15年には、ミラノ万博(ミラノ国際博覧会)日本館展示作品、au 三太郎 TV-CMといった話題の作品の音楽を手掛け、フラワーアーティストの篠崎恵美(edenworks)、写真家の新田君彦と共に制作した複合的アート作品「For」では、代官山蔦屋書店を始め、全国各地で巡回展を開催するなど、特定の分野に限定されることなく、自身の音楽の可能性を拡張し続けている。
近年では、IKEA、NIKON、KINFOLK、RADOといった国際企業とのコラボレーションも多く、米国最重要音楽メディア「Pitchfork」、豪州最大規模の発行部数を誇る新聞紙「THE AGE」にてその才能を賞賛されるなど、国内外に活躍の場を広げている。




こんにちは。

最近、子どもの成長が著しくて、ひとつひとつを見逃さないように生活するのが忙しくて、毎日があっという間です。
そんななか、子どもが自分で歩くようになって、自分の意思で笑ったり、泣いたり、怒ったり、わがままを言うようになってくると、ついつい自分の幼かった頃を思い出します。
自分の古い記憶は、断片的で、幼稚園に通っていたくらいの頃からしかないのだけれど、その頃の些細な記憶の出来事を辿って、自分にはこんなことがあったなぁ、こんなことを思っていたなぁ、というのを思い出しながら、この子はいまなにを見て、なにを思って、これからどんな出来事を体験していくのか、いろいろな想像を働かせては、それを身近で見守れることにわくわくして、にんまりしてしまいます。

でも、それと同時に思うんです。
ああ、僕はいつの間にか、すっかり遠くまで来てしまったなぁって。
人生は長くて長くて、小学校に上がるのも、中学校に上がるのも、高校に上がるのも、大学に上がるのも、社会人になるのも、恋をしたり、部活をしたり、受験をしたり、夢を持ったり、一人暮らしをして、結婚をして、子どもができて、そんなたくさんのことが、もっとずっと先にあると思っていたのに、いつの間にかすべて自分の記憶として、ひとつひとつ、きちんと自分の引き出しに仕舞われていて、子どもを見ていると、ついついその引き出しを開けてしまう。
それで、すごくリアルに実感するんです。ああ、僕はもう、大人なんだなって。

いままでは自分の年齢をみて、もう◯◯歳なんだから大人なんだろうなぁ、あんまりちゃんとしてないし、自分が幼い頃に想像していた大人とはかけ離れているけれど、まあ、そんなものだよね、大人になるって。
そんな風に思いながら、自分の意思で行動して、自分の事ばかりを考えて生きていたんだけれど、そんなつい最近までの自分を振り返って、まだ子どもだったんだな、と思います。

人は、自分以外の誰かの為に生きるようになって、ようやく一人前、大人になるんです。
なぜなら、僕が子どもの頃から見てきた大人はみんなそうだったし、それがたぶん、自分にとっての大人、というものを形作っていた正体だから。

昼間は仕事をして、それ以外の時間は子どもと家事。妻とやりくりしながら、毎日があっという間です。
でも、不思議なのが、時間は前よりもなくなったはずなのに、音楽はいままでよりも豊かになった、そんな気がします。質の面でも、数の面でも。

というわけで、三ヶ月振りに新しいアルバムが出ます。
今年二枚目の作品です。
作品についてはブログに書いたのでそちらを読んでもらえたらと思います。

息子よ。パパ、頑張ってるよ。


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