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TOP > My page > Review List of つよしくん
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9 people agree with this review 2010/11/23
プレヴィンは、ラフマニノフの交響曲第2番を得意とし、同曲を3回も録音しているが、本盤は2度目の録音。一度目の録音では短縮版を使用しているので、完全全曲版の録音としては、本盤が最初の録音となる。3度目の完全全曲版による録音(テラークレーベル)も名演ではあるが、角がとれた分、全体の構成が幾分弱くなった感もあり、プレヴィンのラフマニノフの交響曲第2番と言えば、やはり本盤を第一に掲げるべきであろう。それどころか、完全全曲版の魅力、ひいては、ラフマニノフの交響曲第2番という楽曲の真価を世に知らしめた不朽の名演と高く評価されるべきであろう。同曲は、ロシア風のあくの強さ、民俗色を強調した演奏(例えば、スヴェトラーノフ、ゲルギエフの新盤など)や、洗練された演奏(デュトワやラトルなど)があり、それぞれに魅力があるが、プレヴィンは、その二つの要素を巧みに絡み合わせた名演と言える。とにかく、聞かせどころのツボを心得ている感があり、感傷に流されることはなく、それでいて、情感の豊かさはいささかも失うことはないという、正に高踏的な芸術を構築していると言える。本盤をあらためて聴いて、プレヴィンの演出巧者ぶりを思い知らされた。録音も非常に良く、HQCD化によって、さらに鮮明さが増したのも素晴らしい。プレヴィンは、同曲にあわせて、交響曲第1番と第3番、交響的舞曲を録音しているが、いずれも第2番に劣らぬ名演であり、本盤と同様にHQCD化して欲しいと思った聴き手は私だけではあるまい。
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6 people agree with this review 2010/11/23
ショスタコーヴィチの15曲ある交響曲の中でも、第2番及び第11番(他に第3番も人気がない)は、最も人気のない部類に入ると思われるが、本盤は、そうした既評価を覆すのに十分な名演だ。特に、第2番については、これまでの数々のCDの中でも随一の名演と言っても過言ではないのではなかろうか。第2番は、早熟の傑作と称された第1番とは異なり、およそ交響曲とは言い難い独特の様式によって作曲されているが、ゲルギエフが指揮すると、起承転結のはっきりした立派な交響曲に聴こえるから大したものだ。冒頭の暗い抒情から、後半部の壮麗な合唱に至るまで、ゲルギエフは実に精緻に楽想を描き出していく。下手な演奏では取ってつけたように響くサイレンの音色も、ゲルギエフの場合は、決して唐突ではなく、楽想の中に見事に溶け込んでいるのが素晴らしい。第11番も名演。凡庸な演奏だと、冗長ささえ感じさせ、ウドの大木のように聴こえる同曲であるが、ゲルギエフの指揮によると、スケールの大きい、そして構成力のしっかりとした大交響曲に聴こえる。特に、全曲のクライマックスを、第2楽章の中間部ではなく、終楽章の終結部に持っていったのは素晴らしく、ゲルギエフがこの大交響曲をしっかりと理解し、全体像をよく把握していることがよくわかろうというものだ。SACDマルチチャンネルによる極上の高音質録音も素晴らしい。
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6 people agree with this review 2010/11/22
録音があまりにも良くなく、HQCD化しても、鮮明さは一向に回復せず、音が団子状態になるという致命的な欠陥があるが、そうしたハンディを補って余りあるほどの素晴らしい名演だ。何よりも、シフラの超絶的な技量に唖然とさせられる。叩きつけるような力強い打鍵や、夢見るような美しい抒情、堂々たる楽曲の進行など、幅広い表現力を駆使して、リストのピアノ曲の魅力が盛り込まれた難曲である超絶技巧練習曲集を完璧に表現し尽くしていると言える。例えば、「風景」の抒情豊かな美しさと、有名な「マゼッパ」の重量感溢れる迫力の著しい対比など、各楽曲毎の描き分けも見事であり、シフラが、圧倒的な技量だけでなく、表現力の幅の広さ、スケールの大きさにおいても、圧倒的な存在であったことがわかる。シフラは、リストの再来とも称されたとのことであるが、超絶的な技量とともに、圧倒的な表現力を必要とするが故に、リスト以外のピアニストには弾きこなすことが困難ではなかと考えられた難曲である超絶技巧練習曲集を、これだけ完璧に弾きこなしたことにかんがみれば、そうしたリストの再来との評価もあながち言いすぎではないと考える。前述のように録音は冴えないが、近年における、より高音質の同曲の演奏と比較しても、同曲のあらゆる名演中のトップの座を譲ることはいささかもなく、そして、今後も現れるとは考えにくところである。
9 people agree with this review 2010/11/20
若き日のジュリーニならではの壮絶な名演。ジュリーニと言えば、最晩年のゆったりとしたテンポ(中には、常識はずれのスローテンポの演奏もあり)による巨匠風の名演の数々のイメージが強いために、温厚篤実な演奏をする指揮者との印象を持たれがちであるが、若き日、特に1960年代の演奏は、凄まじいまでの迫力溢れる豪演の数々を行っていた。本盤は、そうしたジュリーニの若き時代の芸風を端的に表しているものと言える。ジュリーニは、数多くのイタリアオペラを指揮・録音しているが、本盤でも、そうしたイタリアオペラを得意としたジュリーニならではの歌謡性豊かな指揮と、若き日の生命力溢れる力強い指揮が見事にマッチングして、いい意味でのバランスのとれた至高の名演を成し遂げるのに成功している。カラヤンやクレンペラーの薫陶を受けていた、黄金時代のフィルハーモニア管弦楽団や、合唱団や独唱陣も最高のパフォーマンスを示していると言える。聖歌四篇も、レクイエムに勝るとも劣らない超名演であると高く評価したい。本盤で惜しいのは録音。大音量の際に音がひずむということで、特に、レクイエムではそうした欠点が著しい。HQCD化によっても、そうした欠点がいささかも改善されなかったのは、演奏が素晴らしいだけに大変残念だ。
1 people agree with this review 2010/11/20
ミュンシュはフランス系の指揮者の中では、珍しいくらいにレパートリーの広い指揮者であると言える。というのも、ドイツ音楽を得意とした点が大きいと思われる。もちろん、多くのフランス音楽を得意としており、数々の名演を遺してきたが、その中でも、他のフランス系の指揮者の追随を許さない名演を遺してきたのはオネゲルではないかと考える。オネゲルは、フランス系の作曲家の中では珍しく、ドイツ音楽に多大な影響を受けるとともに、交響曲を5曲も遺したが、そうした点も、ミュンシュがオネゲルを得意とした要因の一つではないかと考える。オネゲルもミュンシュを信頼して、いくつかの交響曲の初演を委ねている点をも注視する必要がある。本盤の第2も超名演。全体の厳しい造型をしっかりと構築した上で、第1楽章の悲劇から、終楽章終結部の盛り上がりに至るまで、隙間風のいささかも吹かない内容豊かな音楽が紡ぎだされていく。第2には、他にも名演はあるが、内容の深さ等を考慮すれば、ミュンシュ盤こそ最高の玉座に君臨する最高の名演と高く評価したい。ラヴェルのピアノ協奏曲も、フランス風のエスプリよりは、シンフォニックな重厚さを全面に打ち出したユニークな名演。HQCD化によって、音場は広がるとともに、音質がさらに鮮明になった点も素晴らしい。
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5 people agree with this review 2010/11/20
クリュイタンス&フランソワという夢のようなコンビによるラヴェルのピアノ協奏曲の名演だ。クリュイタンスの最高の遺産と言えば、やはりラベルの管弦楽曲集を掲げる聴き手が多いのではなかろうか。フランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わい、ドイツ音楽を得意とした巨匠ならではの重厚さと造型美、これらを合わせ持つアプローチが、華麗なオーケストレーションを誇るラヴェルの管弦楽曲の魅力を完璧に表現してくれているからである。そうしたラヴェルを得意としたクリュイタンスによるピアノ協奏曲、左手のためのピアノ協奏曲も素晴らしい。フランス系の指揮者ならではのエスプリ漂う瀟洒な味わいと、シンフォニックな重厚さが、見事にマッチングして、独特の魅力を醸し出している。パリ音楽院管弦楽団も、そうしたクリュイタンスの指揮の下、最高のパフォーマンスを示していると言える。そして、それらを土台としたフランソワの個性的なピアノの見事さ。あくの強いと言われるフランソワであるが、ここでは、センス満点のきらめくようなピアニズムで、ラヴェルの魔法のような旋律を完璧に再現している。その美しさには、あたかも「メトロの臭いがする」というセリフがぴったりとするような香気に溢れると言えるほどだ。HQCD化によって、音質はかなり鮮明になっており、歴史的な本名演の価値を高めるのに大きく貢献している。
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3 people agree with this review 2010/11/20
ミュンシュがその最晩年にパリ管弦楽団とともに遺した4枚のCDは、至高の名演揃いと言える。ミュンシュの60代での急死は、音楽界にとっても大きな損失であったが、この最晩年の4枚のCDを聴いていると、ますますそうした損失の大きさを思い知ることになる。本盤のラヴェルも超名演だ。ミュンシュは、フランス人でありながら、ドイツ音楽、特に、ブラームスを得意とした指揮者である。それ故に、ミュンシュの指揮するフランス音楽は、他のフランス系の指揮者が醸し出すフランス風のエスプリを売りにするというよりは、楽曲の全体の造型美や、ドイツ風の重厚さを全面に打ち出すという特異性を有している。本盤でも、そうしたミュンシュの特徴がよくでている。ボレロも、オーケストラの粋な音色のみならず、全体の造形美に配慮しており、フランス風の瀟洒な味わいよりも、重厚な迫力が際立っている。スペイン狂詩曲は、むせ返るようなラテン風の味わいよりは、シンフォニックな荘厳さが全面に出ている。ダフニスとクロエもスペイン狂詩曲と同様の傾向であるし、亡き王女のためのパヴァーヌも感傷には陥らず、高踏的な美しさを保っているのが素晴らしい。確かに、一聴するとフランス音楽らしからぬミュンシュのラヴェルに異を唱える聴き手もいるとは思うが、このような重心の低いラヴェルも、むしろ新鮮な魅力に満ち溢れていると言えるのではないか。HQCD化によって、音質がさらに鮮明になったのも素晴らしい。
3 people agree with this review
クリュイタンスによる幻想交響曲と言えば、来日時の爆演が思い浮かぶが、長らくの間、モノラル録音のみの発売であったこともあり、本盤のスタジオ録音の方に食指が動く聴き手も多かったものと思われる。しかしながら、昨年、来日時の爆演のステレオ録音盤が発売されたことにより、ついに、クリュイタンスの幻想交響曲の決定盤としての地位が固まったように思われる。しかしながら、だからと言って、本盤の価値がいささかも減じたわけではない。ライブ録音ならではの凄まじい迫力においては、一歩譲ると言わざるを得ないが、ライブ録音特有の瑕疵がなく、オーケストラの安定性などを加味すれば、本盤も、来日時の名演に勝るとも劣らない名演と評価しても過言ではないものと思われる。幻想交響曲は、多くのフランス系の指揮者によって演奏されてきたが、クリュイタンスのアプローチは、そうしたフランス系の指揮者特有のフランス風のエスプリと、ドイツ風の重厚さを併せ持った独特の味わいを持つと言える。その理由としては、クリュイタンスが、ベートーヴェンやワーグナーなどをも得意のレパートリーとしていたことが掲げられる。終楽章のスタジオ録音とは思えないような畳み掛けるようなアッチェレランドの凄まじさも、素晴らしいの一言だ。併録の2つの序曲も名演だ。HQCD化によって、音場が広くなり、より鮮明になった点も、本盤の価値を高めることに大きく貢献している。
6 people agree with this review 2010/11/20
テンシュテットの真価を味わうことができる超名演である。録音は1980年で、テンシュテットが咽頭癌を発症する数年前の録音だ。したがって、ここには、最晩年の病魔と闘うという鬼気迫るような凄まじい緊迫感はいまだ感じられないが、それでも、オーケストラを全力で追い立て行く生命力溢れる爆演ぶりは、テンシュテットだけに可能な至芸と言えるだろう。この時期のベルリン・フィルは、カラヤンとの関係が、カラヤンの健康問題も相まって、微妙なものになりつつある時期で、その後継者問題が大きくクローズアップされていた。そのような中で、病魔の影さえ感じられなかったこの時のテンシュテットは、後継者の第一人者との評価も得ていたのである。本盤のような劇的な超名演を聴いていると、そのような評価もあながち言いすぎではないことがよくわかる。第2集とは異なり、インテンポではなく、楽劇全体を意識した緩急自在のテンポ設定や、思い切ったダイナミックレンジの幅の広さが特徴ではあるが、音楽がそうした指揮によって矮小化することなく、スケールの大きさをいささかも損なうことがないのが素晴らしい。ベルリン・フィルも、世界一のオーケストラの名に恥じない最高のパフォーマンスを示している。HQCD化による音質の改善効果もかなりのものがある。
4 people agree with this review 2010/11/18
テンシュテットならではの超絶的名演だ。本盤の録音は、1982〜1983年であり、これはテンシュテットが咽頭癌で倒れる直前であるが、ここでは、既に、晩年の鬼気迫るような気迫溢れる大熱演が聴かれる。スタジオ録音でありながら、あたかもライブ録音であるかのような豪演だ。マーラーの演奏で垣間見せるようなテンポの変化は殆どなく、ゆったりとしたインテンポによるスケール雄大なアプローチであり、それでいて、劇的な迫力にもいささかも不足もない。こうしたテンシュテットの、オーケストラを追い立てていくような大熱演は、よほどのオーケストラでないと付いて行くのが困難であると思われるが、さすがは天下のベルリン・フィル。ここでも、望み得る最高のパフォーマンスを示していると言える。本盤の録音当時は、カラヤンとの関係が最悪の状態にあった時期であり、カラヤンの後継者と目されていたテンシュテットと至高の名演を成し遂げることによって、カラヤンを見返してやろうとの強い意識も働いていたものと思われる。テンシュテットの圧倒的な統率の下、うなりあげるような低弦の重量感溢れる迫力やティンパニの雷鳴、天国的な美しさを誇る高弦の囁き、悪魔的な金管の最強奏など、いずれも素晴らしい。HQCD化によって、音場が広がり、鮮明さも相当程度アップしたのも、本名演の価値を高めるのに大きく貢献している。
4 people agree with this review
7 people agree with this review 2010/11/17
ブーレーズならではの素晴らしい名演だ。ヴァイオリン協奏曲第1番や交響曲第3番は、シマノフスキが、印象派の影響を色濃く受けた時代の傑作であるが、ドビュッシーやラヴェルの名演を数々成し遂げてきたブーレーズにして見れば、得意とする作品とも言えるだろう。確かに、若き日のブーレーズのように、前衛的で切れ味鋭いアプローチは影を潜め、すっかりと好々爺となり、角の取れた柔和なアプローチを示すようになりつつある近年のブーレーズではあるが、本盤では、そうした円熟に加えて、若き日の前衛的なブーレーズを彷彿とさせるような凄みをも感じさせる名演を成し遂げていると言える。特に、ヴァイオリン協奏曲第1番の第1楽章において、そうした傾向は顕著であり、ヴァイオリンのラツラフの卓越した技量をベースとした切れ味鋭い演奏と相まって、シマノフスキの魅力を大いに満喫することができるのが素晴らしい。交響曲第3番は、神秘的で官能的な響きが、優秀な独唱や合唱も相まって、完璧に再現されており、ウィーン・フィルも最高のパフォーマンスを示していると言える。シマノフスキを得意とする指揮者としてはラトルが掲げられ、遺された演奏はいずれも名演ではあるが、前衛性と円熟のバランスを考慮すれば、本盤におさめられた両曲に限って言えば、ブーレーズの方に軍配をあげたい。ボーナスCDのブーレーズによるインタビューも貴重な記録だ。
7 people agree with this review
4 people agree with this review 2010/11/16
サヴァリッシュは、NHK交響楽団の名誉指揮者として、我が国では非常に名が知られた指揮者ではあり、本場ヨーロッパにおいても早熟の指揮者として注目を浴びた時期もあったが、人気という面ではイマイチ。演奏は、良く言えば、特にドイツ音楽において、正統的なアプローチをする職人指揮者ということであるが、はっきり言って四角四面で面白みのないものが多い。要は、聴き手を唸らせるような個性がどこにも見当たらないのである。同様の職人肌の正統派の巨匠としては、ベームなどが掲げられるが、ベームには、特に壮年期について当てはまるが、厳しい造型美と凝縮化された生命力の輝きがあった。ところが、サヴァリッシュにはそれすらも感じられず、正にウドの大木のような愚鈍な印象があり、二流のベームなど誰も聴きたいとは思えないのではないだろうか。そんな没個性的な指揮者であるサヴァリッシュによる数少ない名演が、このシューマンの交響曲全集だ。もちろん、第3 番にはシューリヒト&パリ音楽院管(新しいものではジュリーニ&ロス・フィル)、第4番及びマンフレッド序曲にはフルトヴェングラー&ベルリン・フィル(新しいものではヴァント&ベルリン・ドイツ交響楽団(第4のみ))という個性的な超名演があり、それぞれの交響曲の最高の名演で構成されているわけではないが、4曲揃って水準の高い名演で構成されているという意味では、素晴らしい全集と評価すべきである。ドレスデン国立管弦楽団のいぶし銀の音色も、本演奏の魅力の一つと言えるところであり、正に最大公約数的に優れた名演と言えるだろう。HQCD化によって、音質がさらに鮮明になった点も、本盤の価値を高めることに大きく貢献している。
10 people agree with this review 2010/11/15
選曲、演奏、録音の三拍子そろった素晴らしい名演集であると高く評価したい。まず、いかにもグリモーならではのセンス満点の選曲の妙が見事だ。モーツァルトからリスト、ベルク、そしてバルトークに至る作品の変容の系譜を一枚のCDで味わうことができるのは、何と言う素晴らしいことであろうか。バルトークの選曲に当たって、ピアノソナタではなく、ルーマニア民俗舞曲を採用したのも大変興味深いところだ。そして、演奏内容も凄い。モーツァルトなど、他のピアニストによる演奏とはまるで異なる、いわゆる崩した演奏であるが、グリモーの心の込め方が尋常ならざるレベルに達しているため、非常に説得力のある名演に仕上がっている。ベルクやリストの、超絶的なテクニックも凄いの一言。特に、リストは、卓越したテクニックを要するだけでなく、幅広い表現力をも必要とするが、グリモーは、力強い打鍵から天国的な抒情の美しさに至るまで完璧に表現し、実にスケール雄大な名演を成し遂げている。特に、強靭な打鍵は、女流ピアニストの常識を覆すような圧倒的な迫力に満ち溢れている。ルーマニア民俗舞曲の各曲の巧みな描き分けも、前3曲のピアノソナタを総括するようなドラマティックなアプローチで巧みに行うことに成功している。録音も鮮明であり、特に、ピアノ曲との相性抜群のSHM−CD化は、本盤の価値を高めるのに大きく貢献していると言える。
10 people agree with this review
5 people agree with this review 2010/11/14
サヴァリッシュは、NHK交響楽団の名誉指揮者として、我が国では非常に名が知られた指揮者ではあり、本場ヨーロッパにおいても早熟の指揮者として注目を浴びた時期もあったが、人気という面ではイマイチ。演奏は、良く言えば、特にドイツ音楽において、正統的なアプローチをする職人指揮者ということであるが、はっきり言って四角四面で面白みのないものが多い。要は、聴き手を唸らせるような個性がどこにも見当たらないのである。同様の職人肌の正統派の巨匠としては、ベームなどが掲げられるが、ベームには、特に壮年期について当てはまるが、厳しい造型美と凝縮化された生命力の輝きがあった。ところが、サヴァリッシュにはそれすらも感じられず、正にウドの大木のような愚鈍な印象があり、二流のベームなど誰も聴きたいとは思えないのではないだろうか。そんな没個性的な指揮者であるサヴァリッシュによる数少ない名演が、このシューマンの交響曲全集だ。もちろん、第1番にはクレンペラー&フィルハーモニア、第2番にはシノーポリ&ウィーン・フィルという個性的な超名演があり、それぞれの交響曲の最高の名演で構成されているわけではないが、4曲揃って水準の高い名演で構成されているという意味では、素晴らしい全集と評価すべきである。ドレスデン国立管弦楽団のいぶし銀の音色も、本演奏の魅力の一つと言えるところであり、正に最大公約数的に優れた名演と言えるだろう。HQCD化によって、音質がさらに鮮明になった点も、本盤の価値を高めることに大きく貢献している。
1 people agree with this review 2010/11/14
ナージャならではの思い入れたっぷりの情感溢れる超個性的な名演だ。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、いわゆる四大ヴァイオリン協奏曲の中で、厳しい造型美よりも、旋律の美しさが売りの作品であるが、ナージャは、こうした美しい旋律の数々を、これ以上は求め得ないような情感を込めて、歌い上げている。特に、第2楽章など、誰よりもテンポを落とすとともに、ゲネラルパウゼなども駆使して、美しい旋律を徹底的に歌い抜いている。その超個性的なアプローチに、抵抗感を持つ聴き手も多いとは思うが、これほどまでに感動させてくれるのであれば、文句は言えまい。併録のハバネラや、序奏のロンド・カプリチオーソも、ゆったりとしたテンポによる情感溢れる名演であるが、それ以上に凄いのが、タイスの瞑想曲。その常識外れのテンポのあまるの遅さに、本来は辟易するはずであるが、ナージャの場合には、そのようなことはいささかもなく、何と言う美しい音楽なのかと感心させられることしきりだ。同曲には、カラヤン&ベルリン・フィル(ソロは、シュヴァルべ)という極上の美を備えた超名演があるが、情感の豊かさという点だけを考えると、ナージャ盤に軍配を上げる聴き手も少なくはあるまい。HQCD化によって、音質の鮮度が上がったのも、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
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