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Review List of 煙突屋 

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     2024/11/17

    ト長調のソナタは晩年のポリーニらしさ全開で、美しい響きの中に豊穣な音楽が充溢している。そしてそこにシューベルト特有の鋭い狂気が、躊躇も誇張もなく自然に立ち現れる。私はこういうシューベルトが聴きたいのだ。
    父ポリーニに比べると息子ポリーニの弾く楽興の時はずっと常識的で健全だ。彼は決して平凡なピアニストではないし、この楽興の時の演奏を聴くだけでも、彼が優れた耳と堅実な技術、そしてなにより誠実な音楽性の持ち主であることがよくわかる。でもシューベルトにはそれだけで済まない深淵がある。ダニエレ氏や彼の周辺の人々が、父ポリーニの威光に振り回されることなく、今後もゆっくり時間をかけて成熟していくことを願ってやまない。
    最後の二人の連弾は、二人が見ているシューベルトの世界の違いがはっきりと浮き上がる。セコンドの父ポリーニに音楽のフォーカスが移ったときのぞっとする深みを聴くにつけ、息子と共演してはいても、いざとなれば音楽の悪魔との取引をためらわない父ポリーニの凄みを私は見る。

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