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Review List of 村井 翔 

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     2010/08/23

    録音レパートリーとしては先輩ラトルの後追いになりがちなハーディングだが、この録音を聴いて、違ったタイプの指揮者になりそうな予感がしてきた。ご存じの通り、和声的にはとてもシンプルというかアルカイックな曲だから、指揮者が存在意義を示そうとしたらアゴーギグをあちいちいじるぐらいしか、やることがない。ラトルはまさにそういうタイプの演奏で、テンポの操作に遊びがあるスマートで都会的な味わい。ところがハーディングはまったく逆で、テンポの緩急は楽譜通りのことだけというストレート勝負。「焼かれた白鳥の歌」の伴奏部を聴けば分かる通り、感覚的にはとても洗練されているけれど、オルフの本場ミュンヒェンでの演奏ゆえか、泰然自若の横綱相撲。これを若いのにご立派と褒めるか、若いんだからもっと暴れたらいいのに、と思うかで評価が分かれるが、私は後者の方。声楽陣は強力。ラトル盤と同じゲルハーエルも、第2部などかなり表情を作っていたあちらと違って、ストレートに歌うが、声質から言ってもキャラから言ってもこの曲には完全にハマリ。合唱、特に少年合唱のうまさとプティボンの魅力(ちょっと音程あやしいけど)でラトル盤に勝っている。

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  • 5 people agree with this review
     2010/08/19

    第1楽章序奏のチェロとホルンの遠近感の付け方(譜面上はチェロがpp、ホルンの合いの手がpだが、逆に聴こえる)から始まって、終楽章冒頭の特別にテンポの遅い2小節の扱い(これだけ遅いのは初めてではないか)まで、細部に色々と工夫のある演奏だ。第1楽章展開部頭のティンパニをppの指示に反して、強く叩かせるのも面白い。さすがに9番は名作、きっちり演奏されると聴き応えは十分だが、しかし肝心の音楽的感動に関しては、かなり留保をつけざるをえない。つまり、強さに関してはfff(「最大の力で」とドイツ語の注釈つき)だの、速さに関してはプレストだのと凶暴な表現が求められている所で、この録音はリミッターをかけてしまっているような印象があるのだ。このお上品さ、あるいは慎重さ、臆病さはこの曲に限っては肯定できない。バーンスタインのような主情主義的演奏が幅を利かせていた1960年代ならいざ知らず、なぜ今になって「出し遅れの証文」みたいに新即物主義的演奏なのかと、コンセプトには疑問もあったこのシリーズだが、カーペンター版での録音が予定されている10番には期待してますよ。

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  • 3 people agree with this review
     2010/08/17

    最も良いのはハンプソンの歌う『角笛』からの5曲で、劇的な表情が曲に合っている。彼はオケ伴での『角笛』歌曲集の録音はなかったので、できれば全曲録音してほしかったところだが、所詮はこれまでの落ち穂拾い録音、それは無理なのかもしれない。『さすらう若人の歌』はかのバーンスタインとVPO以来の録音。こちらは細やかな表情で歌っているが、室内楽的で精妙な伴奏はこれまでのシリーズ通り。第2曲、第4曲の終わりで一瞬にして明から暗に転じる和声の変化のつかまえ方は見事だ。『リュッケルト歌曲集』はシェーファー/エッシェンバッハの恐ろしく明晰で緻密な演奏を聴いたばかりなので、やや分が悪いが、あれはちょっと異例なほどの出来なので、グラハムの大柄な歌も決して悪いわけではない。

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  • 2 people agree with this review
     2010/08/11

    私がナマで聴いた東京での演奏会では、あまりに激しい打鍵のため、D.960の第2楽章中間部でピアノの弦が切れてしまった。複数ある(2本または3本か?)弦のすべてが切れたわけではないので、演奏会は続行できたが、実際、この絶望的に暗い第2楽章を聴いた後、第3楽章に進むのは難しい。この2枚組CDの1枚目がD.960の第2楽章で切れているのは、そのための絶妙な配慮かと勘ぐってしまう。この2枚組を聴き通すのは本当に難行苦行に近いが、晩年のシューベルトの心の深淵を覗いてみたい人は、ベスト100に入ったこの機会に買ってみても良いかもしれない。私もよほど体調万全、聴いた後しばらく落ち込んでも大丈夫な時しか聴く気になれない演奏だが、ある種の人にとっては一生の宝になるような文化遺産が1800円で買えるとは、考えてみればCDとは安いメディアかもしれない。

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  • 2 people agree with this review
     2010/08/11

    11月にはN響に客演して2番(復活)を振るので、日本でもシュテンツの指揮が見られるが、輸入販売元はこの指揮者の「売り方」を考え直した方がいいのではないか。派手な大立ち回りを演ずるタイプではないとしても、若手らしくシャープな感性の持ち主で、ドイツ伝統の楽長タイプではもはやない。「埋もれた」声部を巧みに浮き立たせる彼の手腕の冴えは、マーラーとしては比較的オーケストレーションが薄い4番やこの「角笛」歌曲集で良く聴くことができる。エルツェはヴェーベルン歌曲集(DG)と1999年グラインドボーンでのメリザンド役以来のファン。さすがにちょっと老けたが、歌い回しはまだまだ魅力的。フォレはニュートラルな歌曲歌いの声ではないが、この曲集ではオペラティックな歌い方も悪くない。曲の配列も指揮者が決めたものと思われるが、「原光」を「歩哨の夜の歌」の次に持ってくるとは、実にうまい。「死んだ鼓手」「浮き世の暮らし」「天上の生活」と続く最後の3曲は痛烈だ。

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  • 4 people agree with this review
     2010/08/04

    今さらこの天下の名曲にケチをつけても仕方がないが、『幻想』はもちろん恐ろしく清新な革命的作品であるのは確かだが、ベルリオーズとしてはやはり若書きの曲。演奏時間の最も長い第3楽章などはテキトーに演奏されるとどうしてもダレてしまう。しかし、このサロネンの演奏ほど「テキトー」の対極に位置するものはない。ブーレーズの旧録音以来、アバド、ティルソン=トーマスなど、この曲の精密な録音は数々あったが、ライヴでのこの水準にはぶったまげるしかない。しかも、一昔前のサロネンなら「考えうる限り、最も緻密に演奏しました」というだけだが(それはそれ自体、凄いことなのだが)、今の彼はそれだけでは終わらない。終楽章最後の追い込みなどは、この曲ではもはや定番かもしれないが、第4楽章終盤での減速+急加速には思わずのけぞる。つまり、精密でありながら、必要とあればハッタリもかますという、十分にロマンティックかつ情熱的な演奏なのだ。

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  • 1 people agree with this review
     2010/07/27

    フランクフルト放送響との前回録音は長らく私にとって、この曲のベスト盤だったが、今回は全く様変わりしている。ポルタメントなど総譜の指示に忠実な緻密さは変わらないが、透明でクリアな前回録音とは違って、非常に繊細で曲線的な、小粋と言うべき音楽になっている。量感は乏しいがデリカシーに富む都響の弦の音が、まさにこういうアプローチにぴったり。第3楽章第1主題など史上最美と言ってもよいだろう。相当にエキセントリックだった(以前、一度だけある席でご一緒したことがある)この指揮者の人柄も年月を経て丸くなったのだろうか。ただし、ほぼ同時期に同じレーベルから出たホーネックの録音に比べると、昔ながらの4番のイメージに沿ったメルヘンチックな解釈であり、フランクフルト時代の新鮮さから後退していることは否定できない。どちらを好むかによって、聴き手の4番に対する姿勢が試されることになるが、この曲をアイロニーに満ちた、悪魔的なパロディ交響曲と考える私は断然、ホーネック支持。

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  • 7 people agree with this review
     2010/07/26

    第5〜第9の交響曲五連作のなかでは最大の傑作だと思うが、初演者ムラヴィンスキー(私がよく聴いたのは1982年録音のフィリップス盤)のあまりに禁欲的な、荒涼たる雪景色のような演奏に対し、もちろん悲劇的な作品ではあっても、現代の指揮者たちは途中の風景をもっと細やかに楽しませてくれるようになった。第3〜第4楽章の劇的なコントラストに関しては、さすがに先輩ゲルギエフに一日の長があるように感じるが、緻密さと長大な第1楽章の抒情ではペトレンコに軍配を挙げたい。極めてデリケートな終楽章の起伏を丁寧に描いているところにも好感がもてる。

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  • 3 people agree with this review
     2010/07/18

    これは誰もが認める「最高」の演奏で、私の出る幕もあるまいと思っていたのだが、ドゥダメル否定派の皆さんもまだ根強いようなので一言だけ。指揮者+オケ双方のリズムの切れは、やはり前代未聞と言うべきでしょう。しかも、ただ大音量で押しまくるだけではなく、畳みかけるところと引くところの切り替えがちゃんとできている。いわば全員攻撃、全員守備の規律のとれたサッカーチームのような演奏。これに比べるとブーレーズ、サロネンですら硬く、クールに過ぎると感じるほどで、『春祭』に関しては当分、文句なしのベストワンとして推せる。さほど面白い曲と思わなかった『マヤの夜』もこういう演奏だと魅力全開。単なるストラヴィンスキーの亜流ではないことも、はっきりと分かる。

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  • 3 people agree with this review
     2010/07/17

    グート演出の『フィガロ』で既に拒否反応の人には決して薦めないが、演出・演奏ともに極めて興味深い、現代ならではの上演。演出は「地獄落ち」という出来事を超自然的な次元なしに説明しようとする「神なき時代の『ドン・ジョヴァンニ』」で、その点ではザルツブルクにおける一世代前のクーシェイ演出と同傾向だが、地獄落ち後のエンディングの音楽がないという点では一層、徹底している。各人物の心理的な掘り下げもユニークで、もはや主従ではないドン・ジョヴァンニとレポレッロのむしろSM的な関係(レポレッロの方がS)。ジョヴァンニとしっかり「お楽しみ」した後、婚約者のオッターヴィオをうまく丸め込もうとするドンナ・アンナ。ツェルリーナに至っては、小悪魔と呼ぶしかない悪女で、いつまでもジョヴァンニに未練たらたらのドンナ・エルヴィーラが一番古風に見える。歌手陣も強力で、特にシュロット、ダッシュが光る。マルトマンは演出コンセプトに従って、弱々しいドン・ジョヴァンニを好演。ド・ビリーの指揮も細身でシャープだ。

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  • 6 people agree with this review
     2010/07/06

    なかなか評価の難しい演奏。第1楽章のクライマックス、序奏のリズム・モティーフがトロンボーンの最強奏で戻ってくる、いわゆる「死の打撃」部分の打楽器の扱いなどは、なるほど目からウロコの見事な楽譜の読みだ。しかし過度な情緒的のめりこみを排して、緩みのない速めのテンポで進められる両端楽章、リズミックな推進力とポリフォニックな多声様式を両立させた中間楽章、いずれも水準以上の出来だとは思うのだが、これまでのサロネンの仕事ぶりを知る者としては、彼ならもっとやれる、もう一押しが足らないという印象もまた禁じ得ない。この今一つの食い足らなさがオケのせいなのかどうかは、今秋のウィーン・フィルとの来日公演で明らかになるだろう。

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  • 2 people agree with this review
     2010/06/27

    プロコフィエフが二十代半ばで完成させた最初のオペラで、同時代のスキタイ組曲やピアノ協奏曲第2番のような荒々しい、無機的な響きがする。このオペラの場合、伝統的な舞台を見たことのない我々は、最初から現代に舞台を移した読み替え版を見せられるわけだが、チェルニャコフの演出は堂に入ったもので、全く不自然さを感じさせない。ドストエフスキーの原作自体が、リーマン・ショックなど現代の事象に重ね合わせることが十分可能な題材だからだ。ディディク、オポライスの若いカップル、本物のおばあちゃんであるトツィスカともに申し分なく、バレンボイムの精力的な指揮も曲に合っている。

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  • 4 people agree with this review
     2010/06/27

    1番以上に旗幟鮮明な演奏で、4番はメルヘンチックでのどかな曲という昔ながらのイメージを壊されたくない人は拒否反応を起こすかも。第1楽章は基本テンポこそ速めだが、楽想ごとのコントラストは大きく、ポリフォニックな対旋律の強調や、朝顔の中に手を突っ込んで金属的な音を出すホルンのゲシュトップト奏法をエグいほどやるので、パロディックな「古典交響曲」の趣きが強い。色彩的な第2楽章をはさんで、第3楽章では静謐な歌が聴かれるが、第2主題の暗い嘆き節をこれでもかと言うほど盛り上げるので、やはりパロディを感ぜずにはいられない。楽章最後の突発的なクライマックスはまさに渾身の力演。終楽章の独唱は透明、至純だが、オケ・パートの方は非常に痛烈かつドギツイ表現を持ち込んでいて、アイロニー満点だ。強いて欠点を探せば、オケのせいもあって表現に含みが乏しく、指揮者の意図がストレートに音化され過ぎ、何もかもがなまなまし過ぎることか。

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  • 3 people agree with this review
     2010/06/21

    フィラデルフィアでの2番、6番ではどうも重箱の底をつつくような堅苦しさがつきまとったが、楽員の間ではまるでマーラーその人のような練習魔として嫌われているらしいエッシェンバッハ、細部にこだわったリハーサルをし過ぎて、音楽が硬くなってしまう傾向もあるようだ。ところが、客演でのこの1番では逆に硬さがほぐれ、音楽の流れがとても自然だ。第1楽章で1回、終楽章では計2回、ファンファーレが「突発」する直前のタメの作り方など、力こぶを入れるところも見事にはまっている。終楽章では第2主題の歌の美しさも、提示部、再現部ともに印象的だ。リュッケルト歌曲集でのシェーファーは、さながら精巧な工芸品を見るよう。超フィッシャー=ディースカウとでも言いたくなるような微視的なアプローチで、大変な聴きものだ。

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  • 4 people agree with this review
     2010/06/21

    非常に細かいアゴーギグを駆使した演奏で、1番の終楽章など楽想ごとに全部テンポが違うが、決して人工的ではなく、自然な流れがある。つまり、まぎれもなくロマンティックな志向を持つアプローチだが、一昔前のシューマンのように響きが肥大化しないのは、ピリオド・スタイルを踏まえているせいだろう。楽器はもちろんモダンだが、たぶん管楽器は二管編成のままで、同じイタリア人でもシャイーのように金管が響きすぎることもない(あちらはマーラー版だから仕方ないが)。3番の第4楽章のアクセントの強い打ち込みは明らかにピリオド風だが、一方、4番の第2楽章冒頭の旋律はバーンスタイン同様、チェロのソロにするなど一筋縄ではいかない。全体としては緩徐な部分の歌の美しさ(2番の第3楽章が典型)と速い楽章の猛烈な追い込み(同じ2番の第2楽章)がどちらも楽しめる演奏だ。P.ヤルヴィとドイツ・カンマー・フィルという本命盤がまだ控えているが、とりあえずシューマン・イヤーにふさわしい見事な交響曲全集と言えよう。

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