TOP > My page > Review List of 村井 翔

Review List of 村井 翔 

Showing 586 - 600 of 613 items

%%header%%

%%message%%

  • 0 people agree with this review
     2009/08/20

    『夜と夢、ジクムント・フロイトの死』はイギリスの作曲家、アンドリュー・フォード(1957- )がデラー・コンソートの創立メンバーでもあったテノール歌手、ジェラルド・イングリッシュのために書いたシアター・ピース。題名にあるシューベルトのリート『夜と夢』と『小川の子守歌』(『水車小屋の娘』の終曲)を枠として両端に置き、その間に死に瀕したフロイトの回想がイングリッシュの語りと歌(英語)で繰り広げられていく。歌の部分はフロイトらしい「夢の歌」だが、その内容は『夢判断』などで語られているフロイト自身の夢のどれとも関係はなく、完全な創作。SPレコード針音入りのリート(歌はイングリンシュ)など他の素材(軍靴や空襲警報のサイレン、ヒトラー、チェンバレンの演説など具体音もある)はすべてプレ録音されていて、イングリッシュが56分余の一人芝居を演ずるという趣向だ。2000年、彼が72歳の時の録音。語りの内容はフロイトの同性愛とそこから起因するヴィルヘルム・フリースやカール・グスタフ・ユングへの転移(惚れ込み)、およびその悲劇的結末という彼のプライヴァシーの核心にかかわるもの。現代音楽臭皆無なので音楽作品としての充実度には疑問符がつくが、フロイト研究者として大いに楽しんだのは事実。ただし、聴き手を選ぶ作品であることは確かで、フロイトとフリースやユングの関係について、あらかじめ知っていないと、さっぱり話が分からない。 シェーンベルクの方は同じイングリッシュの語りながら、1973年録音の既発売音源。

    0 people agree with this review

    Agree with this review

  • 2 people agree with this review
     2009/08/18

    『コジ』と『フィガロ』は洗練されたセラーズ版といった趣きで、もちろん悪くないが、すべては想定範囲内。その点では『ドン・ジョヴァンニ』が断然、面白い。舞台には幾つものベッドが並べられ、人物達は出番になると起き上がって演じるが、終わるとまた寝てしまう。個人幻想、夢にひたる各キャラたちがつかのま(ドン・ジョヴァンニは砂時計を置く)出会う場がこのオペラという解釈か。ジョヴァンニに憧れる盗撮マニアのレポレッロ、アンナ人形を抱いて歌うドン・オッターヴィオには笑える。一方、第2幕のドンナ・エルヴィーラとレポレッロ、「薬屋の歌」後のツェルリーナとマゼットのベッドインなどは明確に性行為を暗示し、開幕直後のドンナ・アンナの状況は明らかに行為後だ。セットは病院でもあり、知的なドン・ジョヴァンニは各人物をケアし、性的欲求不満を解消させる精神分析医といった役どころ。地獄落ちの場では彼が死ぬのではなく、ゾンビと化した騎士長を昇天させる。珍しいウィーン版追加曲、ツェルリーナとレポレッロの二重唱ではツェルリーナのサディストぶりに驚怖するマゼットが見もの。

    2 people agree with this review

    Agree with this review

  • 1 people agree with this review
     2009/08/17

    ウィーン国立歌劇場版は1983年の収録なので、最新の録画に劣るのは致し方ないが、特に同時収録のCDに比べても音が貧弱なのは残念。しかし、演奏内容は極めて優れたもので、カレーラス、リッチャレッリ、指揮、オケ、合唱の5点では定評あるゼッフィレッリ演出のメト版をも凌いでいると思う。特に指揮は、マゼールのクセのある音楽作りが作品自体の特質と完全に一致した希有な例の一つで、聴くたびに感心させられる。細部まで金のかかったゼッフィレッリには及ばないが、演出も無難。マルトンも演技の細やかさではメト版に長があるが、声の威力はこちらの方が上か。LDで出たこともないこの映像の初日本語字幕付きDVDを含むというだけでも、高評価の一組。もう一枚のDVDは、興味のない人にはただの古い白黒映画だが、フランコ・コレッリ全盛期の姿が拝めるお宝映像。

    1 people agree with this review

    Agree with this review

  • 0 people agree with this review
     2009/08/17

    これが商品化されたおかげで、同じプロダクションに出ていたナタリー・デセイの夜の女王を全曲盤で見ることが絶望的になったのは痛恨の極み(ランカトーレも第一級の夜の女王だが、ケタ違いのデセイの歌は第2幕のアリアのみ別のDVD『ザ・ミラクル・オブ・ザ・ヴォイス』で観ることができる)。最後の大団円には滅びたはずの夜の女王やモノスタトスも参加するなど、演出は童話劇としての枠組みを崩さないが、女性差別や人種差別問題に正面から向き合う気は無いらしい。それゆえザラストロの第2アリア前の人種差別発言は別のセリフに差し替え。キャストではイケメンのパパゲーノ(デトレフ・ロート)が好印象だが、善くも悪くもまだ若い。指揮がいまひとつ冴えないこともあって、やはりデセイ抜きではチューリッヒのミラー演出、古くはミュンヒェンのエファーディング演出のような決定打に欠ける。

    0 people agree with this review

    Agree with this review

  • 3 people agree with this review
     2009/08/17

    プロローグが英語というのは、LSOライヴだから仕方ないとはいえ、ちょっと違和感あり。ホワイトがそのまま青ひげを歌い始めてしまうのも、プロローグの視点は客観的なものなのでマズイと思う。しかし、それを除けば大変良くできた上演。ブーレーズの二度の録音のような精緻さは望めないが、オペラ指揮者らしくゲルギエフは緊迫とその後の弛緩の対比がうまい。ホワイトは2008年パリ・オペラ座来日公演でも素晴らしかったが、ここでも見事な名唱(彼の場合、見た目のインパクトが大きいので、一度でも舞台姿を見ておくとCDも違って聞こえるけど)。2003年のケルビーノ以来、新国立ではおなじみのジドコーワも健闘している。ちなみに、バルトークでは『中国の不思議な役人』と並んで最も好きな作品。文句なしの傑作だと思う。

    3 people agree with this review

    Agree with this review

  • 0 people agree with this review
     2009/08/14

    はじめてこのオペラを見る人に勧めて良いかどうか自信がないが、肉欲vs清らかな愛という二項対立が意味を成さなくなり、ヴェーヌス讃歌を歌ったぐらいで主人公がどうしてこんなに責められるのか理解できなくなった今、このオペラがまだ見るに耐えるとすれば、もうこれしかないというイチオシの名演出。ヴェーヌスベルクの場はやはりバレエにした方が良かったと思うが、その後はアイロニー満載。非常に厭味な「大行進曲」から始まって、『ハレンチ学園』ばりにパロディ化されたミンネゼンガー達の変態ぶり、結局、タンホイザーは救われず、ヴォルフラムは赤い本(聖書)を破り捨てて立ち去って行くという衝撃のエンディングまで実に面白い。年はとったが、それゆえにむしろリアリティのあるコロ、ヴァイクル、さらにマイアー、セクンデと超強力キャスト。忘れられがちだが、メータの指揮もとても良い。

    0 people agree with this review

    Agree with this review

  • 4 people agree with this review
     2009/07/30

    基本的には一晩の演奏会をそのまま収録したものだが、アバドの年齢を考えるとずいぶん重量級のプログラムだ。シェーンベルクではストーリーの進行を示すテロップが随所に出るが、この曲に関してはこれも悪くない。絡み合うライトモティーフを色の帯で示すのは、いいアイデアだ。指揮は見事の一語。若い人たちと演奏すると、近年のアバドは表現が特に積極的になるが、今回もその例に漏れず。マーラーもオケの実力はともかく、表現の方向としては、ややスタティックに過ぎたBPO盤よりずっと好ましい。カメラも第3楽章冒頭で故意にコントラバスを映すなど(実際、ここでは極端なppのため主旋律はほとんど聞こえない)アバドの音楽作りを良く理解している。

    4 people agree with this review

    Agree with this review

  • 1 people agree with this review
     2009/07/25

    ハイティンク盤と同じくスペイン、フランス、ドイツ、ロシア語を歌い分ける「原語版」による演奏。爆演型ではないが、ライヴならではの生々しさと(ハイティンクにはない)遅い楽章での呼吸の深さが魅力的。それにF=ディースカウのうまさは、やはり超絶的。本物のバスでこそないが、声のポジションが低いこの曲では声の衰えがさほど気にならず、変幻自在のテクニックが存分に味わえる。一方、カーヒルはハイティンク盤のヴァラディと比べるとだいぶ聴き劣りする。ドスが効いているのはいいが、音程が終始ぶら下がり気味なのは痛い。

    1 people agree with this review

    Agree with this review

  • 3 people agree with this review
     2009/07/21

    先日、BShiで放送された『グレの歌』も大変感心したが、このウィッグルワース、細部は実に緻密に仕上げるのに、常にクールな感触があり、音楽が絶対に熱くならないという不思議な指揮者。ショスタコの4番は何せオケの編成自体が怪物的な大曲だけに、どの指揮者もクライマックスでは力押ししたくなるものだが、彼は相変わらず「寒色系」かつ「草食系」。遅めのテンポによる細密な仕上げ、寂寥感とアイロニーの鋭さでは特筆すべき演奏だと思う。

    3 people agree with this review

    Agree with this review

  • 2 people agree with this review
     2009/07/20

    トロイ人との対比を出すためとはいえ、イドメネオ以下クレタ兵達の日本式鎧と刀には思わず笑ってしまうが、それを除けば、とても良くできた舞台で、スカラ座のボンディ演出と並んで、現在見られるベストだろう。海神の力を体現する黒子たちもザルツブルクの半魚人などより遥かに良い。配役上のミソは本来カストラートのために書かれたイダマンテをテノール(カウンターテナーではない)が演じることで、声楽上の問題をクリアできれば、これもありかなと思う。他には女性的な、細やかな側面も併せ持つエレクトラを演ずるダッシュに注目。指揮はモダン楽器ながら劇的で、彫りが深い。イドメネオの最後のアリアなど若干のカットはあるが、珍しいバレエ音楽(ただし、演じられるのはバレエではなく、残った出演者によるパントマイム)を含めた全曲上演。

    2 people agree with this review

    Agree with this review

  • 0 people agree with this review
     2009/07/11

    全体としてはSKBとの再録音の方が上だが、極めてロマンティックなシューマン。特筆すべきは録音で、弦の動きに管楽器がかぶってダンゴ状態になってしまいがちなオーケストレーションの弱点を音の録り方でうまく補整している。マーラー版のようにスコアをいじることなしに、ここまで明晰にスコアを隅々まで聴かせた録音は初めてだ。ただし、カップリングに一つ苦言。実はCSOとの全集のハイライトである、クレヴェンジャー以下、腕っこきホルニスト達の名技が味わえる「4つのホルンのためのコンツェルトシュトゥック」をぜひこの機会にCD化してほしかった。

    0 people agree with this review

    Agree with this review

  • 1 people agree with this review
     2009/07/06

    個人的には2005年大晦日のモーツァルト『プラハ』他は素晴らしかったと思うけど、やはりこの年のがDVD化されたのは曲目の見栄えの良さゆえでしょうね。もともとフィルハーモニーでの録音である限り、EMIの録る音がそんなにひどいと思ったことはないが、音質に関して目立った改善は感じられない。したがって、アンコールを含めた全曲目が収められたことと、絵がついたのがメリット。印象はCDと変わらずで、前半のボロディン2曲はめざましいが、『展覧会の絵』はこのコンビならではのセールス・ポイントが薄く、セッション録音で精密に仕上げたわけでもないので、前任者アバドのこだわりに及ばず。それでもボロディンだけでも十分、五つ星に値する。

    1 people agree with this review

    Agree with this review

  • 1 people agree with this review
     2009/07/06

    マーラーはホーネック、ルイージという今が旬の指揮者の演奏を見聞きした直後だけに点が辛くならざるをえないが、サイトウ・キネンだからそれが許されるとはいえ、あまりにも表現をオケ任せにし過ぎている。だから余裕のある、滑らかな演奏ではあるが、この三度目の録音で何がしたいのか、指揮者のコンセプトがさっぱり見えないし、この曲ならではの若々しい激越さや痛烈なアイロニーはすべて消えてしまった。ベルリオーズもアバド/ルツェルン祝祭管(このCDが発売中止とは何とも残念)やラトルの問題意識に比べてお手軽過ぎる。こういうアプローチならミュンシュで十分だ。

    1 people agree with this review

    Agree with this review

  • 5 people agree with this review
     2009/07/05

    日本では読響へのたびたびの客演でおなじみのホーネックも今やピッツバーグ響とシュトゥットガルト歌劇場を押さえる実力者。速いところではちゃんとテンポが上がるが、基本テンポが終始遅めなのは優秀な録音(拍手入りライヴとしては驚異的水準)を利してスコアを隅々まで聴かせようという意図か。この曲らしい若さや勢いはややそがれた感があるが、その代わり、マーラーならではの凝ったオーケストレーションを堪能できるし、そんなに大芝居を打つわけではないが、随所でこの指揮者ならではの個性的なスコアの読みが確認できる。

    5 people agree with this review

    Agree with this review

  • 2 people agree with this review
     2009/07/05

    ルイージとしては、かつてサヴァリッシュのもとで下積み時代を過ごした街への凱旋公演だが、後半のマーラーが圧巻。オペラ指揮者としては手堅い職人的手腕も持ち合わせた人だが、マーラーを振ると人が変わったようになる。第1楽章末尾の爆発的な盛り上がりから、早くもルイージの魅力炸裂で、指揮台から落ちんばかりの精力的なアクションにオケも敏感に反応する。変幻自在のアゴーギグを見せるスケルツォに続いて、葬送行進曲もデジタル的に緩急が急変する鋭い解釈(冒頭のコントラバスはユニゾン)。最後は速いテンポにオケが鳴りきらない印象もあるが、終楽章も凄まじいばかりの表現主義的演奏だ。

    2 people agree with this review

    Agree with this review

Showing 586 - 600 of 613 items