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Review List of des_abends 

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  • 2 people agree with this review
     2024/08/15

    マタイの冒頭合唱を聴き始めてびっくりした。錯覚だろうが何だろうが残響の長い教会か聖堂の真ん中の席でメンゲルベルクとコンセルトヘボウ管弦楽団のマタイにゆったりとひたっている気分になった。私の耳や脳がこの録音に聴き入るのではなく、部屋いっぱいにこの音楽が満たされていく感じがする。左からVn群、右から低弦が鳴るし、女声は左寄り、男声は右寄りに配置される(ように聴こえる)。ざらついた音はつややかで輝かしい音に置き換えられているようだ。もともと演奏会場で鳴っていた音は、左右に拡がって放たれ、聴き手は二つの耳で聴いていたので、モノラル録音で記録するのはそれを一点に封じ込めることで、そのこと自体が不自然で人工的な作業だということに、今更ながら気付いた。すぐれたステレオ録音は音楽に集中させ引き込むとともに、気分を大きく開放してくれるものだけれど、歴史的モノラルを聴くときには、そのきつく閉塞感にみちた音に立ち向かう気合いと集中力が必要だった。メンゲルベルクやフルトヴェングラーのマタイは大きく深い音楽だとわかっていても、なかなか取り出して聴く気にならなかったのは、数時間その窮屈さに耐える力がないからだろう。マタイの受難物語は誰もが人生の中で味わう体験と重なる切実な内容を演じているけれど、この新しいメンゲルベルクのリマスター盤は明るくのびのびと美しい音が拡がる。私はきれいな音でメンゲルベルクの音楽を聴きたいので、会場ノイズや女の人のすすり泣きが聴きたいわけではない。むしろ、ないほうがいい。リヒターの1958年盤は幸いすぐれたステレオ録音なので深刻であると同時に解放や安らぎも与えてくれるけれど、今後は大戦前のメンゲルベルクのマタイも構えることなく余裕をもって鳴らすことができる。こんなにも大きく音を変化させて世に出すからこそ、新しい商品の価値があるのだと思う。眉間にしわを寄せて原音に忠実な録音を聴きたい頑固な方は、無視したり間違って買ったら処分すればいいのです。新しい試みを非難、批判されるのは自由ですが、あまり自身の好みや聴き方を絶対視しないほうがいいと思います。
    余白の管弦楽組曲第2番も同じポリシーの音作りで一貫していました。ただ、マタイの終曲が終わるとすぐに始まってしまうのが残念。せめて1分位の空白がほしかった。LP時代から西独エレクトローラや東芝のブライトクランク盤を好んで聴いている私は軟弱派ですが、それと同じ反応が起こるのを見ると、人って変わらないものだなと改めて思いました。

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     2022/01/10

    コンクール後にシベリウスとブラームスがDGレーベルのLP2枚で発売され、CD時代になってそれらが2枚組になったが、そのもやもやした音質で聴いてきたためか、「え? これが優勝時の演奏?」と、こちらの気分ももやもやのままだった。ところが、今回の同じ日の同じ演奏がまるで別人の演奏みたいに、気迫と緊張感をまとってグイグイ聴き手の前に押し出されてきて圧倒された。優勝という結果にもあらためて納得と満足。40年間の機材の進歩かもしれないが、こんなにすばらしい音で収録された音源から、つまらない商品を供給したメーカーの無責任さに少々腹も立つ。そして、ブラームスも第1番だけだがコンクールでのライヴが収められている。いずれにせよ、以前のものをお持ちの方もぜひ本CDを購入されることをお勧めします。

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     2021/02/20

    カントロフの再録音というので気になっていたのですが、先の方のレビューに「問題外の録音」とあったので購入をためらっていました。ですが怖いもの見たさに買って聴いてみたところ、大正解でしたよ。再生装置との相性があるのかもしれませんが、Vnの音が「遠くで鳴っているような感じに」はなっていないと思います。ピアノはたしかに蓋を大きく開けて弾いているみたいで、カントロフのVnに遠慮することなく随所で前面に出てきますが不快感も違和感もなく、むしろシューマンの書いたピアノの音型が大変よくわかり、当然ですが晩年のシューマンがピアノのパートをしっかり書いていたことを示してくれた点で、これまでの他の人たちのとちがいます。繰り返しますが、かといってVnが奥に引っ込んでしまうわけではありません。初めて聴くピアニストですが、カントロフもこういうバランスの解釈で演奏したのでしょう。私には大いに新鮮に響きました。また、晦渋な第3番から逆に収録されているので、なぜかしらと思いましたが、第1番からだと最高傑作の第2番で胸がいっぱいになってそこで止めてしまい、なかなか第3番を聴かない。これだと珍しく3曲聴いてしまい、おかげで第3番にも親しめそうです。シューマンのVn作品を好きな方はカントロフの旧録音もこれも入手できるうちに購入されることをお勧めします。

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     2019/03/21

    HMVレビューでは全く触れられていませんが、この録音が以前の他の指揮者と違う点は、第9曲「サンクトゥス」のテノール独唱の扱いです。10の部分からなるこの大作で独唱はこのテノールだけですが、このソロが合唱団よりもっと奥から小さくしか聴こえないことです。最初はただ驚くだけでしたが聴いていると、まるで人の声ではなく天上からの呼びかけのように思えて、不思議な気分になりました。実演ではどんな配置で聴衆はどんな気分になったのでしょうか。ベルリオーズはなにもそう指定していませんが、一度これを聴くと他の録音が配慮のない無神経なものに思えてきます。ちょっと危険なディスクかもしれません。怖いもの見たいという方はぜひお聴きください。

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     2015/02/15

    以前の国内盤全集で聴いてきましたが、聴きくらべるとずいぶん音質が改善されたのがわかります。張り詰めたエッシェンバッハの高音や分厚い中低音の和音がかつての西ドイツプレスのLPの音に近づきました。前のがドアの向こうで鳴っているようです。壮絶なハ短調ソナタが本当に壮絶に再生されるのはLP以来久しぶりで、繰り返し聴いていた若い頃を思い出しました。端正なんてとんでもない。実演でも好調かつ本気になったときのエッシェンバッハは本当にすごかった。あの「ハンマークラヴィア・ソナタ」もこの音質で再発されることを切望します。

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     2013/10/19

    毎年あきれるほどのCDを買っても、心底ひきつけられ聴き入ってしまう音楽は数えるほどしかない。今年のbPはこれかなあ。モノラルなのは残念だが、それが瑣末なことに感じるくらいだ。精魂傾け、へとへとになるような弾きっぷり。セッション録音のもよかったが、こちらは百倍すてき。たくさん買ってきたシューマンのチェロ協奏曲のCDすべてがいくら端正に美しい音で鳴っても、ごみ箱に投げたくなるほどだ。第3楽章では他では聴けないすばらしいカデンツァを弾いている。これが18歳の少女の演奏だなんて! このあとゲルバーのブラームスを聴く気にはとてもなれないので未聴。シューマンやデュ・プレのファンでなくとも、手に入るうちに購入しておくことをお勧めします。

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