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Review List of clara 

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  • 14 people agree with this review
     2015/04/26

    非常に乱暴な表現かもしれないが、”仮に”ブリュッヘンやガーディナー、ジンマンなどの演奏が純粋なベートーヴェンであるとするならば、本盤はさらにラトルとウィーン・フィルの音楽性が加わることではじめて表現可能となった、切れ味と創造性、そして歌心と味わいに満ちたベートーヴェン全集であると言えるのではないか?ここまで豊潤で美しく、迫力のある音楽をベートーヴェンは想定していたであろうか?この演奏はベートーヴェンだけでは決してなし得なかったベートーヴェンもサプライズなものであると思う。昨今、「作曲家の時代はこのような演奏をしていた」とか「この作曲家ならこの様に演奏されることを望んでいる」といったことばかりが先行し、演奏家が自分の音楽性や人間性を放棄しているような感じがしなくもない。それに対しこの演奏はベーレンライター版を使用しつつも、ラトルという指揮者そしてウィーン・フィルというオーケストラのアイデンティティがしっかり打ち出せているところにも共感することができた。どうか、ピリオド奏法の演奏家ももっと自分の音、音楽性をもっと明らかにしてほしいと願うものである。かなわぬ願いかもしれないが、一度でいいからピリオド楽器でヴィヴラートをたっぷりかけたロマンティックな演奏も聴いてみたいとも思っている。というのも、ピリオド楽器の音を心底美しいと思ったことがないからである。このような聴き手がいるということも知って欲しいし、今後の演奏家にはこのような変わった実験精神を期待しているのである。

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  • 5 people agree with this review
     2010/05/31

     私事ではあるが、先々週の5月20日、我が家の愛犬が死んだ。私も妻も共に悲しみ、泣いた。満年齢でもうすぐ8歳という短い一生だった。妻は私にこのディスク(糸杉)をかけるよう頼んできた。私は言われたとおりCDをセットし、糸杉の旋律が流れてきた。そして彼女はそれを聴きながら犬の亡骸を優しくいとおしむように撫で続けた。彼女の目は例えようもなく美しく慈悲に溢れていた。
     人が愛する人を思うとき、心にはきっとこのような旋律が響くのだろう。ドヴォルザークはそれを慈しむように譜面に書きとめ、ウィーンSQは例えようもなく優しく美しい音色と歌心でディスクにこの曲を残した。この演奏を聴くたび、愛犬の最後の光景を思い出す。大いなる悲しみと、大いなる優しさを感じながら。恐らく他人には理解できないかも知れないがそういう訳で、このディスクは私と妻にとってかけがえの無いものとなっている。

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  • 6 people agree with this review
     2010/05/29

     それまで室内楽というものにさほど興味を持っていなかったが、このディスクのおかげで残りの人生の楽しみを見つけることができた、そういう意味でとても記念碑的なアルバム(勿論、自分にとって)。
     とかく曲に対する斬新な解釈やオーセンティックという名の責任放棄的な演奏をする人が多い昨今、音楽の基本とは何かをよく教えてくれているような気がする。とにかく奏者一人ひとりの音が美しい。フレージングが自然で優雅で心地よい。そして歌心に溢れている(緩徐楽章の何と感動的なこと)。このような演奏が可能になった背景には、プロデューサーやエンジニアの音楽に対する深い理解があったに違いない。このサイトを見ていると、カメラータのCDに対するレビューが殆ど無い。もっと多くの人びとに聴いてもらいたいディスクであり、レーベルである。毎月今度はどんな企画のCDが発売されるのか楽しみである。メジャーにはない渋い選曲とブックレットの「プロデューサー・ノート」や「レコーディング・データ(マイクの種類のみならず、本数までも記載している)」などがとても参考になるし、読んでいて作り手の思いがよく伝わるからだ。メジャー・レーベルもつまらない評論家のお決まりのライナー・ノートなぞ止めて自信を持ってプロデューサー・ノートを記載して欲しいものである。

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  • 14 people agree with this review
     2010/03/13

    キャスティングから演奏、レコーディング・編集までをひとつの作品とするならば、これほど製作者の良心と創意・工夫そして情熱が伝わってくる作品は滅多に無いのではないか?人によっては「オペラハウスではこんな風に聴こえない」とか「変な効果音が入っていて気に入らない」と言う人もいることだろう。しかし、現代のようにライヴを「ただ収録しただけ」の、尚且つパッとしない演奏に比べれば何十倍も臨場感があると私は感じる。この臨場感は、目を瞑ればオペラハウスがイメージできるというスケールの小さなものではなく、まさにワーグナーが思い描いていた物語世界に自分自身がいるのではないかと思わせるような臨場感なのである。これは正に製作者の確固たるポリシーとファンタジーが結実したものであり、最近の録音には希薄な要素である。というよりもこの作品に突出して認められる特色であり、こうした点においてこのアルバムは、現代においてなお一層光輝く。とにかくこの録音が今から50年以上も前のものであることに驚嘆せざるを得ない。LP初出時をリアルタイムで体験していないが、そのインパクトは相当なものであったのは想像に難くない。当時のDECCAの人材・技術の水準の高さを思い知らされる一品である。

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