Kenny Wheeler

CD Songs For Quintet

Songs For Quintet

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    hiro  |  愛知県  |  不明  |  19/January/2015

    Kenny Wheeler(1930年1月14日〜2014年9月18日)は、イギリス・ジャズ界の重鎮でした。一時は、フリー・ジャズの世界に身を浸していましたが、ECMを主な活動の舞台として以降は、その美しいトランペット、フリューゲルホーンの響きで、多くのジャズ・ファンを魅了してきました。 ECMからは、Keith Jarrettの参加で注目を集めた「Gnu High (1975年)」でデビュー。その後も数々の名作をリリースし、とりわけ、John Taylor、Norma Winstoneと結成した「Azimuth」は、いかにもECMらしい透明感溢れるサウンドで、後続のミュージシャン達にも影響を与えてきたと思います。 また、ロック・ファンには、David Sylvianのアルバムに参加したことでも知られています。 さて、2013年12月に、ロンドンのアビーロード・スタジオで録音されたこの「Songs for Quintet」は、残念ながらWheelerの遺作になってしまいました。 ECMとしては珍しいデジパック仕様で、これまでのアルバムが紹介されているブックレット付きというのも、また、発売日の2015年1月14日がWheelerの誕生日だというのも、ラスト・レコーディングだからでしょうか? プロデュースは、Manfred EicherとSteve Lakeの連名となっています。曲は全て、Wheelerのオリジナル。 穏やかなアンサンブルを聴かせてくれる「Seventy-Six」。まろやかなJohn Parricelliのギターが耳に心地良く感じられます。Wheelerのフリューゲルホーンは、朗々と響き渡り、80歳を超えているとはとても思えない堂々たる演奏ぶり。 センシブルで正統派のジャズを感じさせる「Jigsaw」。Stan Sulzmannのサックスと、 Parricelliのギターがクールさを強調します。 哀愁のこもったフリューゲルホーンが聴ける「The Long Waiting」。フリューゲルホーンに続くギター、サックスのソロにも情感が溢れています。 Chris Laurenceのベースが先導し、全員のアンサンブルが前へ前へと進んでいく「Canter No.1」。浮遊感のあるギターがアクセントを付け、サックスが艶やかで流麗なソロを奏でます。 「Sly Eyes」は、Martin Franceの小気味よいドラムスからスタート。どこかスパニッシュ風のサウンドが、ミディアムテンポで繰り広げられます。全員が一丸となった分厚い演奏。 サックスとギターによるフリー風のからみから始まる「1076」。その後も、特定のリズムはなく、コレクティヴ・インプロヴィゼーションが展開されます。 「Old Time」は、前曲の余韻の中からリズミックに立ち上がってきます。軽快なフリューゲルホーンに続くクールなサックス・ソロが印象的。ベースも前に出てきます。 深い余韻を残すギターに続いて、フリューゲルホーンとサックスがテーマを繰り返す「Pretty Liddle Waltz」。フロント3人の思いが込められた演奏には、哀感が沁み渡っているかのよう。 ラストの「Nonetheless」からは、本作の美しいジャケットのような風景が浮かび上がります。フリューゲルホーンが軽やかに曲を引っ張り、ギターのリズミカルなソロに続いて、サックス・ソロがサウンドに厚みをもたらします。ベース、ドラムスの控えめなサポートも見事。5人の音のアラベスクは、静かにその幕を閉じていきます。 ここにあるのは、極めて上質で端正な、大人による大人のためのジャズ。 Wheelerの「白鳥の歌」を聴いて下さい。

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