宮沢賢治疾中、ポラーノの広場他 / 中島敦悟浄出世・悟浄歎異他 池澤夏樹=個人編集日本文学全集 全30巻
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izkeiske | 岡山県 | 不明 | 25/April/2021
本シリーズは池澤氏の個人編集なので、編者自身の文学的嗜好が作品の選考に大きく関わっていることはある意味自然なことですが、本巻には特に池澤氏の好みが色濃く反映されているように思えます。例えば宮沢賢治における、自然と人間の関わりを描いた作品の取り上げ方は、池澤氏「スティル・ライフ」の冒頭、「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。」と言う自然観に対する一種の「宣言」と極めて合致しているように思えます。 また中島敦においても、冒頭にあえてパラオを舞台にした「環礁」を取り上げているところなど、選者の南洋に対する憧れ(「マシアス・ギリの失脚」を挙げれば充分でしょう)が如実に反映されているもののように思えます。中島敦といえば中国を舞台にした作品しか知らなかった私には、「環礁」のどこか物憂いような、一種魔術的な味わいを持った作品に触れ得たことは、新鮮な驚きでした。池澤氏の好みに沿えば、中国ものでは有名な「山月記」や「名人」が収録されていてもおかしくはないように思いましたが、あまりに幻想的要素の強い作品が並ぶことに対して一種のバランス感覚が働いたのでしょうか。(もちろん「弟子」「李陵・司馬遷」も文句なしの名作です。) 本巻は宮沢、中島両者の、一般のイメージからはちょっと違った側面を味わえる選集として、本シリーズの中でも強くお勧めしたい一冊です。0 people agree with this review
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