地図の中の札幌 街の歴史を読み解く
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ココパナ | 北海道 | 不明 | 13/April/2021
物理学者であり、地図収集・研究家でもある堀淳一氏による趣味性満載の一冊。開拓以来、たびたび発行されてきた様々な年代の5万分の1地形図を引用しながら、時代ごとに、札幌の各所から象徴的な箇所を抽出・紹介されていく。1898年(明治30年)に発行された「札幌沿革史」には、開拓使が置かれた1869年(明治2年)当時の札幌の様子が、以下の様に表現されている。「鬱々たる密林、ほうほう(草冠に凡で“ほう”)たる茅野(ぼうや)相接し、狐兎棲息し、熊鹿出没し、真に野獣の巣窟たりき」。寒冷なる大地の開拓と、世界的にも稀な大規模移民による都市建設は、ここから始まった。古地図たちは、その当時の状況を詳細に伝えている。時代の変転とともに、開拓地の面積、地表水の所在、産業の構造、交通のシステムは劇的に変容し、そのことが地図にはっきり示される。また、氏のコメントは地図が発行された年と、測量が行われた年の「タイムラグ」にも可能な限り言及しており、必要な補正についても適宜、補筆の形で記載されているのが助かる。かつて札幌がおおくの「村」に分かれていたときの境界線の形状や、扇状地のメム(泉)から発生する多くの水路の暗渠化、いつの間にか失われた「地名」、あるいは住所から消えても、いまなお様々な形で残る「地名」など興味は尽きない。札幌という街が、いかに短期間で劇的に変容してきたか、またそのスピード感の中で何が失われてきたか、多くの貴重な痕跡が記されている。また、軽川(がるがわ;現在の手稲)と花畔(ばんなぐろ)を結んでいた軽石軌道、現創成川通沿いに札幌と茨戸川を結んでいた札幌軌道、苗穂・白石から豊平を経て定山渓に至る定山渓鉄道、定山渓近辺の森林鉄道などが記載された詳細な地図などもたいへん興味深い。かつての鉄路の場所とともに、当時の周辺状況が詳細にわかる。「文章」の量は少ないため「読み物」としてはすぐに読み終わってしまうが、氏の指摘するポイントを、一つ一つ、引用されている地図で確認し、「なるほど」と納得しながらゆっくりと読み進めるのが本書の楽しみ方と言えそうだ。また、しばしば「コラム」と概して、氏の思い出話や、願望(「もしも?だったら」の様な内容)が気楽な筆致で書かれているが、こちらは読んでみて、昔に思いを馳せたり、あるいはその気ままな発想にニヤリとしてみたりするのが楽しいだろう。札幌という町は大都市でありながら、強く郷愁を漂わせる街である。これは時代の急な流れの中で、傍流として時間の止まった箇所があちこちに点在するためで、その混交ぶりが人の心のどこかに触れるためだと思う。1972年のオリンピックの際に、近代化と称して、多くの無粋な建築物がこの街並みを壊してしまった観があるが、それでも、まだ東区や、市電の沿線には、昔の「札幌らしさ」を色濃く漂わせた地域がある。開発一辺倒ではなく、急激な都市化の過程で、20世紀の様々なものが地域ごとに混交し、それが不思議と一体感のある景色となっている。私は、そんな札幌が好きである。そのような札幌を時間軸に解きほぐしていくような本書には、あらためて強い郷愁を感じるとともに、時の流れを強烈に思い知らされるものでもある。札幌という街の「不思議さ」を感じたことのある方には、是非読んで(見て?)いただきたい一冊だ。0 people agree with this review
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