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地図の中の札幌 街の歴史を読み解く

堀淳一

User Review :5.0
(1)

Product Details

ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784906740024
ISBN 10 : 4906740022
Format
Books
Publisher
Release Date
November/2012
Japan

Content Description

地図エッセイの名手が、道都一四〇余年の変遷を探索!すべての地図愛好者に贈る、新旧一八〇枚の地図を駆使した札幌タイムトラベルへの誘い。

目次 : 1 札幌の沿革略史(なぜ北海道の首府に、札幌の地が選ばれたのだろうか?/ 札幌本府から第一期札幌区まで ほか)/ 2 札幌市に吸収された旧町村(山鼻村/ 円山村・藻岩村・円山町 ほか)/ 3 地図にみる札幌の鉄軌道系公共交通機関(鉄道/ 軌道)/ 4 地図にみる札幌の道路・街区・水路と水運(道路/ 街区(中心部) ほか)/ 5 札幌の風変わり地図―鳥瞰図、変わりもの地形図・市街図、特殊地図(鳥瞰図/ 変わりダネ地形図・地勢図・市街図 ほか)

【著者紹介】
堀淳一 : 1926年、京都府に生まれ、1935年、札幌に移住。北海道大学理学部卒業後、同大学低温科学研究所助手等を経て、物性物理学・統計力学・数理物理学を専攻。理学博士。1980年まで同大学理学部教授として主に物理の研究・教育に従事。同年、大学を退職し、エッセイストに転向。地図と旅の愛好者の集まり「コンターサークルS」を主宰。1972年、『地図のたのしみ』(河出書房新社)で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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物理学者であり、地図収集・研究家でもある...

投稿日:2021/04/13 (火)

物理学者であり、地図収集・研究家でもある堀淳一氏による趣味性満載の一冊。開拓以来、たびたび発行されてきた様々な年代の5万分の1地形図を引用しながら、時代ごとに、札幌の各所から象徴的な箇所を抽出・紹介されていく。1898年(明治30年)に発行された「札幌沿革史」には、開拓使が置かれた1869年(明治2年)当時の札幌の様子が、以下の様に表現されている。「鬱々たる密林、ほうほう(草冠に凡で“ほう”)たる茅野(ぼうや)相接し、狐兎棲息し、熊鹿出没し、真に野獣の巣窟たりき」。寒冷なる大地の開拓と、世界的にも稀な大規模移民による都市建設は、ここから始まった。古地図たちは、その当時の状況を詳細に伝えている。時代の変転とともに、開拓地の面積、地表水の所在、産業の構造、交通のシステムは劇的に変容し、そのことが地図にはっきり示される。また、氏のコメントは地図が発行された年と、測量が行われた年の「タイムラグ」にも可能な限り言及しており、必要な補正についても適宜、補筆の形で記載されているのが助かる。かつて札幌がおおくの「村」に分かれていたときの境界線の形状や、扇状地のメム(泉)から発生する多くの水路の暗渠化、いつの間にか失われた「地名」、あるいは住所から消えても、いまなお様々な形で残る「地名」など興味は尽きない。札幌という街が、いかに短期間で劇的に変容してきたか、またそのスピード感の中で何が失われてきたか、多くの貴重な痕跡が記されている。また、軽川(がるがわ;現在の手稲)と花畔(ばんなぐろ)を結んでいた軽石軌道、現創成川通沿いに札幌と茨戸川を結んでいた札幌軌道、苗穂・白石から豊平を経て定山渓に至る定山渓鉄道、定山渓近辺の森林鉄道などが記載された詳細な地図などもたいへん興味深い。かつての鉄路の場所とともに、当時の周辺状況が詳細にわかる。「文章」の量は少ないため「読み物」としてはすぐに読み終わってしまうが、氏の指摘するポイントを、一つ一つ、引用されている地図で確認し、「なるほど」と納得しながらゆっくりと読み進めるのが本書の楽しみ方と言えそうだ。また、しばしば「コラム」と概して、氏の思い出話や、願望(「もしも?だったら」の様な内容)が気楽な筆致で書かれているが、こちらは読んでみて、昔に思いを馳せたり、あるいはその気ままな発想にニヤリとしてみたりするのが楽しいだろう。札幌という町は大都市でありながら、強く郷愁を漂わせる街である。これは時代の急な流れの中で、傍流として時間の止まった箇所があちこちに点在するためで、その混交ぶりが人の心のどこかに触れるためだと思う。1972年のオリンピックの際に、近代化と称して、多くの無粋な建築物がこの街並みを壊してしまった観があるが、それでも、まだ東区や、市電の沿線には、昔の「札幌らしさ」を色濃く漂わせた地域がある。開発一辺倒ではなく、急激な都市化の過程で、20世紀の様々なものが地域ごとに混交し、それが不思議と一体感のある景色となっている。私は、そんな札幌が好きである。そのような札幌を時間軸に解きほぐしていくような本書には、あらためて強い郷愁を感じるとともに、時の流れを強烈に思い知らされるものでもある。札幌という街の「不思議さ」を感じたことのある方には、是非読んで(見て?)いただきたい一冊だ。

ココパナ さん | 北海道 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • 六点

    地図紀行の大家の畢生のシリーズ『地図の中の北海道三部作(今勝手に命名した)』の第一作。イマイチ札幌に住んだことが無いせいかスケール感がよくわからないのが難点である。なにせ近畿地方の狭苦しい所に住んでいるせいである。札幌は複数のグリッドが合成された都市であるが、そのグリッドの統合をかなり力技でやってしまっているのに驚かされる。しかし、寒村から200万近い人口を抱える巨大都市に膨れ上がっているのだが、その面的拡大はものすごいものがある。終章の主題図ざっくばらんは是非地図好きは読むべし。

  • ドラマチックガス

    札幌の古い地図がたくさん。著者は物理学博士でありながら趣味で地図の本をたくさん書いている、オタクの理想を凝縮したような方(「鉄道は好きだが鉄道マニアといえるほどではないので」という前フリから繰り出されるこだわりに満ちたマニアなコメントも含めて)。解説文も味があるけれど、どうしても豊富で鮮明でフルカラーな地図に目がいってしまう。その分お値段もはるけれど、十分納得。

  • ろべると

    堀淳一といえば「地図のたのしみ」(1972)などを若い頃に読んで、地形図愛好家として記憶に残っていたが、超久しぶり。北大の物理の先生だったとは知らなかった。本書は著者が学生時代から住む札幌について、その成り立ちや変遷を豊富な地図とともに紹介する。最近札幌に縁ができたこともあり、何もない沼沢地のようなところから大都市に発展した様子がリアルに感じられて実に興味深い。人工的に作られた街だからこそ、ダイナミックな変化をみてとることができるのだ。コラムも味がある。鉄道路線に関する続刊も、値が張るけど読んでみよう。

  • yujiru2001

    この本はすごい。社会科(地理、歴史)が好きな人には堪らない本だと思う。名著です。

  • とりもり

    大著。これだけの地図をコレクションし、しかもテーマ毎に分かりやすく解説してくれた著者に感謝。個人的には、札幌に来た時に最初に疑問に思った創成川の由来(大友堀を創成橋の架橋とともに改名)が分かったのが良かった(疑問に思ったことを忘れてたけど…)。後は、並木地図にナナカマドが登場しないのが残念、個人的に一番好きなので。図書館で借りたけど、これだけの労作にはきちんとお金を払うべきではないかと思い、購入検討中。もう少し安いとなおいいのに。★★★★★

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