モーリス  |  埼玉県  |  不明  |  06/October/2012

シューリヒトは録音運が良い指揮者とは決して言えないだろう。６０年代半ば迄存命したにも拘らずステレオ盤が数点しか存在しないと言う事。返す返すも残念で堪らない。マイナーレーベルから初出のライヴのステレオが稀に登場するが演奏が素晴らしいのに音質は粗悪な物が殆どである。そんな折、今回のこのセットは内容といい価格といい嬉しい限りである。ベートーヴェンは第９だけがステレオだがどの曲も速めのテンポと颯爽とした推進力が見事で時折覗かせる寂しさが何とも言えない。ブルックナーはやはり、第９が最高で彼の録音の中でベストに挙げる人は多いでしょう。淡白な表現の中に無限のニュアンスを湛え、常に有機的な響きを失わず本当に美しい。それにこの全体を支配する寂寥感は如何だろう。