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Mozart (1756-1791)

CD Sym.29, 32, 33, 35, 36, 38, 39, 40, 41: Karajan / Bpo

Sym.29, 32, 33, 35, 36, 38, 39, 40, 41: Karajan / Bpo

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  • ★★★★☆ 

    jasmine  |  愛知県  |  不明  |  25/July/2024

     カラヤンが本拠地ベルリ・フィルハーモニーザールで、満を辞して取り組んだモーツァルト。70年のEMI盤が、五日間連続して一気に収録されたのに対し、このDGG盤は75年から77年にかけて、一曲ずつ、慎重に録り貯められた。ベートーヴェンの交響曲全集と同じく、曲目によっては一年以上経ってから機会をあらためて録り直すといった周到な進め方がなされた。  カラヤンは75年末に椎間板の手術を受けるが、その結果は必ずしも成功したとはいえず、亡くなるまでの間12回も入退院を繰り返すこととなった。時には真っ直ぐに歩くことも、じっと立っていることもままならないこともあったという。そうした深刻な事態は、集中力と忍耐力を要するセッション録音の出来栄えに多大な影響を及ぼすこととなるが、綿密な計画の上に組み上げられるオペラ全曲のセッションは別として、管弦楽曲のレコーディングでは例外的にベートーヴェンとモーツァルトの交響曲だけは、先に記したように、推敲に推敲を重ねるかのような方法が採択された。  ベートーヴェンの場合は、60年代の《金字塔》とも称すべき名作をも過去のものとするかのような、カラヤンとベルリン・フィルが到達した理想の響きを刻印する奇跡的名演が遺されることとなったが、モーツァルトに関しては、そこまでの成果を挙げることは出来なかった。  モーツァルトは難しい。ベートーヴェンの音楽が、その素晴らしい楽曲となって成立するまでの間、楽聖の頭と心を大いに悩ませたのとは対照的に、モーツァルトの作品は、この天才の閃きとともに、まるで泉が湧き出るかのように、完全なカタチで描き上げられたのである。作曲者自身のオリジナルの譜面を見ても、ベートーヴェンのスコアには幾度にも亘って書き直した痕跡が残されているのか確認できるが、モーツァルトのそれには、書き直した跡がない。  興味深いのは、名匠カラヤンが、世界最高の楽団とともに、これまで何回演奏してきたか分からないほどの手練れの演目にもかかわらず、彫塑に彫塑を重ねて造り上げるという手法が、ベートーヴェンでは成功したのに、モーツァルトでは通用しなったということ。むしろ、全盛期のカラヤンが一筆で書き上げたかのようなEMI盤の演奏の方が、その本質を捉えているように思われる。無論、DGG盤が凡演だという訳ではないが、技能や技量だけでは如何ともし難いハードルがあって、全力でブチ当れば突破できる壁と違って、軽々と飛び越えて行くしかないといった感じだろうか?  天才モーツァルトと故郷を同じくするカラヤン。その見事な 演奏が展開されていることは認めるものの、私は、カラヤンのモーツァルトならば、70年のEMI盤をもって代表させたい。  

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  • ★★★★☆ 

    ShinT  |  神奈川県  |  不明  |  02/May/2024

    1973年の来日公演でメインプロのチャイコフスキーの4番とほぼ同じ人数の弦楽器で演奏されたにもかかわらず透明感に溢れた繊細かつ絶妙な41番をNHKホールで聴いた人間としては、それとイメージが重なるEMI録音のLPで聴かれる至極真っ当に曲に取り組んだ演奏に惹かれます。グラモフォン録音のSACDはもう少し踏み込んだリアルな響きですが基本的なアプローチはEMI録音と変わらず、現代のフルオケの機能美と色付けのないカラヤンのアプローチの見事な融合を聴くことが出来ます。カラヤンの演奏をことさら美しく磨いた人工美の極致のように取り上げる批評は全く木を見て森を見ずと言わざるを得ず、固定観念に囚われたステレオタイプの受け売りと言わざるを得ません。 百歩譲って、最後の三曲、とりわけ41番はモーツァルトが晩年に到達した音楽の実像を伝えてくれる絶美の演奏だと思います。

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