Mozart: Piano Concertos No.14-No.18
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窓際平社員 | 徳島県 | 不明 | 03/February/2020
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのピアノ協奏曲というと、通し番号にしてNo.20以降の曲が人気なのだけど、ルドルフ・ゼルキン(以下「ルドルフ」)の子息であらせられるピーター・ゼルキン(以下「ピーター」)は、敢えてNo.20以前の作品―No.14からNo.19まで―をチョイスして録音に臨んだ。ここではNo.18までが収録されており、No.19はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのニ長調のヴァイオリン協奏曲のヴァイオリン独奏パートをピアノ用に編曲したバージョンのカップリングとして別売りされている。 ルドルフはベートーヴェンの作品を中心に、モーツァルトの作品も得意とし、No.20以前の作品も折に触れて取り上げていたものだが、ピーターはルドルフのエピゴーネンとして扱われないよう、細心の注意を払って録音している。ルドルフの盟友であるアレクサンダー・シュナイダーにイギリス室内管弦楽団を指揮させて伴奏を任せているのは、自分のことをよく分かってくれるからだろう。 ルドルフの演奏は、80代にクラウディオ・アバドと録音したドイツ・グラモフォン盤こそ年齢相応の腕の衰えを感じさせるものの、壮年期の録音では往々にして気さくに語りかけてくるような親しみやすさがある。細かいことには拘らず、豪快に弾いていく気風の良さに、頼れる兄貴のような魅力があった。 ピーターの演奏は、ルドルフがざっくり弾くようなフレーズの一つ一つ、いや音の一つ一つの意味を熟考し、表現方法を模索していくような弾き方をする。ルドルフと同じような弾き方を絶対にしないように自らを律しつつ、慎重に音楽を奏でていくので、軽やかで心地よい音楽とはならない。まるでモーツァルトの曲を弾きながら、ルドルフとは違う自分の芸風のあり方を自問していくような内向性が強く感じられる演奏であろう。息が詰まるような緊張感、あるいは切迫感が刻印されている。 伴奏を指揮するシュナイダーは、自問自答の世界に沈潜しそうなピーターを現実に引き戻す役割を担う。テンポの設定は基本的にピーターにイニシアチブを渡しているのだが、各曲の第一楽章の管弦楽による提示部では溌溂とした演奏でピーターの音楽性を刺激している。伴奏に回る際でも、ただのお付き合いとして音を添えるのではなく、ピーターの紡ぎ出すニュアンスに的確に呼応し、モノローグに傾こうとするピーターをうまくディアローグの土俵に留めている。 その後、ピーターは紆余曲折を経て、音楽家として着実に成長していったが、21世紀に入って、これらの協奏曲を再録音することがあれば、どんな演奏が出来上がっただろうか。ピーターがその気にならなければ、それを確かめることは出来なかったわけだが、それを確かめる術が、今や完全に絶たれてしまった。実に残念だ。0 people agree with this review
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