Le nozze di Figaro : Kusej, Raphael Pichon / Vienna Philharmonic, Baczyk, Devieilhe, Schuen, A.Gonzalez, Desandre, etc (2023 Salzburg Stereo)(2DVD)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 01/January/2025
ミュンヒェンのレジデンツ劇場、ウィーンのブルク劇場とストレート・プレイ専門劇場の監督を歴任し、しばらくオペラから遠ざかっていたマルティン・クシェイがオペラの演出に戻ってきた。現代の衣装による上演だが、HMVレビューの通り、伯爵はギャングのボス、全登場人物がギャング団の面々というのが今回の売り。『フィガロ』も一皮むけば、『ドン・ジョヴァンニ』に劣らぬセックスと暴力、ドラッグと酒の匂いのする酷薄なオペラであることを暴いてしまった。第1幕冒頭はホテル内のバー、第2幕は伯爵夫人の浴室など、すこぶる無機質なホテルの内部が舞台になっており、複数の部屋で出来事が同時進行するのはザルツブルクでの前の世代のベヒトルフ演出(2015年〜)と同じだが、第3幕冒頭では伯爵のモノローグと伯爵夫人/スザンナの会話が重なって語られる--確かにそう書かれているのだが、普通の上演ではどちらも聞き取れるように配慮される--など、さらに大胆。マルツェリーナとバジリオのアリアはカット、第3幕の伯爵夫人のアリアを六重唱の前に移しているが、これは先例あり。レチタティーヴォの台詞も少し書き換えられている。 『レクイエム』でも素晴らしいモーツァルトを聴かせてくれたピションの指揮が抜群。速めのテンポで全曲に生気がみなぎっているが、最後のContessa, perdono!(妻よ、許しておくれ)はたっぷりしたテンポでコントラストが尖鋭。歌は適宜、譜面にないヴァリアントを加えるほか、フォルテピアノも奔放に動く。もちろんノン・ヴィブラートのHIPスタイルだ。歌手陣もきわめて強力。ほとんどドン・ジョヴァンニ風のシュエン(伯爵)、これまた「小」ドン・ジョヴァンニぶりを発揮するデサンドル(ケルビーノ)、演出の設定に従って、狡猾かつ清純なドゥヴィエル(スザンナ)、少なくともこの三人は超一級品だ。ゴンザレス(伯爵夫人)も歌だけなら及第点だが、演技がちょっとトロい。ポンチク(フィガロ)は鈍重で、頭の回転が速そうに見えないが、前からボスの愛人だったスザンナに何も知らずに求婚してしまったという設定なので、意外にハマリ役か。 日本語字幕はCmajor時代のものから一新されたが、機械翻訳をそのまま載せたかのごとき直訳。Si「はい」とNo「いいえ」だが否定疑問文に対する答えとしては「はい」--の言い間違いでスザンナが伯爵を翻弄する二重唱(もともとそうだけど、この演出では、ひときわエロい場面)など、至る所で肝心な言葉の訳がなく、第2幕ではタイミングのずれありと散々な出来。1 people agree with this review
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