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Brahms (1833-1897)

SHM-CD Violin Sonata, 1, : 塩川悠子(Vn)A.schiff(P)+schumann: Violin Sonata, 2,

Violin Sonata, 1, : 塩川悠子(Vn)A.schiff(P)+schumann: Violin Sonata, 2,

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    うーつん  |  東京都  |  不明  |  13/October/2024

    楽器でなく、楽譜に歌わせているかのような親密な音楽を聴くことができた気がする。  ヴァイオリン・ソナタは「歌う楽器」ヴァイオリンを、美音で目いっぱい歌わせてこそというのが当たり前だと思う。私の印象として、塩川悠子のヴァイオリンは美しく歌わせるより、きちんと楽譜を語らせるような鳴り方をしているように感じる。大げさなことをせずとも、声高に美音を押し付けなくとも作曲者が書き付けた想いをそのままヴァイオリンに乗せて届ける…(そうはいっても塩川さんのヴァイオリンは、とても美しく凛とした佇まいの音です)。  特にそう感じるのはブラームスでの第2楽章。(多分だが)ビブラートを少なめに音を発しながら、(ビブラートで感情の揺れを表すのでなく)そこに置かれた音をていねいに奏でて何とも言えない情感が心に浮かんでくるのだ。発売前、レビューページにアップされた音源でじんわりと心が暖かくなったように感じた。楽譜も読めない私が書くのは失礼と承知の上で、私は彼女の演奏に上記の感想を持った。  そしてそのヴァイオリンを支えているのがアンドラーシュ・シフのピアノだ。こちらもヴァイオリン同様、楽譜に歌わせていて、余計な主張はしない。なのに心にスーッと沁み込んでくる。これがこのデュオの真骨頂なのかもしれない。  それにしても、なんでこんなに平易に弾かれているようで深く伝わってくるのだろう。美しい音と落ち着いた解釈だけでこんなに沁み込むとは思えない。そう考えているうちに思ったのは、シフの左手。右手がメロディーを奏でる中で見え隠れする左手の音の数々。左手の動きで音楽がより立体的に構築されているように思える。それは、何となくバッハの音楽などに聴かれる通奏低音のような役割をもっている気がする。シフがバッハ演奏においても多くの経験と智慧を持っていることを思い出された。ヴァイオリンの旋律とピアノ右手による伴奏を下支えし、それらの存在を浮かび上がらせるように、しかも目立ちすぎずに左手が時折的確に音をクローズアップしているように聴こえる。「2人での演奏」でなく「3人での演奏」のように感じる。そこにシフによる伴奏の素晴らしさの秘密があるように思える。(私の贔屓目でそう感じてしまうのかもしれないが…)  ここに収められた2曲、曲想が違い対照的な印象だが作曲者ふたり(ブラームス、シューマン)の持ち味や特長をうまく紹介しているように思う。しかも極上の表現で。塩川悠子とアンドラーシュ・シフ…この良い年輪を重ねてきたご夫妻によるECMでのディスク(第1弾はシューベルト、第2弾はバッハ・ブゾーニ・ベートーヴェン。どちらも素晴らしい演奏)はこれで3枚目。これで終わりとせず、もういくつか発表されるのを心待ちにしたい。おそらくそれも私の心に何かを残してくれると思う。今回のブラームス&シューマンがそうであるのと同じように。そして他の皆さんの心にも何かを残してくれることを確信し、当盤をお薦めしたい。

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