HMV : では、まずは簡単に自己紹介をお願いします。
井上 : 1984年生まれ(笑)、ベースの井上亮です。よろしくお願いします。
菅原 : えっと、ピアノの菅原敏です。よろしくお願いします。
渡辺 : ドラムの渡辺マーシーです。よろしくお願いします。
HMV : えー、ではプロフィール的なところから…、Re-Trickの結成の経緯・流れのほうを簡単にお聞かせ願いたいのですが。
菅原 : 代々木の音楽の専門学校でそこの同期なんですけど…僕は普通に大学に入って卒業して、東京に出てきてそこの専門学校に入ったんですけど…二人は高校を卒業して、そのまま専門学校に入ったので、年齢は離れているんですけど一応同期で…そこで学校のイベントライブとか出演する際に割とこのメンツでやってて。卒業してからなんですよ、実際に組んだのは。経緯としてはそんな感じですね。
HMV : 菅原さんが2人を強引に誘ってっていう感じなんですか(笑)?
菅原 : いや、違いますよ(笑)なんかもう、自然に集まった感じですね。誰が誰を誘ったわけでもないし、誰がリーダーってわけでもないし。学校なんでドラマーとかベースはいっぱいいるんですけど、その中でも…
渡辺 : 近くにいたから?座ってたから?(笑)学園祭のメンバーを集めるのに、とにかく出たいだけなんで。
菅原 : お前ベースみたいな(笑)
渡辺 : じゃあやろう、みたいな感じで。最初はそんな感じですね。特に何も考えずに。
HMV : ストリートライブも結構やられてますが、ライブハウスでやるのって違いますか?
菅原: そうですね…特に… 違いすぎ(笑)
HMV : どっちが好きかとかは?
ドラム: ストリートだと冬だったら寒いし、夏だったら暑いし(笑)
菅原: 天候とかで出来ないこともありますからね。
HMV : 僕個人的にひっかかったというか、グッときたのはグループ名の「Re-Trick」(レトリック)って
「美辞麗句」ってそういう意味合いの言葉ですよね。
菅原: あぁ、そうです。綴りが違うんですけど「修辞技法」(Rhetoric)とかそういう言葉に一応かけてるところもあります。昔は音楽性が変わってて、割りと小難しいことを入れてやったりしてて…。トリッキーなアレンジにしたりとか、そのままストレートな意味も含めてそういう感じだったんです。最近はそうでもないので…割と変わってきてるんですけど。そういう「レトリック」という言葉自体にかけているところもありますね。
HMV : 3/11にリリースされる「Another Side Of Agenda」。これはスタジオ録音楽曲も3曲を含みつつ、純粋な今のピアノトリオのエナジーを最もダイレクトに伝える手段としてライブというレコーディングフォーマットを選んだのかな、という印象を受けたのですが。 このライブという方法を選んだ理由は?
菅原: うちらはどちらかというとスタジオにこもって録るというタイプよりは、ライブを聴いてほしいというタイプのバンドなので・・・やっぱりライブバンドという自負があるので。空気感というかスピード感というか…勢いをその辺を伝えるフォーマットとしてはライブをそのまま録るのが一番自然なのではないかという感じで。いろいろ2ndについてはどんな形にするかっていう議論をしたんですけど。でもやっぱりライブが一番いいんじゃないかという…。
HMV : では各楽曲、全9曲の簡単な解説を頂いてもよろしいでしょうか?えーと、1曲目ですね。「Decadence」。
渡辺 : うーん「アフリカン」ですね。(笑)イメージ的に作曲者がピアノの菅原なんですけど。イメージがアフリカのイメージがあったみたいなんで、音的にもドラムのテーマの部分とかは原始的っていうか太鼓の音が出るような…
HMV : ニュアンスってすごくうまく出ますよね。 もともとアフロとかラテンジャズとかその辺りの太鼓とかは叩かれていたんですか?
渡辺 : え、全然やってないです(笑) なんか正しいかどうかはわかんないんですけど。これが自分の中で出来た勝手なイメージですね。自分の解釈です。そのほうが面白いかな、と。基本的に全部そうです。(笑)
HMV : それでは2曲目「Sketch - 2009 Version 」。
菅原: これはいつもストリートの時に毎回やってる曲で、けっこうライブでも最後の方にやってる曲なんですけど。少しアレンジを変えて再収録という。人気のある曲なので。
HMV : 3曲目「Too High」。
菅原: これはStevie Wonderの「Innervisions」だっけな…アルバムの1曲目なんですけど。カヴァーもやるっちゃ、やるんですけど。
HMV : Jackson Sistersの「I Believe in Miracles」とかMichael Jacksonの「Thriller」とかもブログで拝見したらやられてませんでしたっけ?
菅原; そうです。やってます、やってます。 「Thriller」も原曲がわからないようなアレンジになっちゃって(笑)
HMV : それちょっとかなり聴いてみたかったんですけど。
菅原: 最近でもやってますね、それは。今回は入れてないんですけど。カヴァーもジャズスタンダードはやらないバンドなんで。好きな曲を。Stevie Wonderはけっこう好きなので。
HMV : 他にもこの辺のSOUL、NEW SOULとかFUNKとか?
菅原: うん、そうですね。昔すごくFUNKは好きだったので。今も好きなんですけど。やっぱりその辺の名残は残ってるかなーと。
HMV : そうすると、いずれ歌モノにも??
菅原: 歌モノやりたいですねー。面白いかなーと思いますね。
HMV : 4曲目「Viridian Dance」。
菅原 : これは僕が学校にいたときに課題で作ったんですけど(笑)割と死ぬほど曲書いてるんですけど、8割くらいやらなくなってるんですよ。お蔵に入りまして。昔作った曲ってだんだん嫌になってくるんです。曲が気に入らないとか…音楽的にいろいろ幅が出てきたり、だんだん発展してくるにしたがって興味がなくなってったりする感じなんです。でもこの曲は比較的ずーっとほとんど毎回ライブでやってますし。やらないことがほとんどないくらい。割と激し目の曲が売りという感じで、お客さんの中で認識があると思うんですけど。
そういう感じじゃないんです。割ときれい目な曲なんです。ライブテイクの前半がきれい目な曲が多くて。その辺もある意味聴いてほしいところかなと。1曲目の「Decadence」とか最初の3曲がアッパーでキャッチーな感じなので、前作の「Colors Of Agenda」とリンクしてアグレッシヴジャズという感じで。 ライブテイクの最後にボーナストラックで入ってるやつはかなり激し目なんですけど、それ以外は割ときれいな感じのやつのなので。
そういう音楽もやっているのでその辺も別の一面として聴いていただければという感じですね。5曲目の「Beautiful Black」。これもバラードなんですけど。6曲目「Extension」。これは前作「Colors Of Agenda」に収録されてたやつのライブ版ですね。「Beautiful Black」もそうなんですけども。
HMV : そして、7曲目「First-Born」。
菅原: 個人的な話なんですけど、僕の姉の子どもが産まれた時に作ったもので。ドラムンベースという(笑)すごい難産みたいな曲なんですけど。でも、けっこう生で打ち込みっぽいことをやったりするのが得意なんです。
HMV : 世代的には、僕らもそうなんですけど、完全にCLUB世代というか…CLUB MUSICに入ってJAZZという流れとか?
菅原: いや、違うんです(笑)
HMV : それとは違うんですか?(笑)
菅原 : この質問は定番のやつだよ(笑) (と、渡辺さんへふる)
渡辺 : あのー、元々は普通のPOPSとか日本のX JAPANとか…POPSじゃないか(笑)ドラムを練習してたらJames Brownとかそういうのを知って、専門学校に入って…
菅原: もういいよ(笑) 好みの変わりは3人の中でダントツに多いです。1週間くらいで違うことになってたり(笑)それがいいところです!
渡辺 : 最近このアルバムに収録できてないその後に出来た新曲もいろいろあるんですけど、また全然色が違うんで(笑) 捉えにくいとか感じはあるかもしれないですけど。
HMV : 楽曲の方はだいだい菅原さんが制作のメインになって?
菅原 :そうですね。昔はほとんどそうだったんですけど、最近はみんな書いてくるんで。そうですね。書いてくるといってもみんなパートだけだったりするんで、膨らませてってみたいな。なんか面白くなるかなって、実験的なスタジオに入ることが多いですけど。
HMV : 元々アレンジャー志望だと?
菅原 : そうです。僕はピアノはどっちかというとアレンジする上で弾けばいいかなという程度で。専門学校に鍵盤があんまりいなかったんですよ。鍵盤科っていうのもあるんですけど、もちろん。あるんですけどたぶん学生そんなにいなくて。で、学内でライブとかみんなしたがるじゃないですか。鍵盤を入れたいみたいな感じになるとただ単に人がいないと。
HMV : それで引っ張られたと。
菅原 : ただ単にいないっていうだけで。だから最初は何も出来なかったです。普通に。本当に。BLUESのスリーコードでセッションとか言われても、BLUESのスリーコードを知らないっていう話で。そんなところから入っていって。無理矢理やらせられたとか。今も割りと無理矢理やってます(笑)
HMV : 今回の音源を聴いて個人的に感じたことなんですけれど、ピアノトリオというオーセンティックなMODERN JAZZのスタイルと言いつつも、FUSIONにいきそうでギリギリいかないという寸止め感って言うんですか…これが魅力なんじゃないかな、というのは感じたんですけどいかがですか?
菅原 :そうですね…その辺は意識してるのかもしれないですけど。曲も確かにアレンジによってはそういう風になるんでしょうけど。ただやっぱりジャム性というかバンド性というか…構成をきっちり決めてやるというよりは、やっぱりその場でセッション的な色を残しつつ、そのセッションする上で素材みたいな捉え方をしてやってるんで。そういう点でFUSION色の要素もあるのかなという気はしますけど。作り込んだ感…不自然な作り込んだ感は出したくないんで、それはありがたいというかそう感じていただけると…
HMV : 曲調によってはジャムバンドのPHISHとか、ああいう雰囲気もありますよね。
菅原: それは前にも言われたなぁ。 PHISHはストリートでやってたらにお客さんに言われて。PHISH知らなかったんですよ(笑)。そのあとDVDとかCDとか貸してもらって、かっこいいなぁと思って。
HMV : なんか似た匂いとか楽曲によってはすごいあるなっていうのを感じたんですけど…いわゆるJZ Bratなり須永さんでのイベントとかになると、ひと括りでCLUB JAZZとかCROSSOVER JAZZっていう括られ方というか…バンド自体がそういう見方をされて、
CLUB JAZZも今となっては色々ありますが…なんか一般的に純粋CLUBを通過したJAZZっていうものだけでは括れない、さっきのPHISHの件も含めてそういうのがすごいあるなと感じました。
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