1982年のサッチャー政権下、不況、失業、あらゆる差別や矛盾。さらには、激化するフォークランド紛争。漫然ともならない思いを抱えたストリートの若者は、不確かな”愛国心”を露に、激高し、迷走する。初期衝動のエナジーと、それに相反する悔恨の極みを痛々しくもリアルに描いた『THIS IS ENGLAND』。当時の切迫した歴史的背景が云々というよりは、いつの時代もユースにとっては、豊かなイマジネーションとそこに付随する行動力さえあれば世界は拓ける・・・それが善でも悪でも。多分に透けて見えてくる、そうしたメッセージ性が感想としてまずは記するところか。
とは言っても、本編のストーリーに関して、何かしらのプロパガンダ思想を見つけ出す必要は皆無だろう。なぜなら、音楽ファンが、純粋に耳で楽しむことができるのも本作品の特徴のひとつだからだ。冒頭からトゥーツ&ザ・メイタルズの囚人チューン「54-46 That's My Number」が鳴り、主演の少年ショーンが「Pressure Drop」を口ずさみ、ビールとマリファナでやり過ごすコンボとミルキーが「俺たちスキンヘッズの心を揺さぶる音楽」と、パーシー・スレッジの歌唱に酔いしれる。また、屯するウディらの溜り場には、アルトン・エリス、ジミー・クリフ、リコ・ロドリゲス、リー・ペリーら”スキンヘッズ・レゲエ・イコン”のLPやピンナップが所狭しと貼られている。当時のイギリスの労働者階級の若者たちが求めていた、”エッジのきわ”にある鋭利なアンチ・メインストリーム像は、音楽(または、ファッション)の中に自己を投影したカタルシスであったのかもしれないと思うほど、彼らスキンヘッズの生活と音楽は密接につながっている。
「お前は心まで坊主か?」・・・まさか、そんなヤツはごくごく一握り。ただ、こんな音楽さえあればオレたちは、中指おっ立てながら、どこにでも往ける。そんな気がする。そんな気になりたい。スキンヘッズが骨の髄まで愛した”心のベストテン”的セレクション。モッズ、パンク、Oi、ハードコア、レゲエ、ダブ、2トーン、ニューウェイヴ、オルタナティヴ、サザン・ソウル、ノーザン・ソウル、あったかいもの、つめたいもの・・・80年代初頭のUKミュージック・シーンがいかに充実し、また、雑多で混沌としていたかもお分かりいただけるだろう。メインストリームの象徴との比較対象として、当時のUKトップ30シングルも掲載。
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