―― ライブアルバムのリリースおめでとうございます。まず始めに、2006年に<op.disc>よりリリースされた傑作アルバム『PARABOLICA』についてお訊きしたいのですが、アルバムリリース後、周囲からどのような反応がありましたか?
AOKI takamasa: ありがとうございます。『PARABOLICA』のリリース後は世界中から沢山のポジティブな反応をいただけました。思いがけない人達やアーティストからも連絡があったり、DJの人達が使ってくれたり、嬉しかったです。
―― そして『PALABOLICA』のリリースから、『Live Recordings 2001-2003』のリリースに至った経緯はどのようなものでしたでしょうか?
AOKI takamasa: 2001年から2003年ぐらいまで僕が個人的に手作りで少量だけ売っていたLIVE recordings CD-Rシリーズがありまして、半野喜弘さんからそれらをアルバム1枚にまとめてリリースしないかっていうご提案をいただけました。今はCDがどんどん売れなくなってる時代なので、このままCDっていうメディア自体が近い将来無くなってしまうんじゃないかって半野さんが話しおられて、僕たちのような小規模のインディーレーベルがCDを作れる状況がまだある内にリリースしていこうっていう事で発表させていただく事にしました。音楽のリリース方法がどんどんダウンロード主流になっていく中で、作り手としてはやっぱり”モノ”として残るCDを、リリースができる間にしておきたいなって思ったのが大きかったです。
―― 『PALABOLICA』リリース時のインタビューで、青木さんが「ここ数年だんだん自分の頭の中がシンプルになってきた」とおっしゃってらっしゃったと思うのですが、一度ご自身の活動を振り返るキッカケや再発見としての今回のライブ作品のリリースと思ったのですが、ご自身としてはいかがお考えですか?
AOKI takamasa: 半野さんからのご提案をいただくまでは、昔のLIVE盤を再リリースする事なんて全然考えてなくて、それに正直昔のLIVEを掘り出して発表するなんてちょっと恥ずかしいなっていう気持ちもありました。でもリリースのお話をいただいてから改めて久しぶりに自分のLIVE音源を聴いてみて、もちろん恥ずかしい部分もあるけど、”まあまあええかな”って思った部分もあったし、僕の過去の活動に興味を持ってくださっている新しいリスナーの方々にも楽しんでもらえるかと思ってリリースさせていただく事にしました。結果として自分の活動を振り返る良いキッカケになったと思います。こういう昔の作品に関しては、第三者の方からご提案いただけない限りなかなかリリースする気持ちにはなれないんじゃないかなって思いました。今回リリースのご提案をくださった半野喜弘さんに心から感謝したいです。
―― ライブ作品ということで、CD作品にする過程において、『PARABOLICA』などのアルバムと比べて音源の構成に気を使った部分とはどんなところでしょうか?
AOKI takamasa: アルバムの冒頭部分以外は全部マイク録音で、しかもLIVE録音っていう事もあったので、会場の雰囲気やオーディエンスの反応なども楽しんでもらえるように意識しました。それぞれの会場での音の鳴り方の違いも楽しんでもらえればと思ってます。
―― 青木さんの表現方法として、今回の作品と「オリジナルアルバム」との違いをどのように考えてらっしゃいますか?
AOKI takamasa: オリジナルアルバムっていうのは、やっぱりその時点での最新の自分の状態を表すものだと思っています。今回のLIVE盤は、昔こんな事やってました的な部分をリスナーの方々に感じていただければ良いなって思ってます。
―― 2001年〜2003年に行われたライブ作品ということでその時期はPROGRESSIVE FORMで高木正勝さんとのSILICOM名義などが印象的だったと思いますが、その時期のライブを選んだ理由というのは?そしてこの期間は青木さんにとってどのような時期でしたか?
AOKI takamasa: この時期を選んだ理由っていうのは別にコレと言ってないんです。ただ昔作ってたLIVE CD-Rの中から今でも聴けそうな部分を探してたら、たまたま2001~2003年の期間だったっていうだけの理由です。ただこの時期は今のペースから比べるとかなりハードにLIVEをやってた時期で、今から思うとこの時期に今の自分の音楽性に繋がる基礎の部分が構築されたように感じます。
この時期はとにかくLIVEが多かったので、いつも同じ曲のプレイバックでは通用しないと思って、曲の構成や音色の選び方などに関してはかなりランダムな要素を取り入れたり、リアルタイムでのオーディオ処理に興味を持っていた時期なんです。そうする事で毎回違う音が出るようにしてました。今はランダムな要素はできるだけ排除していく方向で制作してますが、この当時の活動があったからこそ今の僕の制作方法やスタイルがあるんだなと感じています。
―― <op.disc>、そして今回リリースの<cirque.Mavo>というレーベルについてお訊きしたいのですが、日本でも有数のエレクトロニック・ミュージッ
ク・レーベルであることは言うまでもありませんが、青木さん自身、これらのレーベルにどのような可能性を感じてらっしゃいますか?
AOKI takamasa: 僕が個人的に感じている事なんですが、ヨーロッパや欧米のエレクトロニクス・ミュージック・シーンが今ちょっと停滞してるというか、飽和状態というか、なかなか新しいブレイクスルーが無い状態が続いているように思います。そんな中で、純粋に日本人アーティストで構成されたop.discとかcirque, etc.... のレーベルが、今後のヨーロッパのシーンにとって良いスパイスというか、新しい動きの一つに加担できる可能性があるように思ってます。そうなれば良いなーって。
―― 今後の予定について教えていただけますでしょうか?
AOKI takamasa: 今は来年の春ぐらいのリリースを目指して新しいアルバムを制作中です。それと同時進行で韓国人ミュージシャンのJung Jea Hyungのアルバムにも参加させていただいたり、ツジコノリコが今作ってる映画のサウンドミキシングもやらせてもらってます。まだ先になると思うんですが、op.discからのアナログのリリースも予定していますし、他にもリミックスとかカヴァーとか幾つかやらせてもらってます。
―― ありがとうございました!
AOKI takamasa: ありがとうございました。