Mark Ronsonインタビュー

Friday, June 15th 2007

  HMVインタビュー
  Mark Ronson
Lily Allen、Amy Winehouseらヒットアルバムを手がけたことで知られる DJ/プロデューサーのMark RonsonがUKロックのフェイヴァリット・ソングをフロア仕様にリクリエイトしたセカンド・アルバム『Version』をリリース!各方面から高い評価を得るだけでなく、全英アルバム・チャートで最高2位を記録するなど只今絶好調のMarkにニューアルバムについてお伺いしました。ロック・ファンも注目!

Mark Ronson
  僕はラッセル・シモンズじゃなくてリック・ルービンになりたかった
―― 前作『Here Comes The Fuzz』から4年ぶりのアルバム発表ですね。


そうだね。長い空白があいてしまったけど、あれからほかのアーティストたちのプロデュースをしたり自分のレーベルAllidoの運営に時間をとられたりして、忙しかったんだ。特にレーベルの仕事に忙殺されてるうちに、ふと“僕はラッセル・シモンズじゃなくてリック・ルービンになりたかったのに、このままじゃいけない!”と気付いたよ(笑)。5時までレーベルのオフィスで仕事して夜はスタジオに・・・なんていう生活を続けても、いい音楽は作れないからね。それにアルバムは無理に搾り出すものじゃない。クリエイティヴなインスピレーションを感じた時にこそ、作るべきもの。そういう意味で、充分にインスパイアされたからこそ作れたアルバムなんだろうね。


――その新作『Version』が生まれたきっかけは、レディオヘッドのトリビュート・アルバムに提供した『Just』のカヴァーだったとか。


うん。あの曲を作ったのは1年半前なんだけど、当時の僕は音楽制作にあまり楽しみを見出せずにいたんだ。“思ってたより才能がないのかも”とか“ファレルとかカニエにはどうせ勝てっこない”とか疑念が頭をよぎっていたんだよ。そんな時に『Just』をリメイクしてみて、情熱を取り戻せたのさ。作業がすごく楽しかったんだ。で、そのまま時間を見つけては、ピアノに向かったりドラムを叩いたりして好きな曲のカヴァーを作るようになって、5〜6曲ラフなものが出来上がった時だったかな、『Just』が英国のラジオでガンガンかかり始めたことにも励まされて「このコンセプトはアルバムとして成立するな」と確信したんだ。元々カヴァー・アルバムって好きだったしね。


―― ほぼ全曲UKロックのカヴァーというのも面白いですよね。あなたは英国人ですが、長年ニューヨークで、しかも主にヒップホップの世界で活躍していましたから。


ただ、『Here Comes The Fuzz』がアメリカより英国でヒットしたせいで、最近は頻繁に帰国していて、自分のルーツを再認識することが多かったんだ。僕は8歳までロンドンで過ごしたんだけど、その8年間の体験が、自分の音楽的テイストに思っていたより遥かに大きな影響を及ぼしてることを悟ったのさ。ジャンルによって細分化されてるアメリカと違って英国のラジオではなんでもかかるし、人々の音楽志向もオープンなんだよ。そして僕も、ヒップホップにハマってDJ活動を始めるまでロックバンドにいて、インディー・ロックもソウルも聴くからね。今じゃ半ばロンドンに住んでるようなもので、これまでよく知らなかった異父兄弟・姉妹とも親しくなれたし、すごく楽しいよ(笑)。


―― いろんなカヴァーのアプローチがある中、古典的ソウルやファンク風に料理した理由は?


父がいつも家でファンクやソウルを聴いていたから、僕の音楽的ルーツのひとつなんだよ。初期のヒップホップを最初に僕に教えてくれたのも父だったし、彼は今でもロックが苦手で、スティーリー・ダンが限度だね(笑)。だから、今回は例えばモータウン・レーベルのバックバンドだったファンク・ブラザーズの音なんかが、すごく参考になったよ。うん、インスピレーション源は間違いなく60〜70年代だね。



―― 実際はどんなプロセスでサウンドを構築したんですか?


曲ごとに自分が一番好きな箇所を取り出して、そこからスタートすることが多かったかな。そこにビートを加え、ホーンを乗せて……という具合に。まずはとにかく、ピアノでもギターでも何か楽器に向かって、じっと曲に耳を傾けて頭の中でその成り立ちを解析するんだ。子供の頃、ギター片手にガンズ・アンド・ローゼズの曲を聴いて一生懸命コピーしようとしていた時代を思い出したよ(笑)。


―― 「好きな曲」であること以外に、何か選曲基準はありましたか?


やっぱり僕自身がビートを作りたいから、最初から強いビートのある曲は選ばなかった。マッシヴ・アタックとかストーン・ローゼズも大好きだけど、元からビート主導のバンドだからね。あと、ソウル/ファンクの味付けをするからにはブルースに根ざしたコード進行の曲がしっくりくるから、その手の曲が中心になったんじゃないかな。ほかにもフィオナ・アップルの曲を試したものの、さすがに彼女以外の人が歌うと違和感がぬぐえなくて諦めたよ(笑)。


―― ゲスト・ヴォーカリストの多くは個人的な知り合いだったり、ロビー・ウィリアムスやリリー・アレンなどあなたが最近プロデュースしたアーティストばかりですよね。


うん。その時々に一緒にスタジオにいた人にお願いしたんだよ。だからすごく内輪ノリな、気楽な作業だった。楽器も大半は僕自身がプレイしてるし、ホーン隊も以前から親しいミュージシャンたちで、勝手に“Daptone Horns”とクレジットしたけど本当はそんなバンドは存在しない(笑)。ブルックリンを拠点とする“Daptone Records”というすごくクールなファンクのレーベルがあってね。そこに所属するいろんなバンドのメンバーが集まって参加してくれたんだ。アレンジの面でも大いに助けられたよ。


―― 中でもファースト・シングルであるザ・スミスのカヴァー『Stop Me』は全英2位の大ヒットを記録しましたが、カルト的人気を誇るバンドの曲ゆえに、アークティック・モンキーズのメンバーなんかから批判もされましたよね。


ザ・スミスの曲だから分からないでもないけどね(笑)。しかもヒットすればするほど、反感を買うのは当然だよ。でも、どの曲もあまりに手を加えてしまったから、僕は作者にひとりひとりコンタクトをとって了承をとったんだ。それで「気に入らない」と言われたら、アルバムには収録しないつもりだった。でもみんな気に入ってくれたんだ。ザ・スミスのモリッシーも含めてね。だから批判にいちいち気を揉んだりはしないよ!



―― 最近はDJ活動も続けているんですよね?


うん、プロデュース業のほうも充実しているし、以前よりずっと回数は減ったけど、たまにやってる。あと、この夏はバンド形式でのツアーを予定していて、リハーサルをしているところだよ。『Just』に参加したファントム・プラネットのアレックス・グリーンワルドや、『Stop Me』を歌ったダニエル・メリウェザー(Allidoからデビューする予定のオーストラリア人シンガー)がヴォーカリストとして同行し、11人編成のバンドでプレイするから、楽しみにしてるんだ。


―― それにしてもあなたは、異ジャンル間を実に自由に行き来してフットワーク軽く活動をしていますが、なぜそれが可能なんだと思いますか?


う〜ん、それは多分僕が本当に、いろんなタイプの音楽を心から愛しているからじゃないかな。僕はスノッブじゃないし、何かを聴いていいと感じたら掘り下げるし、ジャンルに関わらず偉大な才能の持ち主に出会ったら、コラボしたいと思う。僕がプロデュースに関わった作品(リリー・アレンの『Alright, Still』やエイミー・ワインハウスの『Back to Black』)がヒットしたおかげで、さらに多くのチャンスに恵まれるようになって、正直言って困ってるんだ。依頼が来たらどれも断りたくないからね(笑)。次はロックバンドをプロデュースするかもしれないし、今後も枠に捉われずに仕事を続けたいと思ってるよ。


(協力:BMG JAPAN)
 
 
 
  天才肌DJ/プロデュースによるUKロック・カヴァー・アルバム!  
 
Version

CD Version
Mark Ronson

アギレラやLily Allen、Amy Winehouseと手がける作品は全て高い評価を得ているニューヨークをベースに活躍するロンドン出身のDJ/プロデューサー/アーティスト/Allido Recordsの主宰者Mark Ronsonが約4年ぶりにリリースする新作。ヒップホップ畑の印象の強いMarkが、ルーツに戻りUKロックのフェイバリット・ソングをフロア仕様に大胆リメイク。豪華アーティストをヴォーカルにフィーチャー。選曲眼のセンスの良さ、ファンクネス溢れるサウンド・プロダクションに脱帽。★日本盤ボーナストラック収録。
 
 

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