未来の大物作家が弾くトルストイのオリジナル・ピアノ曲
Thursday, March 25th 2004
未来の大物作家が弾くトルストイのオリジナル・ピアノ曲「すべての芸術は音楽に憧れる」と言ったのはショーペンハウアーでしたが、音楽以外の分野で一級の成功を収めたロシアの芸術家たちも作曲を試みていました。とは言っても、19世紀のロシアでは作曲家が職業とみなされておらず、ロシア五人組をはじめ、別の本業を持つ人がほとんどでした。ここに収められた8人は、いずれも本業の業績が偉大すぎたため、作曲していたことが忘れられています。しかしひとかどの芸術家であった彼らだけに、音楽を試みてもさすがに光るものを見せとても魅力的です。
演奏はニューヨーク在住の若きロシア人ピアニスト、レーラ・アウエルバッハ。BISレーベルから作品集がリリースされた作曲家でもありますが、本業は作家で、すでに高い評価を獲得している天才。典型的マルチ・タレントの持ち主。ピアニストとしては、ロシア・ピアニズムの継承者で、ダイナミックなヴィルトゥオーゾぶりが魅力。自身文学者として、それぞれの作家の文体を知りぬいた解釈も興味津々です。
歌曲はバッハ・コレギウム・ジャパンの独唱でおなじみの浦野智行が挑戦。意外にも彼はロシア歌曲のエキスパートでもあります。美声に聞き惚れさせられます。
ロシアの文豪・画家の音楽 (すべてオリジナル作品)
@トルストイ(作家):ワルツ ヘ長調(ピアノ)
Aパステルナーク(作家):ピアノソナタ/2つの前奏曲(ピアノ)
Bグリボエードフ(作家):2つのワルツ(ピアノ)
Cオドエフスキー(作家):ワルツ/子守歌/カノン/センチメンタルなワルツ(ピアノ)
Dバランシン(バレエ):ヴァルス・レント(ピアノ)
Eポレーノフ(画家):別れの歌(ピアノ)/海へ/わが心は暗い(歌曲)
Fフェドートフ(画家):可愛い女/カッコウ(歌曲)
Gディアギレフ(バレエ):憶えているかい、マリア(歌曲)
レーラ・アウエルバッハ(ピアノ)、浦野智行(バリトン)
[録音:2004年1月27-30日/キング関口台第1スタジオ。192kHz, 24bit]
★レフ・トルストイ Lev Tolstoy (1828-1910)
大文豪で、歴史上屈指の偉人のひとり。「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」をはじめすべての文学作品が邦訳されています。チャイコフスキーと親しく、ショパン作品を弾くピアノの腕前でしたが、音楽観は偏狭で、ベートーヴェンやワーグナーを全否定していました。彼のピアノ曲〈ワルツ ヘ長調〉は研究書にも言及されていません。彼の作曲はこの1篇のみと言われています。甘いメロディが淡彩画風に処理された優雅な曲で、まさに絶美。「戦争と平和」の舞踏会のシーンを彷彿させます。
★ボリス・パステルナーク Boris Pasternak (1890-1960)
旧ソ連を代表する作家・詩人。「ドクトル・ジバゴ」がノーベル文学賞に決まったものの、発禁書だったため政府の命により辞退させられました。少年時代、スクリャービンに傾倒し、作曲を志すが挫折。そのくだりはベストセラーとなった最相葉月の「絶対音感」(小学館刊)の冒頭に描かれています。2篇の〈前奏曲〉は16歳、〈ピアノソナタ〉は19歳の作で、いずれもスクリャービン及びロシア・アヴァンギャルドの強い影響が感じられます。単一楽章のソナタはチカチカと明滅する光に満ちた不思議な曲です。
★アレクサンドル・グリボエードフ Alexandr Griboedov (1795-1829)
プーシキンと並ぶ18世紀初頭の劇作家。外交官としてペルシャのテヘラン赴任中、暴徒に虐殺されました。「知恵の悲しみ」(岩波文庫刊)はロシア人必読の古典。ロシアに住んでいたジョン・フィールド(「ノクターン」の創始者)にピアノを師事しました。若々しいメロディが伸びやかに歌われる〈ワルツ変イ長調〉、思い出を回想するような〈ワルツロ短調〉ともに極上のサロン小品です。
★ウラジーミル・オドエフスキー Vladimir Odoevsky (1803-1869)
作家、哲学者、音楽評論家。19世紀前半ロシア最高の知識人のひとりで、最新の西欧文化をロシアに紹介しました。ドストエフスキーの処女作「貧しき人々」は彼の引用で始まります。「幽霊」(河出文庫)、「4338年」(創元SF文庫)は邦訳があり、後者は1838年の作ながら飛行機やパソコン、電子レンジまで登場するという破天荒な未来小説。〈ワルツ〉〈子守歌〉〈センチメンタルなワルツ〉はショパンの影響が感じられる美しい作品。〈カノン〉はバッハ風の対位法によりますが、数学で作られているのが驚きです。
★ジョージ・バランシン George Balanchine (1904-1983)
20世紀最大のバレエ振付家でニューヨーク・シティ・バレエの創始者。今年が生誕百年。彼は古典バレエを肉体の運動による美に替えるという革命を行いました。父と弟が作曲家で、自身も一時期ペトログラード音楽院で学び(ムラヴィンスキーと同級)ました。〈ヴァルス・レント〉は最晩年の作品で、ガーシュウィン風な所と、チャイコフスキー風なメロディにより、ロシアとアメリカの文化の融合を目指した彼の姿勢が明瞭に表れています。
★ヴァシーリー・ポレーノフ Vasily Polenov (1844-1927)
19世紀ロシアを代表する画家で、宗教画と風景画で知られます。彼の風景画は強いロシア色に満ち、ラフマニノフが愛し、いくつかの初期作品にインスピレーションを与えたといわれます。ピアノ曲〈別れの歌〉はムソルグスキーの〈展覧会の絵〉と同趣向による美術手法を音楽に応用したもので、ロシア農村のいろいろな風景が見えてきます。
★パヴェル・フェドートフ Pavel Fedotov (1815-1852)
本業は軍務でしたが、あまりの才能ゆえ画家に専念することを許されました。半世紀以上前にロシア・アヴァンギャルド的な要素を持つ画風を示しましたが、生活は苦しく、37歳で狂死しました。晩年の数篇はとりわけ異常な世界を見せています。彼は自作の詩による民謡風な歌曲を2篇残していて、どちらもたいへん魅力的です。
★セルゲイ・ディアギレフ Sergei Diaghilev (1872-1929)
稀代の興行師にしてロシア・バレエ団の創始者。作曲を勉強しましたが、リムスキー=コルサコフに才能を否定されたため挫折。エネルギーを興業の世界に向け、大成しました。彼の楽譜はこの〈憶えているかい、マリア〉一曲しか現存していませんが、15歳の作で、大胆な転調や広い声域など、少年らしい自己顕示に満ちています。イタリア風の伸びやかなメロディで、後に大きな仕事をするであろうと納得できる物凄いエネルギーにあふれています。
レーラ・アウエルバッハ Lera Auerbach
1973年、工業都市チェリヤビンスクに生まれる。4歳より母の手ほどきでピアノをたしなむと同時に作曲を試みる。6歳で最初のリサイタルを開き、8歳でオーケストラの独奏者としてデビュー。12歳で歌劇を自身の台本で作曲、旧ソ連の各地で上演される。またこのころから詩と散文の創作に目覚め、14歳より詩作品を新聞・雑誌に発表しはじめる。
1990年、チェリヤビンスク音楽専門学校を卒業。同年、第1回全ロシア若手作曲家チャイコフスキー・コンクールにて入賞、またピアニストとしてロシア文化基金奨学生に選ばれる。1991年アメリカ公演に招聘され、そのままアメリカに留まり、旧ソ連から亡命した最後の芸術家のひとりとなる。マンハッタン音楽学校でピアノと作曲を学び、1993年、ストラヴィンスキー記念ピアノ・コンクールに入賞、ジュリアード音楽院に編入、ピアノと作曲で学位を取得。さらにハノーヴァー高等音楽院で独奏者過程を終了、コロンビア大学で比較文学を学ぶ。2002年、ハノーヴァー音楽院大学院独奏者課程を修了。現在ニューヨーク在住。これまでコンサート・ピアニストとして数多くの国際的賞を受けている。
主な作曲作品として「交響曲第1番《メメント・モリ》」「ピアノ協奏曲第1番」「ヴァイオリン協奏曲第1番」「ピアノ三重奏曲」「ヴァイオリンソナタ第2番《9月11日》」「チェロ・ソナタ第1番」などがある。日本では既に、アンサンブル金沢の委嘱作品として「憂鬱な海のためのセレナード」が岩城宏之指揮で2002年9月に世界初演されている。2003年には作曲を収めた最初のディスクがスウェーデンのBISからリリースされた(BIS-CD-1242/ヴァイオリンとピアノのための24の前奏曲)。
2004年9月には、ヴァイオリンと管弦楽のための新作が諏訪内晶子の独奏、岩城宏之指揮アンサンブル金沢により本邦で世界初演される予定。2004年度アンサンブル金沢のコンポーザー=イン=レジデンスにも任命された。
レーラ・アウエルバッハの名声は音楽活動においてのみならず、その詩と散文においても高まった。ロシア国際プーシキン協会は彼女を1996年の「在外ロシア・ポエト・オヴ・ジ・イヤー」に指名している。
詩人・小説家としての主な著書には次のものがある。詩文集『四十月夜』(詩集「覆された世界」「響きが生まれるとき」「時との語らい」ほか短編・随筆を収録)、詩文集『永遠への一歩一歩』(詩集「梯子」「目覚め」「かけら」およびいつくかの散文を収録)、詩文集『ハノーヴァー手帳』(最新の詩作品に紀行文、短編)。また2冊の長編小説『悪魔のヴァイオリン』および『鏡』の出版が予告されている。
ピアニスト兼作曲家というロシア音楽の伝統の継承者であり、作家・思想家としての精神的高貴さと知的誠実がその創作と分かち難く結びついているレーラ・アウエルバッハという稀有な芸術家の存在は、まさに現代の奇蹟である。
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