【発売】マッケラス&スコットランド室内管/モーツァルト:交響曲集、レクィエム(5CD)
2025年09月04日 (木) 20:00 - HMV&BOOKS online - Classical
マッケラスがスコットランド室内管と残した遺産
モーツァルト・ボックス、待望の復活!
チャールズ・マッケラスのモーツァルトといえば、まず1980年代後半「TELARC」レーベルにプラハ室内管弦楽団と録音した交響曲全集が偉業として挙げられます。しかしその後、彼が桂冠指揮者の地位にあったスコットランド室内管弦楽団と共にレヴィン版の『レクィエム』を録音して大きな話題となったのを皮切りに、2007年録音の後期交響曲集が「2009 BBC Music Magazine Awards」年間最優秀賞ほかの高い評価を得るなど、続く交響曲第2集ともども、一連の「LINN」への録音もまた忘れがたいものです。
ジュスマイヤー版を尊重しながらも不自然さを極力そぎ落としてモーツァルトのスタイルを追求したレヴィン版『レクィエム』は、作曲家が残したスケッチを1分半という程よい規模に膨らませた「アーメン・フーガ」が最大の特徴。モーツァルト作品に強いこだわりを持ったマッケラスが初めて録音した『レクィエム』としても注目されました。そしてモダン楽器の小編成オーケストラにより、ピリオド解釈を取り入れつつも新しい表現を改めて追い求めた後期交響曲集(ディスク3、4)と、最晩年のリリースとなった交響曲第2集(ディスク1、2)で聴かせる力強さと表情の温かさは目を見張るものがあり、どの作品もその素晴らしさに改めて気づかされる快演です。交響曲第31番の第2楽章はオリジナルと、発注者ル・グロの依頼により差し替えた版の2種を収録。演奏の特色を余すところなく記録した「LINN」によるレンジの広いクリアな録音も特筆ものです。図らずも巨匠によるモーツァルトの集大成となった一連の録音が、通常CDにより安価にまとめられた歓迎すべきボックスといえるでしょう。
なお付属ブックレット(英文)は『レクィエム』の歌詞を含め18ページと簡素化されていますが、スコットランド室内管弦楽団総裁ドナルド・マクドナルドによる、マッケラスとの絆についての2020年の文章が寄稿されています。(輸入元情報)
【収録情報】
Disc1
モーツァルト:
● 交響曲第29番イ長調 K.201
● 交響曲第31番ニ長調 K.297『パリ』(第2楽章異稿付き)
● 交響曲第32番ト長調 K.318
Disc2
● 交響曲第35番ニ長調 K.385『ハフナー』
● 交響曲第36番ハ長調 K.425『リンツ』
Disc3
● 交響曲第38番ニ長調 K.504『プラハ』
● 交響曲第39番変ホ長調 K.543
Disc4
● 交響曲第40番ト短調 K.550
● 交響曲第41番ハ長調 K.551『ジュピター』
Disc5
● レクィエム ニ短調 K.626(レヴィン版)
● アダージョとフーガ ハ短調 K.546
【レクィエムのソリスト、コーラス】
スーザン・グリットン(ソプラノ)
キャサリン・ウィン=ロジャース(メゾ・ソプラノ)
ティモシー・ロビンソン(テノール)
ピーター・ローズ(バス)
スコットランド室内合唱団
スコットランド室内管弦楽団
サー・チャールズ・マッケラス(指揮)
録音時期:2009年7月11-17日(Disc1,2)、2007年8月3-9日(Disc3,4)、2002年12月14-16日(Disc5)
録音場所:グラスゴー、シティ・ホール(Disc1-4) ダンディー、ケアード・ホール(Disc5)
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
【マッケラス・プロフィール】
2010年7月14日に亡くなられたアラン・チャールズ・マクローリン・マッケラスは、1925年11月17日、オーストラリア人を両親に、アメリカのニューヨーク州に誕生。幼い頃にシドニーに移り、7歳でヴァイオリンを学び、ほどなくフルートの学習も始めます。その後、同地のニュー・サウス・ウェールズ音楽院でオーボエとピアノ、作曲を学びます。同音楽院を卒業したマッケラスは、シドニー交響楽団の首席オーボエ奏者に就任。
戦後、指揮に興味を持ったマッケラスは1947年にイギリスに渡ってロンドンを生活の拠点とし、同年、クラリネット奏者のジュディ・ウィルキンスと結婚します。そして1年間プラハに留学し、チェコ語も学んで、名指揮者ヴァーツラヒ・ターリヒに指揮を師事、その地で出会ったヤナーチェクの音楽に深く魅了され、研究をすることとなります。
1948年にイギリスに戻り、サドラーズ・ウェルズ・オペラでヨハン・シュトラウスの『こうもり』で指揮者デビュー。1953年まで同オペラで指揮をおこない、1951年にはヤナーチェクのオペラを初めて英国に紹介し、『カーチャ・カバノヴァー』英国初演で注目を集めます。
1954年から1956年にかけてはBBCコンサート管弦楽団の首席指揮者を務める一方、当時興り始めた「時代様式演奏」にも関心を示し、1959年、ヘンデルの『王宮の花火の音楽』では大きな話題を呼ぶこととなります。そして1963年には、ショスタコーヴィチの『カテリーナ・イズマイロヴァ』で、コヴェント・ガーデン王立歌劇場にデビューするなど、多彩な活動を展開。
その後、1966年から1970年にかけて、ハンブルク国立歌劇場の第1指揮者を務め、1970年にはサドラーズ・ウェルズ・オペラの音楽監督に就任、同劇場は1974年にイングリッシュ・ナショナル・オペラと改名していますが、マッケラスは1977年まで音楽監督の地位にありました。
1978年、ヤナーチェク賞、1979年、ナイトの称号を授与され、1979年からBBC交響楽団の首席客演指揮者、1982年、シドニー交響楽団の首席指揮者に就任。
1986年から1992年まではウェールズ・ナショナル・オペラの音楽監督を務め、1992年、スコティッシュ室内管弦楽団の首席客演指揮者、1993年、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とサンフランシスコ・オペラの首席客演指揮者、1996年にはチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者を兼務。
マッケラスは、ヘンデルやモーツァルト、ベートーヴェンなどの演奏に定評があり、ブラームスからマーラー、チャイコフスキー、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチにいたる広範なレパートリーで優れた演奏を聴かせていました。特にヤナーチェクをはじめとするチェコ音楽では、スペシャリストとして世界的な評価を得ており、楽譜の校訂も含めてその普及に大いに貢献、名を残しています。(HMV)

