ダン・ペン 秘蔵デモ音源シリーズ第５弾『Prodigal Son』― フランク・キャノンとの共作曲を中心としたゴスペルソング集

米南部シーンの伝説的シンガーソングライター、ダン・ペン 秘蔵デモ音源シリーズ第５弾『Prodigal Son』

2020年にリリースされたダン・ペンの26年ぶりとなるスタジオレコーディングによる新作『Living On Mercy』は、ヒューマンスピリッツに満ちたソウルフルな歌唱と素晴らしい楽曲で多くのファンを魅了してくれました。そのダン・ペンの2017年作『Something About The Night』以来５年ぶりとなる、デモ・シリーズ第５弾としての待望の新作『Prodigal Son』が登場。

今作の内容はゴスペルで、『Living On Mercy』で人間として正しく生きることの大切さなどを表現し、その後、心臓関連の手術を受けて無事に成功したという自身の心境を表現するのに最適と思えるテーマでしょう。シンガーソングライター、カントリーソウル系のファンのみならず一人でも多くの方に触れていただきたいヒューマンな歌唱と歌が聞けることうけ合いです。

『Prodigal Son』は、ダン・ペンのソングライティングのパートナーであるフランク・キャノンの自宅のスタジオで共作・共演してレコーディングした８曲をメインとして仕上げたゴスペルソング集。

フランク・キャノンはアラバマ州ラマー郡にあるビーバートンという町で生まれ、現在も同じ町に住むマルチインスト奏者／シンガーソングライター／コンポーザー／オーディオエンジニア／プロデューサーで、今作ではギター、ピアノ、ハモンドB３オルガンなどをプレイしています。フランクとダンの初の共作は、2013年にリリースされたデモ・シリーズ第３弾『I Need A Holiday』に収録された「Overtaken By Love」と、今作にも収録された「Set The Table」の２曲。2017年のデモ・シリーズ第４弾『Something About The Night』では「Nothing Can Keep You Here」が収録されていました。

冒頭の「Scarred For Life」はアルバムの裏ジャケットの写真を見ながら聴きたい、ダンとフランクの慈愛に満ちたデュオがリスナーの心に光を差し込んでくれるようなサウンドと歌唱が秀逸。５曲目の「Out Of The Blue」はカーソン・ウイットセットの美しくゆったりとしたピアノをバックにしたダン・ペンの味わい深い歌唱が聴く者の心に沁みこんでいくようです。なお、この曲はダン・ペン、カーソン・ウイットセット、バッキー・リンゼーの３名による共作。

「Set The Table」はアルバムタイトルの「Prodigal Son」(放蕩息子) についての歌で、放蕩息子は新約聖書ルカの福音書に登場し、イエス・キリストが神に逆らった罪人を迎え入れる神の憐れみ深さについてのたとえ話。福音書に登場するたとえ話の中でも最も有名な中の一話だそうです。ダン・ペンの ”What Prodigal Son〜” という歌唱から始まり、曲が進むに連れてフランクのハーモニーコーラスが加わり、終始、牧師が教会で語っているような厳かな雰囲気がリスナーに伝わってきます。

「Set The Table」とは ”食卓に料理を並べる” という意味で、家を出て放蕩した息子が疲れ果てて帰宅した際に父親が暖かく抱擁し、食事の用意をするという、たとえ話の中から選んで曲名にしたのでしょう。アルバムタイトルと同じ曲名にせず、歌詞の中から名付けたところにダンとフランクの２人の強い思い入れを感じます。

10曲目のラストを飾る「In The Garden」は、2019年10月３日 アラバマ州フローレンスで行なわれた故ドニー・フリッツの告別式でダン・ペンがアコギのみをバックに歌ったトラディショナルゴスペルソングの実況録音を収録。この曲は最も美しい讃美歌の中の１曲として有名で、アン・マレー、ドリー・パートン、ジョニー・キャッシュ、ロレッタ・リン、アリソン・クラウス、アル・グリーンなど数多くの著名アーティストによってカヴァーされています。ダンの歌唱が終わると参列者からの拍手でアルバムは幕を閉じます。










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