SIGH川嶋氏がVENOMを語る!
Friday, November 9th 2012
改めて言うまでもないことだが、スラッシュメタルもデスメタルもブラックメタルも、Venom が存在しなければ生まれなかったかもしれないし、仮に生まれたとしても、まったく別の形になっていたかもしれない。Venom というのはそのくらい重要なバンドである。

Venom
すべてのエクストリームメタルジャンルの始祖の一つであるし、ご存知のようにブラックメタルというジャンル名は、Venom のセカンドアルバムのタイトルからとられている。メタルを知らない人が、ここまで聞くと、さぞかし彼らはロックスター、リムジンでも乗り回しているような大金持ちを想像するかもしれない。しかし我々は、現実が決してそんなに甘いものではなかったことを知っている。残念ながら、彼らは非常に可哀想なバンドであると言わざるを得ない。そもそもがマイナーなジャンルでの話だからねー、という言い訳ができればまだ良い。しかし後続の Metallica、Slayer、Anthrax、Megadeth などは商業的に大成功。特に Metallica などは、どの程度の金持ちなのか、我々庶民には想像がつかないほど。Metallica が Venom から大きなインスパイアを受けてバンドを始めたのは間違いない。なのに片や億万長者。皮肉にも先輩の方は Day Job =副業(というより本業?)をやめることすらできなかった。Big 4まで行かなくても、後続の Testament や Exodus などですら、Venom がなし得なかった商業的な成功を、次々と手にしていった。自らが作り出したジャンルであるのに、成功するのは後輩ばかり。まるでホカロンを考え出した会社は、あれで特許をとることができず、倒産してしまったという悲劇を思い出させる。(すみません、この話、裏とってませんけど。)
これは非常に稀有なことだ。それぞれのジャンルのオリジネーターを確定するのは容易ではないにしても、例えばデスメタルなら Death、Morbid Angel、Cannibal Corpse など、ブラックメタルなら Mayhem、Emperor あたりも、ジャンルの確立に貢献をしたバンドは常に多大な敬意を払われ、そしてそれなりの商業的な成功も経験するものだ。それなのに Venom に限っては、一切そのような恩恵に預かることはできなかった。もちろん多大なるリスペクトは世界中から表明され続けているけれど。
81年リリースのメタルのアルバムというと、Ozzy Osbourne の "Diary of a Mad Man"、Iron Maiden の "Killers"、そして Motorhead の "No Sleep 'til Hammersmith" あたり。Motorhead の大名作ライブアルバムを持ってしても、"Welcome to Hell" の滅茶苦茶さ加減には及ばなかった。同年、ハードコアでは Black Flag の "Damaged" が出ているが、"Welcome to Hell" の激しさは、これに勝るとも劣らない。(後に NYC で Venom と Black Flag は共演することとなる。Henry Rollins は Venom をバカにしていたようであるが。)

Venom
Venom の凄いところは、初めからそのイメージ戦略が徹底されていた点である。
アルバムタイトル、アートワーク、写真に象徴される、徹底したサタニック、イーヴルなイメージ。Cronos、Mantas、Abaddon というステージネーム。担当楽器もわざわざ「ブルドーザー・ベース」「チェインソー・ギター」と記載する始末。これらはすべて90年代のブラックメタルに引き継がれていくのだが、このイメージ戦略が、デビューの時点ですでに完璧に完成していたのが凄い。「地獄へようこそ」。何とカッコいいストレートなタイトルなのだろう。実際リフだけ聴けば、タイトル曲 "Welcome to Hell" などは普通のメタルだ。"Schizo" や "Live Like an Angel" などは、今の耳にはただのロックンロールにしか聞こえないかもしれない。しかし本作収録の "Witching Hour" は、いわゆる「スラッシュメタルとはこういうものである。」と定義した、世界初の楽曲であることは間違いない。
この曲は一体いくつのバンドにカバーされたことか、もはや把握が困難なほどである。前作の "Witching Hour" の発展系、すなわちスラッシュメタルの完成の瞬間である。アルバムは速い曲ばかりで占められているわけではないどころかむしろバラエティに富んですらいる。生き埋めにされる恐怖を描いたスローで雰囲気たっぷりの "Buried Alive"、一度聴いたら忘れられないサビを持つ "Countess Bathory"。ただのロックンロールじゃないかと切り捨てるなかれ、セクシーな女教師との妄想を描いた "Teacher's Pet"。名曲目白押しである。いや、捨て曲など一曲もない。最初から最後まで聴き所のみ。と言いたいところだが、"Heaven's on Fire" あたりが少々残念か。まあそんなことはどうでも良い。他の曲のクオリティが高すぎるだけだ。
エクストリームメタル好きを自認しながら、Venom のこの最初の2枚が好きではないというのは許されない。いかに人の好みはそれぞれとは言え、この2枚はそんな常識を遥かに超越している。もしこれが気に入らないのなら、問題は Venom ではなく、自分自身にある。先に現代のブラックメタルを体験した世代が遡ってこのアルバムを聞き、「一体これのどこがブラックメタルなんだ!ただのロックンロールじゃないか。」とか、「机の下でオナニーをしていたら女教師に見つかった、なんて歌詞のどこがサタニックなんだ!」などなどの批判をする不届き者がいるが、仮に心の中でそう思っても、絶対に口にしてはいけない。自分のセンスの無さをさらけ出すだけだ。Venom のこの2枚はあらゆる批判を超越した存在、批判は許されないのである。もし授業中にオナニーをして捕まる以上にサタニックな行為を思いくものならば、是非発表してもらいたいものだ。

Metallica (1986)
スラッシュメタルバンドにとって、3枚目のアルバムというのは非常に大事だ。その代表が Metallica の "Master of Puppets"、Slayer の "Reign in Blood" だろう。初期の衝動とバンドとしての成熟が見事なバランスを保って名作として具現化されている。もちろん異論はあるだろうが、この2バンドは、その後はこれら3枚目の遺産をゆっくりと食い潰しつつ存在しているというのが私見だ。だが残念ながら、Venom は食い潰す遺産を作り出せなかった。"At War with Satan" は悪いアルバムではなかったが、残念ながら将来を保証してくれるような作品には成りえなかった。 "At War with Satan" の時点では、もちろん "Master of Puppets" も "Reign in Blood" もリリースされていない。しかし実際は、すでにこの時点で勝負はついていたのである。
84年〜85年にリリースされたアルバムを見てみると、Metallica の "Ride the Lightning"、Slayer の "Hell Awaits"、Megadeth の "Killing is My Business..."、Anthrax の "Spreading the Disease"、Exodus の "Bonded by Blood" などなど、スラッシュメタル全盛期に突入しているのがはっきりわかる。今でも名盤として聞きつがれているアルバムが目白押し。そんな中、Venom も前3作を遥かに上回る、余程の力作を出さなければならなかったはずだ。ましてや前作 "At War with Satan" は最初の2枚比べると落ちるという意見が支配的であった。つまり Venom は下り坂にあると見られていたということである。ところが、背水の陣で臨まなければいけないこんな肝心な場面で Venom は やってしまった。この "Possessd"、まったく持ってその意図が理解できない中途半端な作品。
過去の Venom の作品どれと比べても、大幅に劣るどうしようもない作品。"At War with Satan" の大作主義を失敗であったと捉えたのか、今回は打って変わって短めの曲が13曲も並ぶ。しばらくライブのオープニングとして使われていた "Too Loud for the Crowd" を始め、良い曲も散見されるが、特徴のない薄味な曲が多くを占め、わずか40分のアルバムが1時間にも感じられる残念な出来。一番の問題は音質だ。やたらとギターの音が丸く引っ込み気味、結果としてまったくパワーが感じられない。楽曲がどれも同じように聞こえ、ダラダラと続くという印象になってしまっているのは、曲の良し悪しというよりも、むしろこの劣悪な音質のせいという気もする。まさかとは思うが、より幅広いオーディエンスを狙って故意にマイルドな音にしたのか。それとも単に失敗だったのか。
意外とミキシングの作業というのは難しい。スタジオではやたらパワフルに聞こえても、家で自分のラジカセで再生してみると、やたらショボくてびっくりというのはよくあることだ。スタジオに設置されているスピーカーは大抵最高品質の機種。そんな高級品で音質の判断などできないので、通常バンドは自分のラジカセ(最近では iPod)を持っていき、わざわざそれを使ってミキシングの良し悪しを判定する。まさかフルレングス4枚目にして、 Venom がそんな初歩的なミスをするとも思えないが。
一つ考えられるのは、バンド内の人間関係の問題。このアルバムを最後に Mantas が脱退をしていることから、Mantas 対他の二人という図式ができあがっていたのは間違いない。Mantas のやる気がなくてこんなギターになってしまったのか、他の二人が悪意でギターの音量を下げたのか。いずれにせよ、前作において凋落の気配はすでに漂っていたものの、このアルバムにより、Venom のスラッシュメタルバンドとしての権威失墜は確定、スラッシュメタルと言えば Metallica、Megadeth、Slayer、Anthrax という歴史が完成してしまったのだ。

Abaddon
では、バンド内の仲が悪くなければ、この時点で Venom が逆転満塁ホームランを打てた可能性があるか。
歴史が書き換わった可能性があるか。残念ながら答えはノーだろう。やはり Venom には演奏力が無さすぎた。いまだにオフィシャルなのかブートなのかよくわからない86年リリースのライブ盤 "Official Bootleg" あたりを聴いてみればわかるが、Venom の演奏の酷さは少々のものではない。最大の原因は Abaddon のリズム感の無さだと思われるが、スタジオ盤であっても例えば "Teacher's Pet" の中間のブルースっぽいパート、何度聴いても途中で拍がとれなくなるくらい滅茶苦茶。もちろん Abaddon のドラミングには味があるし、Venom のドラムは Abaddon でなければならない。しかし Slayer や Metallica 、Megadeth 、Anthraxなどというバンドが台頭してくる中、Venomの演奏力でそれらに対抗しえたかというと、残念ながら無理であったとしか思えない。いわゆるビッグ4はあらゆる才能を兼ね備えていた。
Venom がスラッシュメタルの王座から引き摺り下ろされたのは、不運でも偶然でもない、当然の結果だった。
Mantas が脱退した時点で解散していれば、本当の伝説のバンドになったかもしれない。しかし Venom はその後も訳のわからないメンバーチェンジを繰り返し、時には Cronos 抜きで、時にはオリジナルの3人に戻ったり、でも結局また喧嘩別れしたりで、現在も細々と活動を続けている。(現在オリジナルメンバーは Cronos のみ。)そしてよせばいいのに、中途半端な新作も出し続けているのだ。一番いけなかったのが、2006年の "Metal Black" 。こんな意味深なタイトルをつけておきながら、内容はまったく印象に残らない駄作。オリジナルメンバー Cronos だけで続けるなら、ニューアルバムなど出さず、昔の曲だけ演奏するライブバンドに徹すれば良いのに。まあファンの勝手な願望ですけど。
ただし、Mantas 脱退後に発表された 5th "Calm Before the Storm" だけは、世間的評価が著しく低いものの、
個人的に画期的な作品だと思っている。これについてはまた次回。
川嶋未来/SIGH
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