Friday, December 30th 2011
「ON-U SOUND 30TH SPECIAL」。ファースト・イニシャル・リリース、つまり『New Age Steppers』が世に解き放たれてからジャスト30年を迎えた、「ON-U SOUND」。
こ、これは、イザ特集企画を敢行せねば! と意気込んでみたものの...「ON-U SOUND」は今も世界中、特にここ日本においては暫定基準値をはるかに超えるビッグラブを記録していることもあり、折にふれてかなりブ厚い特集が組まれている。特筆すべき雑誌媒体では、「remix」の<特集:パンク・ダブ><特集:ルーツ・レゲエ>記事内でのコンテンツが(個人的には)群を抜いて秀逸とも言え、再読するたびに、00年代以降のクラブ・ミュージック〜ポストロックが「ON-U SOUND」の生き血をたっぷり吸い上げていることを再確認し、こちらも昨今折りにふれクラクラさせられているのだ。
というわけで、不肖 HMV ONLINE 編集部としては今回どのような切り口で「ON-U SOUND」のあのヒリヒリとした感触、ダウナーな魔力、強靭な訴求力に再度迫るべきか、と一思案したところ、やはりここは「ON-U SOUND」をよく知る方々の”証言”や”論究”にあずかろうという結論に。
ドライ&ヘビー時代から「ON-U SOUND」総裁エイドリアン・シャーウッドとも親交の深い、井上青さんによる「ON-Uのこと」、そして、内田直之さん、リクルマイさん、石田昌隆さん、コンピューマこと松永耕一さんに挙げていただいた「ON-U、この一枚」、極めつけは総裁エイドリアン自らが語る「オレ、アリ、ON-U」などなど。さらに、2012年1月11日には、ニュー・エイジ・ステッパーズの新作『Love Forever』がリリースという朗報も届き、老若男女ヘッズの年の瀬〜迎春ムードはぐるぐるマッシヴに。
「オレたち何でこんなにON-U が好きなんだろ?」という数年周期で訪れる初歩的なクエスチョンと戯れるに絶好の機会を得たとしか言いようがない。 「ON-Uの30年」、「31年目のON-U」へ捧げよう。
Love Forever / New Age Steppers
Beat Records BRC315 2012年1月11日発売
本格的な活動再開を前に、惜しくも2010年にアリ・アップは他界するが、生前すでに録音/完成していたニュー・アルバムがいよいよリリースされる。「彼女とは長い間会ってなかったが、6〜7年前に再会して、その時からまた二人でレコーディングし始めたんだ。レコーディングを終えたらまた会わなくなって、また再会してトラックを作るという事を繰り返していた。そして彼女がアルバムを仕上げたいということでジャマイカの彼女の家に向かった。彼女がイギリスにくることはなかったが、彼女が亡くなってから、ミキシングを仕上げてトラックを聴いたら、すごく良いアルバムだなと感じたんだ」とエイドリアンが語るように、本作は完全なるニュー・エイジ・ステッパーズの新録アルバムである。
HMV ONLINE/MOBILE 限定特典!!
抽選で「ON-U SOUND オフィシャル・グッズ」をプレゼント!
2012年1月11日発売のニュー・エイジ・ステッパーズ『Love Forever』をHMV ONLINE/MOBILEでご購入されたお客様の中から抽選で「ON-U SOUND オフィシャル Tシャツ」を4名様に、また「ON-U SOUND ロゴ・ステッカー+缶バッヂ」セットを10名様にプレゼントいたします。
「Tシャツ」または「ステッカー+缶バッヂ」のどちらをご希望か 応募フォームに明記してください。また、Tシャツは、S / M / L / XLの4サイズ。カラーは「白」のみとなります。こちらにつきましても応募フォームに必ずご希望のサイズ を明記してください。
【応募方法】 対象商品ご購入後(商品出荷時)に、メールにて応募フォームのURLをお知らせ致します。
【購入対象期間】 2012年1月31日(火)まで
【応募対象期間】 2012年1月11日(水) 〜 2012年2月16日(木)
当選は賞品の発送をもってかえさせていただきます。
HMV店舗でのご購入は対象外となります。ご了承下さい。
※ HMV本サイト及びHMVモバイルサイト以外からのご購入、非会員でのご購入は特典対象外となります。
※ HMV オンライン/HMV モバイルでご注文頂いた場合、商品出荷のタイミングによっては応募対象期間を過ぎる場合がございますことをご了承下さい。
日本独自企画! ON-U クラシックスを3枚組パックで
New Age Steppers / ON-U Trifecta
BRC289
『New Age Steppers』('80)、『Action Battlefield』('81)、『Foundation Steppers』('83)を収録。
・エイドリアン・シャーウッドによる最新リマスタリング
・各ディスクにボーナス・トラック追加収録
・特殊紙パッケージ仕様
African Head Charge / ON-U Trifecta
BRC290
『Off The Beaten Track』('86)、『Songs Of Praise』('90)、『In Pursuit Of Shashamane Land』('93)を収録。
・エイドリアン・シャーウッドによる最新リマスタリング
・各ディスクにボーナス・トラック追加収録
・特殊紙パッケージ仕様
Dub Syndicate / ON-U Trifecta
BRC300
『The Pounding System』('82)、『Tunes From The Missing Channel』('85)、『Stoned Immaculate』('92)を収録。
・エイドリアン・シャーウッドによる最新リマスタリング
・各ディスクにボーナス・トラック追加収録
・特殊紙パッケージ仕様
Singers & Players / ON-U Trifecta
BRC299
『War Of Words』('81)、『Revenge Of The Underdog』('82)、『Staggering Heights』('83)を収録。
・エイドリアン・シャーウッドによる最新リマスタリング
・各ディスクにボーナス・トラック追加収録
・特殊紙パッケージ仕様
--- 12月12日の渋谷VISIONで行なわれた「ON-U SOUND 30th SPECIAL」は、すごい盛り上がりでした。あらためて、エイドリアンさんおよび「ON-U SOUND」というレーベルの日本での根強い人気というものを再確認させられた気がします。
ありがとう。オレもすごくエンジョイできたよ。
--- 中でも、オーディオ・アクティヴの久々の登場というのがひとつ大きなトピックだったんじゃないかなと思うのですが。ダブ・ミックスをされていたエイドリアンさんにとっても中々エキサイティングな瞬間だったんじゃないですか?
ファンタスティック! 彼らとはオレもかなり久々だったからね。ホント、最高のステージだったよ。
--- 正味の話、ちょっとノスタルジックな感じもあったのでは?
うん、だいぶ感情的になったというか・・・感極まるっていうのはまさにこのことを言うんだろうな(笑)。
--- (笑)『TOKYO SPACE COWBOYS』からもう20年近く経っているんですもんね。
まったくだよ。時が経つのは早いよね。
--- 「ON-U SOUND」に至っては、ファースト・イニシャル・リリースからジャスト30年。ひとくちに「30年」と言っても勿論色々なことがあったと思いますが、今こうしてここまでの道のりを思い返してみると、あっという間でしたか? それとも長かった?
長くもあり、短くもあり...とにかく色んなことが”あり過ぎた”っていう、そんな30年だったかな。
--- 1980年からのこの「30年」というのは、特に音楽史そのものが大きく変化していった時代だと思うのですが、そうした時代の波に飲み込まれることなく「ON-U SOUND」を続けてこられた要因というものがあるとしたら、エイドリアンさん自身どこにあったと思われますか?
まずは何より、「インディペンデント」であったってことだね。しかもビジネスっていうところからはまったくかけ離れたところにいて、脇目もふらずに我が道をとにかく進んでいった。そしてそれを自分自身がすごくエンジョイできた。それに尽きるだろうね。
--- エイドリアンさんの「好きなことをやってるだけ」とおっしゃっる言葉の中には、「常に変化・進化していくことだ」という意味合いを多分に含んでいるような気がするのですが。
基本的にオレは、同じことを変わらずにやり続けていくことができない人間なんだよ。まぁ、ひとつのレーベルを30年続けていたりもするんだけど(笑)、でもそんな中にもやっぱり変化は必要なんだよね。いいヴァイブを注入したり、ときにはセクシーにしたりって。そういうのって結局自分自身が聴きたいモノだったり、求めているモノでもあるんだよ。決まりきったリズムをずっと聴き続けているのはやっぱり耐えられない...とにかく、好きなことを今でも継続できているっていうのはホントにラッキーとしか言いようがないよ。
--- これは、ON-Uファンというか、“新しい刺激的な音に飢えた”音楽好きのほとんどが気になっていることだと思うんですが、エイドリアンさんの脳内には常にどういった類の音が鳴っているのですか? しかもどのようなヴォリューム、音圧で? とかなり抽象的な質問で恐縮なのですが(笑)...
...いきなり何て質問だ(笑)。まぁでも例えば、レイ(・ハーン / レーベル・マネージャー)なんかは朝から晩までずっと音楽をかけっぱなしにしていることがよくあるんだけど、オレにかぎってはそういうことはない。四六時中音楽漬けっていうのはありえない。それを仕事にしてるっていうのも多少関係あるとは思うんだけど…車に乗っているときなんかはフツーにラジオを聴いたりさ。そのとき取り掛かっているものに集中しちゃうから、常に音楽っていうわけじゃないんだ。よっぽど落ち着きたいときとか、その逆に元気が欲しいときとか、そういうタイミングじゃないと自ら聴いたりはしないな。音楽を聴くのは、言ってみれば作業してる時だけ。一度ある曲の作業をスタートすれば、頭がその曲で占領される。その音楽が頭から離れないし、どう改善しようかとか、そういうことをずっと考えている。で、一度作業が終わって曲が完成すると、そこからパタっと聴かなくなる。DJでプレイしないかぎり次聴くのは10年後、なんていうのはオレの場合よくあることなんだよ(笑)。
それと、何か作業をする前には頭をクリアにしたいっていうのもある。普段生活をしているとそれは中々難しいからね。ウチの子ども達がやってる音楽、テレビから垂れ流されてくる音、すべてが耳に入ってきて正直頭の中はゴチャゴチャだよ(笑)。だから、実を言うと家で寛いでいるときなんかは、音楽を“かける”っていう聴き方はほとんどやらないんだ…もっと音楽を聴かないといけないなとは思うんだけど。問題は、最近の音楽の殆どがプログラミングされているっていうこと。クールだとは思うけど…例えばブリアルのアルバムを聴くとするだろ? ブリアルは好きだけど、2、3回聴いたりプレイするともう十分だ(笑)。昔のジャズとかルーツ・レゲエとか、そっちを聴きたくなるんだ。プログラミングされている音楽は好きと言えば好きだけど、ある特定の時期しか聴きたくならない。自分が作業してる時とかね。だから、家に持ち帰ってじっくり聴き込むようなことはないよ。
--- そうなんですねぇ。頭の中が雑然としているよりは完全に“オフ”になっていた方がいいという。
ブリアルでも何でもそうだけど、擦り切れるまで聴き込むようなことはしないな。それを頭の中にメモリーとして残しておくんだ。何度か聴けばそれで十分残るから。それより、自分がクリエイトする音楽のために意識的に頭をクリアにしておく方がずっと大事なんだよ。
photo by Tadamasa Iguchi
--- ではここから、2012年1月にリリースされるニュー・エイジ・ステッパーズのニューアルバム『Love Forever』についてお伺いしたいなと思います。まず、今回の収録曲というのは、これまでにアリ・アップと録り貯めしてしたもの、と考えていいわけですね?
もちろん。「Conquer」、「My Nerves」がいちばん最初、つまり2005年の録音。その1、2年後に「Love Me Nights」と、「The Worst of Me」を録った。それ以外の曲は2009年のものになるんだ。
--- レコーディングはロンドン?
「The Sheisse Song」だけがロンドンで、あとは全部ジャマイカ。
--- アリとは6年前に再会したということですか?
かなり久しぶりにね。そこでトラック作りを一緒に始めたんだけど、別にアルバムを出そうだなんて考えてはいなかったんだよ、当初はね。で、その後2008年にアリから電話がかかってきて、「体の調子があまり思わしくないんだけど、できれば今のうちにアルバムを作りたいからジャマイカに来て」って言われたんだ。そこで次の年ジャマイカに飛んで、残りのトラックを全部レコーディングしたんだ。
--- タイトルやリリックは特に“変わらぬアリ・アップ節“という印象を受けたのですが、その当時レコーディング中のアリのモチベーションというのは実際どんな感じだったのですか?
いつもの自分のやり方でもあるんだけど、アルバムを作るための時間を特別に設けるってことはしないんだ。ちょっとずつ録り貯めしていって、出来上がったものから順に出していくっていう感じで。アリにしても近くオレと曲作りをするっていうことは何となく頭にあったみたいだから、そのための曲を結構書き貯めてたらしいんだよ。だから今回のアルバムは、完全に彼女が考えていたことを形にしたものって言えるだろうね。モチベーションもいつになく高かったよ。とにかくきちんとしたアルバムを仕上げたがっていたんだ。
--- 創作意欲に満ちていたのは、同じ2009年のスリッツ再結成アルバムにも顕れていますよね。そしてとにかくエイドリアンさんとアルバムを作りたかったと...
そう思うよ。オレとアリが一緒に何かするときっていうのは、ニュー・エイジ・ステッパーズ以外はありえないしね。
Trapped Animal / The Slits
2009年、スリッツの『Return Of The Giant Slits』以来28年ぶりとなる新作。2006年5月の再結成ライヴをキッカケに、オリジナル・メンバーであるアリ・アップ、テサ・ポットに、ホリー・クックらを加えた5人組で活動を再開した彼女たち。ミックスは、エイドリアン・シャーウッドで、リード・シングル「Ask Ma」、日本語で歌われている「Be It」など全14曲を収録。
--- 「ON-U SOUND」が30年目を迎えた年に、ニュー・エイジ・ステッパーズ作品が再び世に出るということについては、ちょっとした“めぐり合わせ”というか。
「ON-U」はそもそもニュー・エイジ・ステッパーズの最初のアルバムでスタートしたわけだよね。そして30年が過ぎた。パーフェクトなタイミングだと思うよ。31年目のスタートを切るのに相応しいアルバム。アリはもちろん、ビム・シャーマン、ジュニア・デルガド、この十年で何人かの大切な友人は亡くなってしまった...今じゃオレたちも若くはないけど、きっちり生き残って音楽を作り続けているからね。このアルバムは、ウチらが今も相変わらず最高にカッコイイんだ! ってことを証明しているんだよ(笑)。
Across The Red Sea / Bim Sherman
ビム・シャーマンが渡英後の1982年に、エイドリアン・シャーウッドの主宰する HITRUN(ON-U の前身レーベル)からリリースした代表作。スタイル・スコット、スライ&ロビー、アール”チナ”スミス、ジョージ・オバーン、パブラーズ、デッドリー・ヘッドリーなどが参加している。ロンドンのベリー・スタジオと、ジャマイカのチャンネル・ワンおよびハリーJで録音されている。
Brothers / Junior Delgado
DEB MUSICの記念すべき1枚目の作品として1977年に制作されながらもお蔵入りしたジュニア・デルガドの幻のアルバム。キング・ジャミーもミックスで参加したデニス・ブラウンとのデュエット「Together」、「Brothers」も収録。
--- 「Wounded Animal」などは、ニュー・エイジ・ステッパーズの最新型とでもいうべきか。31年目のスタートに相応しい、まさに“今”のアルバムになっていると思います。
ドウモアリガトウゴザイマス(笑)。サウンドの“鳴り”や“抜け”にはかなりこだわったからね。ところで、リトル・アックスの新しいアルバム(『If You Want Loyalty Buy A Dog』)は聴いた?
--- ええ、聴きました。ON-Uからのリリースとしてはかなり久しぶりになりましたが、ダブ・シンジケートによる演奏も変わらずタイトでしたし、完璧でしたね。
リトル・アックスは残念ながら日本ではあまり知られていないんだよな...もっとたくさんの人に聴いてもらいたいんだけど。
--- 今回の特集で、しっかり紹介しようと思っていますので。
すごいユニークなアルバムだし、その価値はあると思うよ。オレは大好きなんだ。もうちょっと人気が出てもいいんじゃないかなってホントに思う。
--- ニュー・エイジ・ステッパーズの過去の作品を聴き返すこともあるんですか?
10年近く聴いてないねぇ(笑)。
--- (笑)そういうものなんですね。
誰かがかけてるのを耳にすることはもちろんあるけど、自分から進んで聴くってことはないな。その当時レコーディングしているときから死ぬほど聴いてるわけだし(笑)...別にウンザリってわけじゃないけど、あらためて聴き直すってことは今はまったくないよ。
とは言え、DJするときにはちょっと聴くけどね。かける前にチェックするわけだから。でもホントそれぐらいだよ。逆に言えば、リトル・アックスのアルバムは自分自身がまだエンジョイできているから、いつもと言っていいぐらいよく聴いているんだ。でも、その次のお気に入りが出てきたら、もちろんそっちに行っちゃうと思うんだけどね(笑)。
朝起きぬけに、リフレッシュするためにブリアルなんかをたまに聴いたりするときもあるんだけど、そのあとは自分の仕事関係のもの、まだ仕上げていないトラックなんかを集中して聴かなきゃいけないことがほとんどだから...ホントにエンジョイできるもの以外は基本聴かないんだよ。
photo by Tadamasa Iguchi
--- そもそも、エイドリアンさんが生まれて初めて聴いた、“衝撃的”な音楽って何だったのですか? やっぱりレゲエやダブだったり?
かなり小さいときに、ボビー・チャールズの「Walking to New Orleans」をレコードで聴いて夢中になったのはよく憶えてる。まだ5、6歳だったからニューオリンズが何かも知らなかったんだけど(笑)、「♪ Walking to New Orleans 〜」って歌いながら学校に通ってたよ。
1964年、6歳の頃に「My Boy Lolipop」、「Hey Girl Don't Bother Me」なんかはすでに好きだったけど、本格的にレゲエにのめり込んだのはその6年後。12歳になってもうひとつの64年のヒット曲、プリンス・バスターの「Al Capone」を聴いてから。「One Step Beyond」にも衝撃を受けたね。ホントに素晴らしい曲だよ。
Young Gifted and Black / V.A.
ジャマイカン・ミュージックが最高潮を迎えた1968〜75年のヒット・チューンが全50曲収録されたTrojan Recordsの2枚組コンピ。ミリー「My Boy Lollipop」、プリンス・バスター「Al Capone」ほか、デズモンド・デッカー「Israelites」、「007」、ボブ&マーシャ「Young Gifted And Black」、グレイハウンド「Black And White」といった、本文中に登場するエイドリアンのオールタイム・フェイヴァリットももれなく収録されている。ライナーノーツはUB40のロビン・キャンベルとドン・レッツ。
それから60年代後半のデズモンド・デッカー。「Israelites」とか。確かあれは69年だよね? 俺が10か11歳の時だよ。「It Mek」、「007(Shanty Town)」も大好きだね。デズモンド・デッカーは重要なアーティストだよ。ボブ・マーリーの世界進出にだいぶ貢献しているからね。彼らは友人同士で、デズモンドはボブ・マーリーの背中を押していた人物だったんだよ。
The Best of / Desmond Dekker
20曲連続No.1ヒットを記録するなどスカ時代から活躍するジャマイカの国民的レゲエ・シンガー(2006年没)、デズモンド・デッカー。60年代後半以降は英国にも進出し「イスラエルちゃん」などのヒットを放った。本盤は、その「イスラエルちゃん」こと「Israelite」、「It Mek」、「007(Shanty Town)」といったヒット・チューンを網羅した2枚組ベスト。
ほかにも、ボブ&マーシャの「Young Gifted and Black」、グレイハウンド「Black & White」、いわゆる「ポップ・レゲエ」って呼ばれているようなものをよく聴いてたよ。当時イギリスでかなり流行っていたからね。
--- 10歳ぐらいですでに7インチや10インチ・シングルを買い漁っていたり。
そうだね。でも特別早熟だったわけじゃない。みんな買ってたから。でも、もちろんレゲエだけじゃなくて、MOTOWNみたいなポップ・ミュージックも好きだったし、T・レックスだって聴いてたよ。少なくともその頃オレの周りにはそういった良質なポップ・ミュージックが好きな連中が多かったんだね。
--- そうした中でも、17歳でレゲエ専門のディストリビューター「クリエイション・レベル」を立ち上げたりと、より深くレゲエの世界にのめり込んでいくのですが、当時のエイドリアンさんにとってオリジナル・ジャマイカン・アーティストとの交流・活動というのはやっぱり強烈なものでしたか?
かなりね。でもレゲエの連中だけじゃなく、一緒に作業した全てのアーティストから色んなことを学んだよ。ミニストリーのアル・ジュールゲンセンにしろ、マーク・スチュワートにしろ。でも何と言ってもプリンス・ファーライからの影響は特別大きかったよ。
彼と一緒に何かをやったということでやっぱり周りの見る目が変わったよね。「アイツ、ファーライとやってるんだってよ、スゲーな」ってみんなリスペクトしてくれた。そして何より信用してもらえるようになったことが自分にとっては活動する上でいちばん大きな原動力になったよ。
--- では最後に、”31年目”に突入する「ON-U SOUND」、今後の展望などありましたらお訊かせください。
今の時代、若いコたちはCDプレイヤーさえ持っていない。だからレコード・ショップもどんどん潰れていってる...だろ? そんな中でレコード・レーベルを運営し続けていくことがいかに大変かってことなんだけど...だからまぁ、まずはそれをやり続けてサヴァイヴするっていうのがベースにはある。オレはCDもヴァイナルも両方リリースし続けていきたい人間だからさ、そのためにはとにかくいいレコード、もっと言えば自分がいいと思うレコードをどんどん作り続けていくしかないよね。
--- エイドリアンさんご自身のリーダー・アルバムが『Becoming A Cliche』以来ですから、もう5年ほどご無沙汰になっておりますが...制作の予定などは?
実は来年の5月にリリースする予定になっているんだ。すごく自分らしいアルバムになってて、我ながらいい出来なんじゃないかなって。今からたのしみに待っててほしいね。
【取材協力:BEATINK / Dis Inc. / 聞き手:HMV 小浜文晶】
Becoming A Cliche / Adrian Sherwood
2006年にリリースされたエイドリアンの2ndソロ・アルバム。リー・ペリー、デニス・ボーヴェル、リトル・ロイ、コンゴ・ナッティ、サミー・ファラ、ビム・シャーマン、レンキーらが集結し、レゲエ/ダブをベースにダンスホール〜デジタル・ダブ、ジャングル、エスノ・トランス、グレゴリアン・チャントなどを展開する音絵巻に。こちらはディスク2にダブ音源を収録した限定2枚組デラックス盤。
Himalayan Dub OKI DUB AINU BAND
『サハリン ロック』 のダブ・アルバムとなる本作では、同バンドのダブワイザーである内田直之とOKIが、それぞれ東京と北海道のスタジオで担当トラックをミックス。最終マスタリングまで互いの作品を聴かないという徹底した姿勢で挑んだ、まさに “ガチンコDUB対決盤”。
If You Want Loyalty Buy A Dog LITTLE AXE
スキップ・マクドナルドは、49年、オハイオ州デイトン生まれ。70年代末には、ニューヨークで、初期ヒップホップにおいて重要な役割を果たすギタリストになっていた。エイドリアン・シャーウッドに出会ったのは84年。以来今日まで、スキップ・マクドナルドはOn-Uファミリーの中核であり続けていて、タックヘッドをはじめ、さまざまなプロジェクトに係わってきた。そのうちのひとつ、ヒップホップはブルーズから地続きの音楽であるということにポイントを置いたソロ・プロジェクトが、リトル・アックス名義での仕事だ。とはいえこの新作では、ジャマイカでワン・ドロップというリズムを突き詰めたドラマー、スタイル・スコットを中心とするダブ・シンジケートが脇を固めている。その結果、ヒップホップでレゲエだけど、ブルーズになっている。今ここにしかない音楽なのだ。 石田昌隆
オルタナティヴ・ミュージック 石田昌隆
パンク、レゲエ、ダブ、ヒップホップ、ハウス、テクノ、そしてワールド・ミュージック。国境を超えて同時代(1986〜2004年)に存在した音楽家たちのポートレイト120点を中心に、彼らへの思いと撮影の顛末を綴ったフォト&ミュージシャン論集。『ミュージック・マガジン』で「音楽の発火点」を連載中のフォトグラファー、石田昌隆が放つ渾身の一冊。
New Age Steppers NEW AGE STEPPERS
私にとってOn-Uの決定的名盤はNew Age Steppersの1st「The New Age Steppers」。聴けば聴くほどに新しい解釈をもたらしてくれる英国産DUBの傑作です。今は亡きAri Up の歌声が私に与える影響は、Dry&Heavyに加入した当時よりはるかに大きなものになっています。音響面でも名手Style Scottのワンドロップをこれほど過激な実験手法で調理した人はAdrian Sherwoodただ一人ではないでしょうか。Jamaicanには決して出せない氷のような鋭い感性もまた本物のレゲエであると確信します。
Likkle Mai (レゲエシンガー)
mairation Likkle Mai
”Likkle Maiのcreation”。社会的メッセージを込めたディープなルーツから、やさしさ溢れるラヴァーズロック、キュートな魅力はじけるロックステディ、粘りの効いたグルーヴが心地良い初期ダンスホールまで、カラフルな内容となった2009年の3rdアルバム。
Starship Africa CREATION REBEL
あれこれON-Uへの思いを馳せようとしましたが、圧倒的な存在感でバシーッと即座にコイツが浮かんできました。最初に針を落として聞いた時の圧倒的なまでの違和感。そしてレゲエ、ダブというジャンルを軽く超越した謎のヒリッとした狂気とかっこよさ。今だに自分にとっての好きな音楽の重要要素のひとつである ”どこか違和感の音楽” の理想であり、宇宙エキゾチズムのオールタイム・アウタースペース桃源郷でもあります。コンピューマ
--- ON-U作品を初めて聴いたのはいつ頃だったのでしょうか?
90年代のアタマだったんで、21、2のときですね。厳密に言うといちばん最初はON-Uではなくて、スリッツの『Return of the Giant Slits』に入ってた「Earthbeat」だったんですよ。アリが日本語で歌ってるのを聴いて「なんじゃこりゃ?」って(笑)。で、そのあとすぐに、ニュー・エイジ・ステッパーズ、ダブ・シンジケートなんかを教えてもらって聴いたんですけど。
Return of the Giant Slits / The Slits
一大センセーションを巻き起こした1979年のデビューアルバム『Cut』に続く2ndアルバム『大地の音』。こちらは、ダブ・ヴァージョンや「Earthbeat」のドイツ語・日本語版といったレア楽曲に加え、かつてプロモ盤シングルのみに収録されていたインタビューなどを収めた2枚組スペシャル・エディション。
で、僕は当時すごくひねくれた聴き方をしてる人だったんですよ(笑)。“黒人レゲエ至上主義”みたいな。「ジャマイカの黒人がやってるレゲエしか聴きたくない!」っていうかなり頭の固いヤツだったんですね(笑)。だから、ニュー・エイジ・ステッパーズとかその他ON-Uの有名ドコロの音を聴いたときには、とにかく強烈な違和感があったんですよ。エイドリアン・シャーウッドがデジタル・エフェクターを多用していることもあったんでしょうね、その違和感は。元々自分が聴いていたのは70年代の、それこそモノラルみたいな音像のダブばっかりだったんで。当時は、ON-Uの作品を聴いてすぐにレコード屋に買いに走るようなことはなかったんですけど、ただ、その異質な感じだけはいつまでも残ってたんですよね。
その少し後に、当時ドライ&ヘビーの前にやっていたバンドが下北沢のライブハウスでオーディオ・アクティヴと対バンすることになって。
--- オーディオ・アクティヴはON-U契約直前?
そうです。だからお客さんもホントにまばらで。しかも当時まだ珍しかったダブのイベントだったんですよ。ダブ・バンドもそんなになかったし。でも、ちょうどそのときにオーディオ・アクティヴから「今度ON-UからCD出してメジャー・デビューするんだよ」っていう話を聞いて、「すげえな!」って。とにかく日本人がイギリスのレーベルから、しかもダブ...というかダブがもっと過激になったような音楽でCDを出すなんて考えられなかったですから、当時は。そこからですよね。ON-Uっていうレーベルを知っていくようになるのは。
--- 知っていくのと同時に、その魅力にどんどん惹かれていったと。
ドラヘビが95年前後に活動を開始するんですけど、メンバーにはオーディオ・アクティヴのドラマーの七尾(茂大)がいたり、バンド活動を続けているうちにON-Uがいかにすごいかっていうことをだんだんと知るようになっていくんですよ。逆に、黒人レゲエ至上主義だった自分がレゲエのバンドを実際やるようになって、その中でブチ当たる色々な疑問なんかを解決してくれたり消化するのにいちばん良い見本のひとつになったのが、まさにこのON-Uだったんですよね。七尾はエイドリアンと年に何ヶ月もツアーを回っていましたから、日常的なエピソードなんかも色々聞けるわけなんですよ。そこでどんどん興味が沸いてきたっていうことですよね。
--- 例えばスタイル・スコットに対しても印象が色々と変わったり。
七尾もそうですけど、僕もルーツ・ラディックス大好きですし、スタイル・スコットがいちばん好きなドラマーでしたから。むしろダブ・シンジケートというよりは80年代のジャマイカでの仕事の方が好きなんで。だから最初は「何でこんな白人たちに混ざってやってんだろ?」って単純に思っちゃったんですよね(笑)。だけど、ホントに僕の固い頭をほぐしてくれたんですよね。
photo by Kishi Yamamoto
Stoned Immaculate / Dub Syndicate
クリエイション・レベルのメンバーを中心に結成されたダブ・シンジケートは、ジャマイカにて一時代を築き上げた天才ドラマー、スタイル・スコットをはじめ、タックヘッドを経て現在はリトル・アックスとして活躍するスキップ・マクドナルドや、エイドリアンと共にHITRUNを設立したドクター・パブロなど、そのほかON-Uに深く関わる流動的なメンバーで構成されている。
(BEATINK 藤田氏) プリンス・ファーライの存在も大きかったですよね。
そうだよね。イギリスに早い時期から行ってたもんね。そういうジャマイカのアーティストに、ヨーロッパの新しいフィーリングを持った若い人たち、あとはアメリカのミュージシャンによる絡み合いがおもしろいし、俯瞰してもイチイチすごいんですよね。
(藤田) キース・ルブランにしてもエイドリアンがニューヨークに行ったときにたまたま出会ったらしいですからね。ライブ会場かどこかで意気投合して「じゃあ一緒にやろうぜ」って、それがタックヘッドもしくはファットコメットですからね。
リンクの仕方がすごすぎるよね(笑)。やっぱり当時そういうところにはそういう人が自然に集まってきたんでしょうね。引き寄せられるように。
Tackhead Tape Time / Tackhead
ベーシストのダグ・ウィンビッシュ率いる”ヒップ・ホップの源流”シュガーヒル・ハウス・バンドを母体とするタックヘッド。そのダグに加え、スキップ・マクドナルド(リトル・アックス)、キース・ルブランといったニューヨーク勢のキャリアは、80年代にエイドリアン・シャーウッドと出会ったことでよりいっそう花開くこととなる。これまでにON-U 作品のレコーディングに深く関わってきたタックヘッドの色褪せることのないサウンド・プロダクション。それをあらためて窺い知る貫禄のアルバム(1987年)。
--- アメリカでは、シュガーヒルなどのヒップホップ、ESGのようなポストパンクと、同時多発的にもアンダーグラウンド/インディ・シーンが盛り上がっていた時代でもありますから、つながりやすさはあったかもしれませんね。Facebookもない時代に(笑)。
ホントそうですよね(笑)。とにかく実際集まらないと話にならなかったんでしょうね。
--- そうすると同時期に、エイドリアンは日本の音楽状況視察のような感じで来日していたこともあったんでしょうか?
どうなんでしょうね? 70年代末や80年代の初頭ではないですけど、85、6年に原宿のピテカントロプスかどこかに来たようなことは何かで読んだことはありますね。
(藤田) 奥さんが昔日本人だったんですよ。キシ・ヤマモトさん。
キシさんは、初期のON-Uのアートワークを手掛けていて、キーボードも弾いていたんですよ。
(藤田) だから、そういうキシさんのアートワークも含めて、ON-Uは日本人に受け入れやすかったのかもしれませんね。
Pressure Soundsっていうレゲエの再発レーベルを主宰している、元ロンドン・アンダーグラウンドのピート・ホールズワースが、少しの間日本に住んでた時期があったんですね。で、以前僕がピートに「キシ・ヤマモトさんてどんな人だったんですか?」って訊いたら、「彼女はオノ・ヨーコより偉大だと思うな」って言ってたんですよ。それがすごい印象的だったんですよね。「彼女がいたからON-Uあるいはエイドリアンはここまでクリエイティヴになった」って。そういう意味でON-Uは日本とすごい深い関わりがあるんですよね。
で、これは僕の印象なんですけど、ひょっとしたら日本人が世界でいちばんON-Uを愛してるんじゃないかなって(笑)。作品の本質的なところを理解してきっちりコレクトしている人がやっぱり多いんで。
Pressure Sounds Presents Tuff Cuts:dj KENTARO Crucial Mixs / dj KENTARO
dj KENTAROと、ピート・ホールズワース主宰のNo.1レゲエ・リイシュー・レーベル=Pressure Soundsとの驚愕コラボ作。Pressure Sounds 屈指のレア・アイテム、ラス・イブーナのルーツ・クラシックのヴィレッジ・バンチによるダブ「Diverse Doctrine Version」を筆頭に、レヴォリューショナリーズ「Kunte Kinte」のChannle One インスト・ダブ、フレディ・マッケイのシンガー・テイク「I'm A Free Man」などWickedチューンが数珠繋ぎ。「Tuff Cuts」の名に恥じない世界最高水準のレゲエ・ミックスCD。
--- 図らずも日本との濃い蜜月があったというのはかなり興味深い話ですね。
そういう意味でも、やっぱり僕の中でも追い追いではありますけど、受け入れやすかったというか。僕は当然ジャマイカじゃなくて日本で生まれ育ったわけですから、曲のトピックや質感、歌詞の内容なんかがジャマイカの古いレゲエよりもリアリティが断然あったんですよね。そのことが僕の音楽に対する考え方を変えたって言っても大袈裟じゃないんですよ。ひたすらマニアックにレゲエを追求していって本質的なところを考えたときに、「ひょっとしたらレゲエっていうのは自分のリアリティを出すものなのかもしれない」って結論に至るわけなんですよ。そうなるとある種憧れで聴いてる過去の古いジャマイカのレゲエよりもON-Uの方が全然現実的だったんですよ。そこに気付けばあとは話が早いというか、もうどんどんレコードを掘りまくりますよね。自分がクリエイトしなきゃいけないときに、例えばマーク・スチュワート、ゲイリー・クレイル、ダブ・シンジケート、シンガー&プレイヤーズなんかを聴いてると、「あっ、こういうことをすでにやっているんだ!」って、そういう驚きもあるんですよね。
特に僕、パンクとかニューウェイヴって全然聴かなかったんで。ロックにしてもそんなに真剣なリスナーじゃなかったし。P.I.Lすら聴いてませんでしたから。本当にレゲエばっかり聴いていたんですよね。だから、そういったON-Uのプロダクションで初めてパンクやニューウェイヴに触れて感じることができたんですよ。それで同時に「俺には全然関係ないものだと思っていたけど、実はすごく身近なものなんだな」って理解を深めていったんですよね。こだわりが強すぎた頑固な自分が柔軟というか素直になったんですね。それは当然自分の創作活動にもすごい影響を与えましたしね。
--- 特にどういったところからの影響でしょうか?
やっぱりエイドリアンの自由さですかね。自由になれることって結構勇気もいることだなって思うんですけど。特に日本はこんなに物が溢れているのに、いざ自由にやれって言われても色々と神経を使わなくちゃいけなかったりとか、要するに開き直りにも似た勇気が必要だったりすると思うんですよ、逆に。でもそういう迷いがあったときにエイドリアンのプロダクションからヒントを探し得たりして、「こういうのもアリなんだ」とか「やりたいようにやればいいのか」っていうことを感じさせてくれましたね。
ドラヘビの活動が活発になってくると、イギリスのツアー先とか、あるいは日本にエイドリアンが来たときなんかによく会ってたんですよね。で、エイドリアンってすごい新しモノ好きで、びっくりするぐらい好奇心旺盛なんですよ。これは全然大袈裟じゃなくて、ホントに圧倒されちゃうぐらい。こちら側の「こうであってほしい」っていう期待を簡単に裏切っちゃうんですよ(笑)。コアな人ってちょっとねじれた愛情ってあるじゃないですか? そういう人たちにとっては、「逆にミーハーなんじゃないの?」って思えるぐらいですから(笑)。本当に自由なんですよね。
(藤田) 「何が悪いの?」みたいな感じで。
逆に「いけないのかよ?」ってこっちが詰められるぐらい(笑)。そこに、エイドリアンのモチベーションとかバイタリティみたいなものがあるんだなって。だからこそ、彼がその都度興味を持った色々なプロダクションの人たちが集まるわけで。しかもイギリスだから人種も性別も年齢も関係ない。そして、そのときどきの衝動でやってはいるけど、それがしっかり人を感動させるぐらいの強いパワーを持っていて、しかも30年も続いているっていう...すごいの一言ですよね。
エイドリアンはよくインタビューでも「サヴァイヴしていく」っていうあくまで真っ当なことを言ってますけど、でもそこでホントに純粋な衝動みたいなものをカタチにして世界中の人たちをびっくりさせたり共感させたりしてますからね。これはドラヘビの活動を突き進めれば突き進めるほどすごいことだなって思いましたし、何より、非ジャマイカ人がやるダブとかレゲエの在り様にとてつもないリアリティを感じるようになったんですよね。
--- それこそエイドリアンは、70年代後半のロンドンで、わずか10代でレゲエ専門のレコード屋を運営し始めたですもんね。ON-U設立時にしてもまだ22歳だったわけですから。
子供の頃からジャマイカのレゲエのレコードを輸入して売り歩いていたらしいですから、それがまず早いですよね。でもその段階が僕のジャマイカ・レゲエ至上主義と同じ年齢だったとしても、78、9年だと思いますから、その時点ですでにON-Uの青写真みたいなものが出来上がっていたんですよね。それは、この時期エイドリアンの中で一気にそういった邂逅が起こったことを意味しているんじゃないかなって。イギリスの時流なんかも含めて、そこでものすごいことが起こったんでしょうね、きっと。だからアートワークなんかも過激だったり、およそ総合芸術って呼べるほど全てが繊細に、しかも斬新に作り込まれているんですよね。
--- ソロ・アルバム『Arrow』ではミキシングを初めて青さんご自身が担当されていますが、今回そこを経験した上であらためてエイドリアンのミックスを聴くと、また違った印象をお持ちになったのではないですか?
でも、まずやっぱり、エイドリアンのミックスに比べたら自分はまだまだだなって(笑)。エイドリアンは「メーター見るんじゃねぇ!」っていう人で、たまに自分がかけたエフェクトに自分でビックリしてるぐらいですから(笑)。それに比べたらやっぱりね。
Arrow / AO INOUE
井上青の1stソロ・アルバム。ダブステップ〜グライム、新種のデジタル・ダンスホール、そしてダブ・ブレイクビーツのニュアンスも聴き取れるが、本作に収録されたトラックはダブステップやビート・ミュージックの再現に終止することはない。自由なスピリットと独創性から放たれた”矢”は、ジャンルという概念を飛び越え、聴く者にポジティヴなメッセージを届けている。
--- ちなみに、青さんがこれまでに最もよく聴き込んだものというと?
ダブ・シンジケート『Stoned Immaculate』、シンガーズ&プレイヤーズ『Staggering Heights』、ビム・シャーマン『Across the Red Sea』ですかね。ヴォーカル・ワークがいっぱいあるんで、ニュー・エイジ・ステッパーズもよく聴いてました。あと、最初全く理解できなかったんですけど、ミッシング・ブラジリアンズの『Warzone』っていうアルバム。もはやレゲエじゃないんですけど(笑)。
Staggering Heights / Singers & Players
強烈なダブ・ミックスを創出するエイドリアン・シャーウッド&ダブ・シンジケートの「Players」と、プリンス・ファーライ、コンゴスのコンゴ・アシャンティ、マイキー・ドレッド、ビム・シャーマンら孤高のオリジナル・ジャマイカンが揃い踏む「Singers」とのユニットによる1983年のアルバム。現在は『ON-U Trifecta』で入手可能。
Across The Red Sea / Bim Sherman
ビム・シャーマンが渡英後の1982年に、エイドリアン・シャーウッドの主宰する Hit Run(On-U の前身レーベル)からリリースした代表作。スタイル・スコット、スライ&ロビー、アール”チナ”スミス、ジョージ・オバーン、パブラーズ、デッドリー・ヘッドリーなどが参加している。ロンドンのベリー・スタジオと、ジャマイカのチャンネル・ワンおよびハリーJで録音されている。
Warzone / Missing Brazilians
エイドリアン・シャーウッドの80年代仕事の中において群を抜いてエクスペリメンタルなものとなったミッシング・ブラジリアンズの1984年唯一作。リトル・アニーことアニー・アングザイエティ、シャラ・ネルソンといった女傑シンガーをフロントに、アフリカン・ヘッド・チャージ、マフィア、ダブ・シンジケートといったクルー総出で向かった、ポスト・パンク・ダブの極北。
--- ON-U作品の中には、別にレゲエではないのに、何となくレゲエ臭というかレゲエ欲を掻き立てるような独特の風情がある、そういうおもしろさもありますよね。
そうなんですよね。で、この『Warzone』はジャケットもすごいんですよ。手書きの線が入ってる上にものすごく粗いコラージュがあって...驚きですよね。「あ、いいんだ、ここまでやって」って力技で納得させられるという(笑)。そして、とにかく中の音が、具合が悪いときにはあまり聴きたくないぐらいすごいんですよ(笑)。あまりに病んでるというか。
--- (笑)病んだような音像もひとつの特徴かもしれませんよね。だから日本、特に東京のような少し閉鎖された都市で生活している人にとってはより共鳴する部分が大きいというか。
結局、例えばバンドで耐練する中で土着にないものを頑張って身に付けていくっていうのが、言わば憧れでもあるジャマイカの音楽との付き合い方でもあるわけで、そういう意味で自分たちの出自を鑑みれば、ON-U特有の病むぐらいのダークな音だとかメタリックな音だとかの方が全然近いものなんだって、素直にそう感じますよね。とは言え、決して病んではいないんですけど(笑)。
でもこれができるかって言われたら、そりゃあできないですよね。いざ自分で作ったとしても「こんなにダークなのはマズイだろ...」って自己検閲に負けて躊躇しちゃうと思うんですよ(笑)。特にミッシング・ブラジリアンズとかを聴いていると。
--- 来年1月にニュー・エイジ・ステッパーズの新作『Love Forever』がリリースされますが、ニュー・エイジ・ステッパーズ、あるいはアリ・アップというのは青さんの中では今でもエイドリアン同様にON-Uを象徴するような存在ですか?
もちろん特別な存在ではあったんですけど、僕、2007年のライブをちゃんと観れていなんですよね。後日他のイベントの楽屋でお見かけしたぐらいなんですけど。そのときは「憧れは憧れのままの方がいいんだなぁ」なんてちょっと思いましたけど(笑)。僕はやっぱり1st、2ndの頃のアリ・アップが素敵だなって。
アリ・アップはジャマイカに行って、僕らと同じレゲエへの憧れを具現化したというか、そういうところにすごく共感する部分もありますし、あとは“ガーリー”なもののすごさを目の当たりにさせてくれたというか。僕にとっては、例えばビョークのシュガーキューブスなんかよりも全然アリの方が異性を感じさせる存在なんですよ。パンキッシュでアナーキーな“ガールイズム”の元祖ですよね。そういう意味ではアリはすごい偉大だと思いますよ。おそらく男性よりも女性に対してかなり多くの勇気を与えたんじゃないかなって。そういう女性アーティストって時代時代にいるかもしれませんけど、その中でもアリ・アップは群を抜いて人を惹きつける力があったんじゃないかなって思いますね。
聞いた話によると、スリッツやニュー・エイジ・ステッパーズをやってるとき、よくスッポンポンで街を歩いててすれ違う男連中にツバをかけられていたらしいですからね。「このキチガイ女!」って。そういうエキセントリックな部分もただただすごいなと。でも飄々としてて、しかもお茶目でオシャレで。我が道を貫いているって言葉がピッタリですよね。
(藤田) ニュー・エイジ・ステッパーズの1stなんかは、「レゲエなのか何なのか?」っていうある種異様な空気に支配されていますよね。それ以降の『Action Battlefield』、『Foundation Steppers』では徐々にレゲエっぽくはなっていきますけど。
ノイズとも呼べそうだし。まずメンバーがすごいですよね。17人ぐらいで自由奔放にセッションしたみたいですけど、でもこれを二日ぐらいで録ったっていうのがまたすごいですよね。
オーディオ・アクティヴのメンバーなんかに聞いても、スタジオに行けばクルーの誰かしらが居て、そこで自然発生的にセッションが始まって、夢中になってるうちに一日二日で曲が録れちゃったとか。流動的にメンバーが入れ替わっていますから、それこそセッション毎に色んな音が次から次に生まれていたんでしょうね。
--- 僕もスリッツからニュー・エイジ・ステッパーズに入ったクチなんですけど、そういう道スジを辿った人はそれなりに多そうですよね?
多いと思いますよ。スリッツからして強烈ですからね。聴きやすさもあるし。日本で言えばポップ・シーンまで影響が及んでることを考えると、色んなものの雛形になったような気がしますよね。
(藤田)スリッツからデニス・ボーヴェルへ行って、そこからON-Uっていう流れも多いと思いますよ。エイドリアンのヒーローがデニス・ボーヴェルだったわけだから。10月のRough Trade イベントで、この二人のDJセッションがありましたよね。
あぁ、やってたね。で、マーク・スチュワートが出てきて叫び倒したっていう(笑)。その中で結構年配の人たちはみんな気持ち良さそうに踊ってるんだよね。
マーク・スチュワートも以前に一度会ったことがあるんですけど、何て言うか見てくれはフツーなんですよね。それが逆にインパクトあって(笑)。だから、あんな音出してるけどみんなすごく自然体なんだなって。特に意識して奇矯なことをやってやろうだなんて思ってないんですよ。エイドリアンにもそれは感じましたしね。
(藤田) 何年か前にマーク・スチュワートは、スミス&マイティと来日して。そのときは代官山のAIRでマークがDJしたんですけど、選曲がかなり独特だったらしいんですよね。フロアにほとんど人がいなくなったぐらい(笑)。
フツーにGパン、Gジャン着た、体の大きなおじいちゃんっていうか(笑)。で僕が「ドライ&ヘビーのシンガーです」って挨拶したら、「オ〜ラブリー!」って(笑)。
(藤田) 190cmぐらいあるんですよね。でも高所恐怖症だからエスカレーターに乗れないっていうウワサ(笑)。
photo by Kishi Yamamoto
--- ON-UのカタログでCD化されていないものというのは現在どのぐらいあるのでしょうか?
(藤田) 正確な数字は把握していないんですけど、アルバムだけで大体100枚ぐらいあるみたいなんですよね。で、一度ドイツのEFAっていうレーベルからON-UのカタログがほぼCD 化されたんですよ。
そのEFAが94年ぐらいに倒産してカタログが全部廃盤になって。で、その後ウチが国内再発を刷るようになったんですね。だから、EFAからほとんどCD化はされていたんですけど、ただ、日本人の感覚や嗜好に対応していないっていうか...ちょっと音が粗悪なんですよね(笑)。
たしかに音は良くないよね。
(藤田) そういうこともあって、ウチでリイシューするときは必ずリマスタリングして、さらにボーナス・トラックを付けてっていう感じにしたんですよ。
だからBEATINKのリイシュー盤は、当時EFAから出ていたものより格段に音が良くなっているんですよ。僕がON-Uを掘りはじめた頃はアナログがほとんどだったんですけど、BEATINKから再発されるようになってからはCDで買う割合も増えてきましたね。アートワークも含めてクオリティが高いので、CDは主にBEATINK配給の国内盤で買い揃えてましたね。
--- シンガーとしての青さんに大きな影響を与えたON-Uアクトというと、やはりビム・シャーマンだったり?
あとはプリンス・ファーライですね。ON-Uにフィーチャーされてるジャマイカの人たちってところで。憧れですよね。で、マーク・スチュワートやゲイリー・クレイルを聴いたときは、まぁ「ヘタじゃん!」と思うわけですよ(笑)。こんなにシャウトして何言ってるかもよく判らないし。でもそれはそれで、別の部分として、自然体で率直にやってるところにかなり衝撃を受けたことも確かなんですよね。自分の中でパンクとかニューウェイヴがON-Uそのものになったってことなのかもしれませんし。ドラヘビも1st、2ndぐらいの初期は結構過激にやっていたんで、まぁその当時は特に彼らの作品を意識していたわけではないんですが、今考えてみると「あぁ、こういうことなのか」って。
ビムとかが歌えば、それは当然すんなりとレゲエになるんですよね。結局どんな音の上で歌ってもレゲエになるすごさがあるんですよ。そういう文句なしに光輝いてる部分と表裏で、マークだとかのヴォーカルにド肝を抜かれるっていう(笑)。それも間違いなくON-Uの魅力なんですよね。
--- では最後に、これからON-Uを聴いてみようかなという方の入門編として何枚かオススメを紹介していただき、本稿を締めさせていただこうかなと思うのですが。
なかなか難しいですよね(笑)。じゃあ、レゲエやクラブ・ミュージックというよりはロック方面が好きな人に、という感じで。「何かしてやろう」って企んでるヤツ向きの3枚ですね(笑)。
ON-U Trifecta / New Age Steppers
「ON-U Trifecta」ボックスセット・シリーズのニュー・エイジ・ステッパーズ編。『New Age Steppers』(80年)、『Action Battlefield』(81年)、『Foundation Steppers』(83年)の3作を最新リマスタリングで格納。各盤の冒頭に押し込まれた「Fade Away」(ジュニア・バイルス)、「My Whole World」(ビム・シャーマン)、「Some Love」(チャカ・カーン)といったルーツ・チューンに今夜も耽溺・・・
Warzone / Missing Brazilians
エイドリアン・シャーウッドの80年代仕事の中において群を抜いてエクスペリメンタルなものとなったミッシング・ブラジリアンズの1984年唯一作。リトル・アニーことアニー・アングザイエティ、シャラ・ネルソンといった女傑シンガーをフロントに、アフリカン・ヘッド・チャージ、マフィア、ダブ・シンジケートといったクルー総出で向かった、ポスト・パンク・ダブの極北。
【取材協力:BEATINK / Dis Inc. / 聞き手:HMV 小浜文晶】
井上青 (いのうえ あお)
90年代初頭、MIGHTY MASSAが結成したINTERCEPTORの一員として本格的な活動をスタート。その後、秋本と七尾によるDRY&HEAVYに参加、メンバーとして活動開始、海外リリース&ツアーでその印象的な歌声とメッセージは世界的な注目を集める。一方でDJとしての活動も活発に行い、レゲエに囚われない自由なプレイを各地で披露。アンダーグラウンドでミックスCDをリリースして話題を集める。さらにはDAIHACHIとのユニット、Maccafatでも活動を展開した。
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