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「TAO」 第6回:ゲスト→村上賢司 【7】

Wednesday, April 7th 2010

ラブホテルも秘宝館もラブドールも、全て何かの線を引いたら向こう側に落っこってしまうものなんだけれど、それをグレーゾーンの中で存在させてあげる、認めてあげるっていうのが大事なんじゃないかっていう。




---  『工場萌えな日々』から淡々と撮られるドキュメンタリーとストーリー性のあるドラマや映画は並行して制作されるという流れは今後も?


村上:もうね、「仕事があれば何でもやる」っていうのが、さっき、子供がいるっていう話じゃないですけど、そんなスタンスですよ。逆に、それは「村上でやれる」っていう風にプロデューサーの方が思ってくれてるわけですから、そこには乗っからせて頂いてやるべきだと思うし、「自分の企画」となると、大西健児くんを撮った『拝啓 扇千景様』とか渡辺文樹さんを撮ったものとかああいうものにもなるし、自分の中で何かの物語、映画みたいなドラマ性のあるものをやりたかったとしたら、自分で脚本を書くかもしれないし。今はドラマとか映画の現場だけでなく・・・ラブホテル業界、ラブドール業界、秘宝館業界とかのいろんな人と会って、いろんな風景を見たいなっていうのが正直なところですね。人と会ったりすることがすごくたのしいですね。特に自分の趣味趣向から離れた人達と会って話がしたいんですよね。東京で生活してたら絶対会えない人達と会うのがすごく楽しい。

ドキュメンタリーとドラマの違いは僕にはないんですよ。「両方よくやるよね」とか「両方やるのは何でですか?」とかって聞く人がいるんですけど、僕には違いがわからないですよね、かっこつけてるわけじゃなくて、本気で。ドラマ撮ってる時にある種のドキュメンタリー的みたいなものを感じるし、ドキュメンタリー撮ってる時に一番感じるのはドラマなんですよ。その混在してるものの中から何か表現していくわけで。だいたいドキュメンタリーって”手法”ですからね。ジャンルではなくて、単なる物語を語るためのテクニックですから。だから、ドキュメンタリーだから何とか・・・っていうようなことは全くないですね。さすがに最近はそういう人はいないんだけれど、ドキュメンタリー=社会派だっていうノリだけはとにかく否定したいです。以前、山形国際ドキュメンタリー映画祭で僕の『川口で生きろよ!』っていう映画をやった時に飲み屋で絡まれたんですよ。「こんな個人的な作品を作って、映画祭で上映するなんて気が知れない。こんな作品を選ぶなんて考えられない」って言う人がいたんですよ、すごく目上の方だったんですけど。それを言われた瞬間に「ああ、もう絶対にこの路線でいこう」って思いましたね。こちらはドキュメンタリーっていう手法を使って、『夏に生れる』もそうですけど、ただおもしろいことをやってるだけであって、そこに何か社会的なもの?弱者を救うだとか権力を撃つだとか、そういうものが入ってないものはダメと言われちゃったら、ちょっと貧しいなあっていう気がしましたけどね。

ただこれから、そういう社会派的だと言われてるドキュメンタリーっていうものは作りたいと思う場合もあるし、作らないかもしれないしっていうことだけですよね。最初から決める必要ない。そういう社会派のイメージを持たれてる森達也さん的なドキュメンタリーだけでは・・・でも、森さんは全然、社会派じゃないからね?(笑)。


--- そうですか?(笑)。


村上:森さんって、本当、向井(康介)くんとか山下(敦弘)くんとかと一緒に会った時のことを思い出すと、不思議に思うんですよ。一番最初に森さんに会ったのがバンクーバーの映画祭で山下くんと僕の作品がコンペ部門に選ばれて、フラフラ行ったんですけど、その時に森さんも『A』の招待上映で来ていて、その時の森さんに対する僕達の共通の印象なんて、いい加減な中年のテレビマンですよ。山下くんなんて今でも『A』の時の英語で質疑応答する森さんのマネとかやりますから(笑)。もうね、「何だこの人・・・!?」っていうのが森さんの第一印象。で、その印象が今でもずっと続いてるから、何かね、テレビで社会的なこととか政治についてマジメに語ってると、「嘘つきー」って思う(笑)。


--- 『ドキュメンタリーは嘘をつく』での森さんのキャラクター作りというのは、普段の森さんに近い部分が実は結構あるんですか?


村上:僕と向井くんの中にある、あの時の思い出っていうのが多分に入ってますよね。実際、ドタキャンはするし、遅刻魔だし。遅刻魔だよね、森さんはとにかく。だって、『ドキュメンタリーは嘘をつく』の時、僕、森さんを一度、本気で殴ろうと思いましたもん(笑)。っていうのはね、原一男さんとの場面で、森さんが本当に遅刻してきたんですよ。原一男さんが待ってるんですよ?100万歩許してその遅刻は許しますよ。で、僕、楽屋で原さんと「森さん、遅いっすねえ」とか言いながら心臓バクバクさせながら待ってるわけですよね。そしたら、向こうからドタドタドタって音がして、「あ、森さん来た」って思って、「森さーん」って言って外に慌てて出たら、偶然、隣の楽屋に森さんが以前ラジオで共演したことがある磯山さやかさんがいたんですよ(笑)。それで、遅刻してるにも関わらず、そっちの方に先に行って挨拶したんですよね。「磯山さーん、おひさしぶり。覚えてる?」みたいな。本当にその時ね、殺意が芽生えましたよ。「これは殺していいような気がするなあ」って(笑)。そんな人です。

だからね、嘘と本当の区別なんてなくて、全ての映画表現はいろんなものが混在している何かの塊なんですよ。嘘と本当だけじゃない、もっといろんな要素が入っている多面体だから、観た人によって見え方が違う。そういうものなんですよ、映像表現って。『夏に生れる』では多くの人が「これは本当だ」って思ってることが実は演出だったり、「これ、嘘だよね?」っていうことが実は本当だったりしていた。だから躊躇しないで、どんどんどんどん演出していくし、ハプニング的なこともどんどん取り入れていったらいいんだなあって思いますね。

ドキュメンタリーは嘘をつく』でもう1つ僕が入れたかったことは「お金」っていうことですね。メディアリテラシーを番組にすることによって、「これはみんな、仕事としてやってるんだ」っていうことを意識させることが重要だった。天から降ってきた何かのようにニュースだとかを見るっていうのは違う。メディアは人間の生活、営みの上で発信してるんだっていうことを表明したかったんですよね。それにはプロデューサーも乗ってくれた。だから、森さんに「お金」っていう発言をしてもらったっていうところなんですけど。

あとはやっぱり、僕はこれからの日本、これからの世界っていうのは、いろんなものが混在したグレーゾーンみたいなところがどんどん広がっていけばいいなって思う。割り切らないでグレーゾーンはグレーゾーンなままにしておく。だから、ラブホテルもそうだし、秘宝館もそうだし、ラブドールもそうだし、全て何かの線を引いたら向こう側に落っこってしまうものなんだけれど、それをグレーゾーンの中で存在させてあげる、認めてあげるっていうのが大事なんじゃないかっていうことをあの番組で表明したかった。

ドキュメンタリーは嘘をつく』では、僕とか森さんはフリーなんでどうでもいいんですけど、アーレフの荒木さんがああいう場面に出る、彼の笑顔を出すっていうのは僕が思ってる以上に局のプロデューサーは覚悟がいったっていうことだけは事実ですよね。正直、辞める覚悟ですよ。しかも、協力:アーレフですからね。それにはやっぱり、プロデューサーの覚悟ってすごいだろうなあって思いましたよ。でもね、あれはテレビ東京だから出来たんですよね、たぶん。長澤さん、生まれはどちらですか?


--- 埼玉県川越市です。


村上:じゃあ、テレビ東京のノリ、わかりますよね?胡散臭い感じ、ギルガメッシュな感じ。


--- ええ(笑)。


村上:テレビ東京ってね、やっぱり自由なんですよ。本当にね、これを言うと怒られちゃうけれど、『ドキュメンタリーは嘘をつく』は、自分が小学生の時に観てたテレビ東京的な変な番組?(笑)を自分の中でもう1回取り戻したいっていう作業だったと思います。

全然この話とは別なんですけど、松井良彦さんの話とかが出たから言うんですけど、あの人達の動き、やってきたことっていうのをもう1回誰かが本当にまとめて欲しいなあって思う。実は、その登場人物の一人が森さんですからね。森さん、だってね、石井總亙さんの『シャッフル』に出てますからね。役者としてね、石井さんや林海象さんと一緒に共闘してて、森さん、立教大学で黒沢清さんとかとやってる人だから、それは本当に不思議なんですよ。何であの時期に黒沢さんが立教にいて、万田邦敏さんがいて、森さんがいて、塩田明彦さんがいて、同時期に山本政志さんがいて、その下に働いてたのが諏訪敦彦さんで、飯田譲治さんで、また別の場所に松井良彦さんがいて。で、松井さんが編集した『狂い咲きサンダーロード』の現場には緒方明さんがいて、キャメラマンに笠松則通さんがいて・・・「何なんだろう、これって」って。で、その後の『爆裂都市』の助監督は阪本順治さんで、美術やってるのが手塚眞さんでって・・・「それって一体、何なんだろうな」って思うし。奇跡なんですかね?だって、人口1億何人いる国ですよ、ここ。


--- そうつながるのが?


村上:うん。不思議ですよね、すごく。僕はね、松江くんとか山下くんとかとは一世代上なんで、どちらかというと『怪奇大家族』を一緒にやった豊島圭介くんとか山口雄大くんとかと同じ世代なんですけど、清水崇くんもそうですが。


--- 『細菌列島』は『古代少女ドグちゃん』の継田淳さんが脚本を書かれていますよね?今後もパロディものを?


村上:全然やりますよ。言い訳がましいかもしれないけれど、こういう便乗するのってね、映画っぽいなって思うんですよ。で、こういうのが何か「映画」っていうものを豊かにしてるような気がするんですよ。バカにしていいんですよ、全然。昔、そういうものっていっぱいあったじゃないですか?エノケン(榎本健一)の時代から。だから何か、そういうのでいいような気がしますけどね。

自分の原体験で言うと『スターウォーズ』がやっぱりでかいんですよ。77年、『スターウォーズ』を観て本当に大好きで、で、何か便乗っぽく、深作欣二さんが『宇宙からのメッセージ』を作って、「おお!」みたいなさ。僕のは全然規模は小さいけど、でも、そういう何か全然節操ない感じでいいと思うんですよね。僕、「節操ないからこそ映画だ」って思ってるんで。 あとはね、『細菌列島』の企画に乗った理由は、大きな権力を持ってた人物がすごく人間的な理由によって行動を起こすっていうテーマに同調したから。あとはやっぱり、いわゆる某国(笑)に対してのバッシングを思慮なくする人達に向けてる気持ちはありますよね。全然相手にされてませんけど、あの国にも当然いい人もいるし、悪い人もいる。すごく当たり前のことなんだけど。だって、あの作品の嶋大輔さんの役なんか、一番かっこいいというか、真人間的な役じゃないですか。でも、某国の人間なんですよね。そのことについてちょっと考えて欲しいなあっていう気はしてますけどね。ネットで朝鮮学校の前で抗議活動やってる人達の映像とかを観てるとね、「何考えてるのかなあ?」って思う。「恥ずかしくないのかな?子供達が中にいるのに」って。本当はね、松江くんが『ライブテープ』を作る1つのきっかけになった高崎映画祭の茂木(正男)さんの話をしたかったんだけどね。


--- 茂木さん・・・?


村上:『ライブテープ』でさ、松江くん、言ってたでしょ?高崎映画祭の主催者でもあるその茂木さんが去年ね、癌で亡くなったんですよ。僕にいろんな映画を見せてくれた人、僕に映画を教えてくれた人だったんで、茂木さんが亡くなったのは本当に悲しかったし、大きな出来事でしたね。松江くんも絶句してましたよ。松江くんは『あんにょんキムチ』、僕は『夏に生れる』が招待されて、一緒に高崎映画祭に行った時、夜中の旅館で『ファザーレス』っていう映画を作った茂野(良弥)って奴が酒グセが悪くて大ゲンカになったんですけど、そういう思い出もあったりして。

で、今ね、「シネマテークたかさき」っていう茂木さんが作った映画館があるんですけど、そこの2代目の女性の方が一生懸命やってくれていて、今日は『ラブドール 抱きしめたい! 』を上映してもらっていて。そういう続いていく感じはいいなあって。

松江くんと共闘している、SPOTTED PRODUCTIONの直井(卓俊)くんは新しいタイプのプロデューサーですよね。HMVの方に言うのもあれですけど、やっぱり今、大きな組織で何かをやっていくのは大変なんじゃないですか?やっぱりね、大きな組織で成り立たせてたある種のものっていうのが僕が妄信し過ぎてるのかもしれないけれど、ネット的なもので実は1人で、あるいは2〜3人で出来るんだっていうことになってきた。テレビ局とかはさすがになくなることはないと思いますけど、従来の映画会社だとか配給会社だとかっていうものが今大変なのは、そういう変化に対応出来ていないから。でも、直井くんみたいに個人でTシャツとかグッズを作ってたりする人はフレキシブルに動けたり出来る。新しいタイプだなあって思いますよね。

僕ね、イメージフォーラムで講師やってるんですよ、1年に1回。やっぱり生徒さんの質が変わってきてるなあっていう気がする、何となくですけどね。表現するということに対する気持ちっていうのがいまいちダイレクトに伝わらない・・・まあ、それでもおもしろい奴はいて、『イエローキッド』の真利子哲也とか。観ました?


--- いえ、まだです。


村上:『ドキュメンタリーは嘘をつく』の瀬々(敬久)さんの息子役の彼だよ(笑)。


--- タバコばっかり吸ってる・・・。


村上:そうそう、あいつが真利子。パワーありますよ、『イエローキッド』後半はぐだぐだになってダメだけど、前半は本当に「すごい」って思いましたよ。「韓国映画を超えるわ、これ」って思った。


--- イメージフォーラムというお話のつながりで、先日、伊藤高志さんにお話を伺いました。

実験映像作家 伊藤高志 インタビュー


村上:伊藤さんでは、『悪魔の回路図』とか好きですね、僕。『WALL』とかね、あれは傑作だよねえ。伊藤さんに関しては・・・手法に権利があるんだったら、伊藤さんは今たぶん、大富豪だろうね。もう、どれだけあの『SPACY』の真似をCMやPVがしたか。どれだけみんな、『悪魔の回路図』の真似をしたか。本当にね、いろんなところで使われてますよね。


--- 本日は長い時間に渡り・・・ありがとうございました。


村上:こちらこそ、どうもありがとう。






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