Wagner (1813-1883)
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Wagner (1813-1883) Review List

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  • シャーガーのヘルデンテノールとしてのピークは、2018...

    Posted Date:2025/09/23

    シャーガーのヘルデンテノールとしてのピークは、2018年のチェルニャコフ/バレンボイム版だったと思うが、さらに年を経て陰影が濃くなった。まだまだ第一人者。ニールンドはリリックな声による優しいイゾルデ。かつてのニルソン、マイアーにはあった「魔女」的な趣きは皆無。二人で声を揃えて歌う部分では、確かにトリスタンの声に押されているが、無理に声を張り上げていないせいだろう、ほぼ一発ライヴ+パッチ・セッション(必要があれば)という収録にも関わらず、最後までスタミナが衰えないのはさすが。グロイスベックのマルケ王も良い。前の世代(カタリーナ・ワーグナー演出 2015年)のツェッペンフェルトのような露骨な悪役ではないが、かといってただの温和な老人でもなく、彼も深刻な葛藤を抱えた人物であることが良く分かる演唱。激しい怒りと嘆きの様からは、家臣たち(その一人はまぎれもなくトリスタンだが)の忠言に乗って後妻を迎えたりせず、誰よりも愛する(ほとんど同性愛に近い)甥のトリスタンに王位を譲っておけば良かったという後悔が聞き取れる。 指揮は微妙。やや遅めのテンポで打ち寄せる波のようにうねる音楽からは、なるほどスケールの大きさが感じられるが、その代わり細部の精妙さはだいぶ犠牲になっている。第1幕幕切れや第2幕第2場終わりなど、クライマックスでの盛り上げにいまひとつ切れが感じられないのは、そのせいか。「モーツァルトのセンスでワーグナーを振る」と評されたベーム以来、『トリスタン』も造形の明晰さを獲得したが、ビシュコフの指揮はベーム以前に先祖返りしてしまったように感じる。 演出は全体としては凡庸と言わざるを得ないが、幾つか面白いところもある。全3幕をすべて船の中に設定して、閉塞感を強調したのが、まず特徴−−第2幕ではイゾルデが松明を消すと、逆に明るくなって舞台が船倉であることが分かるのには、思わず笑ってしまうが。いちばん面白かったのは、以下の点。第1幕、イゾルデ姫を締めつける、大きく広がった花嫁衣装はポネル演出のパクリだが、その衣装には沢山の文字が書かれており、イゾルデ自身もさらに文字を書き込んでゆく。第3幕でのトリスタンの服と身体にも多くの文字が書かれている。これは言語、概念が人間を縛っているということ。イゾルデを縛っているのは「Rache復讐」、トリスタンを縛っているのは「Ehre名誉」とも言えそうだ。恋人たちが目指すのは、この概念から逃れること−−物語ではその方策は「Sterben死」(トリスタンが自分の腕に書く言葉)しかないのだけれど。恋人たち、第1幕では「死の薬」(媚薬のはずだが)を飲まないが、第2幕の終わりではトリスタンが飲んで倒れる(イゾルデも飲もうとするがメロートに妨げられる)、第3幕、「愛の死」の前についにイゾルデが飲む、といった仕様も面白いが、どうもアイデアが行き当たりばったりで、すべてを統一するポリシーが見出せないのが弱点。

    村井 翔 . |70year

    0
  • フラグスタートとメルヒオールの共演として有名な1938...

    Posted Date:2025/09/12

    フラグスタートとメルヒオールの共演として有名な1938年の聖金曜日、4月15日のメトロポリタン公演。メトの黄金時代を支えたボダンツキーの指揮、さらにショルのアンフォルタス、リストのグルネマンツとくれば、まさしく垂涎の演奏記録ということになります(体調不良のため第二幕の指揮はラインスドルフに委ねられましたが、第三幕ではボダンツキーが復帰しました)。当時のメト公演ラジオ放送はNBCが手掛けており、自局の設備で録音したNBCのディスクが残っていれば条件としては最善だったはずですが、現存しません。1969年最初にこの演奏を市販したEJS盤が用いたソースはラジオのエアチェック。個人がアセテート盤に残したもので、録音機は一台だったらしく、盤を換えるごと(約7分おき)にギャップが発生しています。音質もかなり厳しい代物です。MytoのCD(3CD 982.H013)はEJS盤の板起こし。その後第二幕のみ別の音源(12インチのアルミ盤)が発見され、2002年Guild GHCD2201としてCD化されています。MarstonのCDはいずれとも別のソースで、ニューヨークの録音業者がラジオ放送から16インチのアルミ盤に収めたもの。初めて全三幕を完全に聴くことができるようになった、快挙です。音域やダイナミックレンジの狭さはある程度致し方ないとはいえ、音質はMyto盤とは段違いに良好。前奏曲の冒頭から音楽の流れに耳を委ねることができます。相応のバックグランドノイズが残っているので、ヘッドフォンよりはスピーカー推奨。Guild盤第二幕とは一部の比較のみながら、音質的には優劣というより好みの問題でしょう。(正確を期すなば、Marstonの使用原盤には「聖金曜日の音楽」末尾に短い欠落があり、EJS盤から補った由。)先に星一つのレビューが出ていますが、日本の代理店に対する評価ならともかく、Marstonがこれまで制作したCDに接したことがあるならば、どれだけの労力と情熱がそこに注がれているかは想像に難くないのではないでしょうか。

    discothecarius . |60year

    4
  • 過去に『MYTO』から3枚組でリリースされた際は、重要...

    Posted Date:2025/09/09

    過去に『MYTO』から3枚組でリリースされた際は、重要な部分での欠落が多々あったが、今回は欠落が無い完全収録されたものなのだろうか?代理店の商品説明では、そこがつまびらかになっていない。『MYTO』と全く同じ音源を、単に4枚組セットにして10,000円を超える高額で販売するのなら、許されない詐欺行為だ。代理店は『MYTO』と同じ音源を単に4枚組セットにしたのか、それとも欠落の無い完全収録なのか、はっきりユーザーに説明するべきだ。それと代理店は『上演時間が長い演目では指揮者が途中で交代することは珍しいことでは無かったようです』などと言っているが、この時のボダンツキーは体調が優れず、全曲を振る体力が無く、やむなく第2幕をラインスドルフが振ることになったと聞いている。そしてこの演奏の翌年、1939年ボダンツキーは急逝してしまう。代理店なら事実関係を正確に伝えるべきだ。

    黒にんにく .

    3
  • オペラハウスの標準レパートリーとなっているワーグナ...

    Posted Date:2025/06/14

    オペラハウスの標準レパートリーとなっているワーグナー・オペラ10作の中では、最初の『さまよえるオランダ人』こそ最もHIPスタイルと相性が良いと考えられてきたし、実際ミンコフスキによるパリ初稿版の録音もあった。しかし、使われている楽譜は、序曲や全曲の幕切れが「救済のモティーフ」で終わるごく標準的な版ではあるが、今回のガードナー指揮ほどHIPの精神を生かした録音はこれまでなかったと言って良い。「ゼンタのバラード」冒頭のように思い切って遅いテンポを取ることもあるが、全体は快調な快速テンポで進められており、ティンパニや金管を強めに押し出す響きのバランスは、まさしくHIPのセンス。第3幕第1場、例の合唱バトルの最後のホルンのゲシュトップト音など、随所で「薬味」も効かせている。オペラの舞台となった国、つまり「地元」のオケであるノルウェー国立歌劇場管弦楽団も素晴らしい好演。ロンドン・フィルの首席指揮者も兼務するガードナーだが、ほぼ同時に発売されたベルゲン・フィルとの『サロメ』全曲も見事で、オペラ指揮者としてもますます目が離せない。 もちろん圧倒的な声の持ち主だが、時として大味なこともあるダヴィドセン。しかし今回は、精神的に不安定な人が多いワーグナー・ヒロインの中でもとびきりのヤンデレ娘を渾身の力演で演じきっている。フィンリーの題名役は理知的な歌唱で、根源的な「暗さ」に不足するが、まあこれも悪くない。

    村井 翔 . |70year

    4
  • 2023年バイロイト・ライヴ。NHKBSで放映されたもの。...

    Posted Date:2025/04/06

    2023年バイロイト・ライヴ。NHKBSで放映されたもの。毎度の読み替え演出だが、レアアース争奪戦がテーマになり最後パルジファルはレアアースで作られたと思われる聖杯を投げ捨て木っ端みじんにする。一同唖然とする中、幕。こんなものがあるから平和にならないんだという主張かもしれないが一番感動的な場面であれをやられてはたまったものではない。カーテンコールで当然演出陣に盛大なブーイングが浴びせられたが彼らは嬉しそうだった。ブーイングも勲章ということか。演出家は観客を感動させる気などないのだ。ところが、演奏は十分に感動的、いや近年最高の出来だったのだ。バイロイトの「パルジファル」としてはブーレーズ、レヴァインよりはるかに優れた、そうクナッパーツブッシュ以来の素晴らしいもの。まず、エラス=カサドの指揮するオケが見事。非常に透明でありながら深みのある音、まさに「パルジファル」に望まれる音を出している。ここぞというところでエラス=カサドはテンポを落とし圧倒的なクライマックスを作る。歌手陣もみな優秀でオペラでやや退屈する第2幕がガランチャによって大変な聴き映え。映像で懲りないでCDで聴いてほしい。

    フォアグラ .

    1
  • オーケストラの常任指揮者である以上にオペラハウスの...

    Posted Date:2025/03/24

    オーケストラの常任指揮者である以上にオペラハウスのカペルマイスターでありたかったカラヤンにとって《指環》の上演はライフワークともいうべき課題であった。最愛のオペラハウス=ウィーン国立歌劇場の総監督を辞任したカラヤンは、故郷のザルツブルクを舞台に理想のオペラ上演を目指して復活祭音楽祭を創設。その最初の演目として取り上げられたのが《指環》だった。ピットには世界最高のオーケストラ=ベルリン・フィルが入る。『ヨーロッパ音楽界の帝王』と称された世界一多忙な指揮者カラヤンが、ベルリン・フィルとの仕事一本に絞って活動を展開したこの時期(60年代半ばから椎間板の手術を受ける75年まで)を私はカラヤンの絶頂期と見ているが、ピークを迎えた天才指揮者が、その威信にかけて取り組んだ上演と並行して収録されたこの作品が悪かろうはずはないが、果たして、実にユニークな作品となった。 これまでワーグナーの楽劇で聴くことがなかったオーケストラの精妙な響きから『室内学的』と評されるが、もちろんダイナミックな迫力も兼ね備えている。ドラマとしての性格よりも、純音楽的な表現が採られ、歌手の起用も、そうしたポリシーに則った独自の人選がなされている。

    jasmine .

    0
  • 今まで、音がいいといわれていた通常CDで聞いていたが...

    Posted Date:2025/02/27

    今まで、音がいいといわれていた通常CDで聞いていたが、このSACDは全く別物。ものすごく音がいい。モノラルである以外なんの不満もない。確かに数年後ショルテイがウイーンフィルで指環の録音をしていて、ワルキューレもいい演奏だが、このフルトヴェングラーに比べると落ちる。ワルキューレを聞くなら断然このSACD.ただ、スカラ座はより激しい爆演なので少し迷うなあ。

    ソナタ形式の楽章はリピートすべきと思う老人 . |60year

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  • 冒頭から音が揺れまくれ金管の音はへなり、録音は酷い...

    Posted Date:2025/02/13

    冒頭から音が揺れまくれ金管の音はへなり、録音は酷い。 歌い手たちの声は、堪能できる範囲。

    murr . |50year

    0
  • マティルデ夫人に入れ上げていた頃の作品は独特の曲想...

    Posted Date:2025/01/27

    マティルデ夫人に入れ上げていた頃の作品は独特の曲想を湛えた官能的なものとして有名。ワーグナーにはオーケストラを使わずともその様な作品を書ける才能があるということを改めて感じることができた。ヴィルトーゾ的要素が苦手なワーグナーにとってはその曲想とオーケストレーションが最大の武器。であるが故これはある意味素手のワーグナー。 一方、作曲家として、よちよち歩きだった頃の作品は正直才能のある子供なら書けるレベルかも知れない。シューマンの19歳前後の作品とワーグナーの同時期の作品を比べれば大人と子供。しかし、この頃から人を喜ばせる、いや喜ばせ、【させる】精神を感じる。その沸る炎があの歌劇、楽劇群に反映されたにだろう。なぜかウキウキさせられる。 演奏、録音もそれらに華を添える素晴らしいもの。

    たんかし .

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  • カイルベルトの「マイスタージンガー」目当てに購入。...

    Posted Date:2025/01/20

    カイルベルトの「マイスタージンガー」目当てに購入。質実剛健、贔屓のクレア・ワトソンが聴けるのも嬉しい。紙ジャケの作りが丁寧なのも良い。しかし…アリア集も悪くないが、やはり「タンホイザー」が無いのはいかんでしょ!

    umibouzu1964 . |60year

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