モーツァルトが作曲した最後のミサ曲、未完の傑作『大ミサ曲』ハ短調をサヴァールが録音しました。もはや「音楽家」という一言では語れない哲人サヴァールが宇宙的スケールで感動を巻き起こします。未完部分は若くからサヴァールのアンサンブルで演奏する傍らアシスタントも務め、フレスコバルディからストラヴィンスキーまで広大な時代に精通するルカ・グリエルミが、モーツァルト自身の作品やスケッチに基づいて補筆・完成したというのも注目です。
ミサ曲ハ短調は、1782年8月4日に父の返事を待ちきれずシュテファン教会で挙式したモーツァルトが、新婦をソリストに起用した思い入れ深い最も個人的な作品ともいえます。未完の部分の作品は、諸説ありましたが今では1782〜83年頃の作曲とされています。初演は1783年にコンスタンツェがソプラノを務める形で行われました(モーツァルトは既存のミサ曲から一部を転用して初演したと考えられています)。
未完の部分や存在しない部分については、ロバート・レヴィンがモーツァルトの作品などから補筆完成させた版が一般的に演奏されることが多いですが、ここにあらたに生まれたグリエルミ版は、可能な限りモーツァルトの原資料をそのまま用いることを第一に、既存の主題に基づく再構成や新たな作曲を最小限にとどめることを意識したものとなっています。一音一音が稀有な明瞭さと感情をもって響き渡り、聴く者をモーツァルトの創造の核心へと誘います。この伝説的作品の真の輝きがついに明らかになったといえましょう。終曲の「Dona nobis pacem」はモーツァルトのフーガ主題などのスケッチをもとに、モーツァルトのオリジナルとなる40小節を含む、103小節のフーガ楽曲となっていますが、『ジュピター』終楽章を思わせるような世界に、グリエルミとサヴァールだからたどりついたモーツァルトの創造宇宙を感じるようです。バロック音楽愛好家やモーツァルト・ファンにとっても必聴の録音です!(輸入元情報)
II. グローリア
2. Gloria in excelsis Deo. Allegro vivace(合唱) 2:17
3. Laudamus te. Allegro aperto(ソプラノII) 4:39
4. Gratias agimus tibi. Adagio(合唱) 0:54
5. Domine Deus, Rex coelestis. Allegro moderato(ソプラノI&II) 2:46
6. Qui tollis peccata mundi. Largo(二重合唱) 3:31
7. Quoniam tu solus sanctus. Allegro(ソプラノI&II、テノール) 3:51
8. Jesu Christe. Adagio(合唱) 0:32
9. Cum Sancto Spiritu. Allegro(合唱) 3:53
III. クレド
10. Credo in unum Deum.* Allegro maestoso(合唱) 3:05
11. Et incarnatus est.* Andante(ソプラノII) 7:44
12. Crucifixus - Et resurrexit.* Andante - Allegro(ソプラノI) 6:31
13. Et in Spiritum sanctum, ≪ Tempo di Ciaccona ≫.* Adagio - Primo tempo(合唱) 4:14
IV. サンクトゥス
14. Sanctus.* Largo(二重合唱) 1:14
15. Hosanna in excelsis.* Allegro comodo(二重合唱) 1:56
16. Benedictus. Allegro comodo(ソプラノI&II、テノール、バス) 4:34
17. Hosanna in excelsis [da capo].* Allegro comodo(二重合唱) 0:51
V. アニュス・デイ
18. Agnus Dei.* Andante moderato(ソプラノI、合唱) 4:00
19. Dona nobis pacem.* Allegro - Adagio(合唱) 4:14
「III. クレド」(Credo in unum Deumは合唱とバスのパート、Et incarnatus estは声楽部と管楽とバスが完成。未完楽章)
10. Credo in unum Deum〜器楽パートを、声楽パートに基づいて再構成
11. Et incarnatus est〜オーケストラの弦楽パートを補完
12. Crucifixus - Et resurrexit(ソプラノI)〜『悔悟するダビデ』の第8曲アリア「Tra le oscure ombre funeste(暗く運命的な影の中で)」をもとに、ラテン語のテキストをあてはめ、終結部のみを作曲。
13. Et in Spiritum sanctum〜ミサ曲の作曲時期とほぼ同時期の1780年に作曲されたハ長調ミサ曲 K.337の、チャッコーナのテンポによるクレド(未完成、頭から136小節のみ現存)をもとに、楽器編成と合唱の編成を10. Credoに合わせ、ラテン語の歌詞を合わせたもの
「IV. サンクトゥス」
14. Sanctus(二重合唱)
15. Hosanna in excelsis(二重合唱)
17. Hosanna in excelsis [da capo](二重合唱)
〜いずれも合唱パートが5声のみモーツァルトのオリジナルが現存。既存の器楽の重複から声部を復元し、二重合唱の8声に素材をより良く分配することなど、修復作業は限定的なものとなっています。
16. Benedictus(ソプラノI&II、テノール、バス)〜モーツァルトのオリジナル。
「V. アニュス・デイ」(モーツァルトの楽譜は残されていない)
18. Agnus Dei(ソプラノI、合唱)〜本ミサ曲のKyrie eleisonおよびソルフェッジョ K.393の第2曲をもとに再構築
19. Dona nobis pacem(合唱)〜モーツァルトのオリジナル・スケッチからの40小節を含む、トータル103小節の楽曲を新たに作曲。モーツァルトが二重の四声フーガを構想していたことがスケッチから明らかであると考え、残されている素材(第1主題、第2主題、2つの主題が結合する箇所など)から「フーガの設計図」を起草し、いくつかのディヴェルティメントと最終コーダを一から作曲しています。(輸入元情報)