ベルナール・デュシャトレ Review List

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  • 今若い人でロランを読む人はどれほどいるのだろうか?...

    Posted Date:2014/03/24

    今若い人でロランを読む人はどれほどいるのだろうか?もう50年ほども前、我国でロランの名声は高かった。理想主義、平和主義の理念的支柱として、そしてその”理念”的支柱の土台の健全さを保証する彼のベートーヴェンへの帰依。あの時代、そういった”理想”、”平和”は政治的には”左翼”の看板でもあった(・・・かのような様相を呈していた)。それは、ロランがソヴィエトを熱烈に支持したことと相似形でもあった。 第一次大戦中、「ジャン・クリストフ」によってノーベル賞を受賞し、「戦いを超えて」と題された一連の社会評論によって国家の枠組みを超えた人道的平和主義を呼びかけたロランの言説は、情熱と理性というともすれば相反することも多い人間の両面を統合できるヒューマニストとして説得力を持っていた。当然、独仏両国で”国境を越える”ことを良しとしない”愛国的”勢力の反発にも侮辱にも晒されるけれど、「ジャン・クリストフ」の著者の政治的発言は”理想”の現実的な実践としてその(将来に向けた)倫理的優位性は(今も?)誰も否定はできないものだった。 しかし、彼の”理想”は戦後寧ろ戦前よりも露骨になったかのような戦勝国のブルジョワ帝国主義的行動の前では無力であったためか、彼はプロレタリア”革命”を実現したソヴィエトに共感を寄せていく。特に1930年以降イタリア、ドイツでファシズムが勃興するに及んで、その暴力的・強圧的ナショナリズムに対抗しえる勢力としてソヴィエトを積極的に支持するようになる。特に、ドイツにおいてヒトラーが政権を奪取した後は、唯一ヒトラーを阻止できる国としてソヴィエトおよび共産党(運動)を擁護してゆくようになる・・・・・既に、スターリンによるソヴィエト国内での弾圧・粛清が行われるようになっていたにも係わらず・・・・・そして、周囲からもヒトラーの暴力を非難しながらスターリンの暴力を擁護する矛盾を指摘されていたにも係わらず・・・・・。ロランは安易でお手軽な社会主義・共産主義イデオローグとは異なり、自身は決して共産党には入党しないし、日記においてはソヴィエトの弾圧に激しい失望を書き付けている・・・・にも係わらず、公にそのことを公言するのはヒトラーを利することになるとして拒否し、あからさまなソヴィエトの西欧に対するプロパガンダに乗ることも厭わない・・・・いずれ、ソヴィエトは独裁を脱して真のプロレタリア革命を達成するだろう、と言う期待をかけて、自分が擁護しているのはスターリンではなく”ソヴィエト”なのだとしながら・・・・。 そして、それは最終的に1939年の独ソ不可侵条約によってヒトラーとスターリンが手を結ぶという形で決定的に裏切られる。それ以降1944年の死に至るまで、ロランは政治的には沈黙する。苦く、苦しい悔恨の中で彼は宗教にも近づくが彼はカトリックの伽藍の壮麗さを賞賛しながらもその敷居の前で立ち止まり、過ちを犯すことが自分に課せられた役割だったのだろうかとも思いながら、結局彼が慰めと救いを求めるのはベートーヴェンへの回帰だったという。 戦後、我国における左翼運動の過ちはロランの過ちと相似形をなしているようにも見える。そして、そう言ったイデオロギー論争の根の深さは本書に見られるようなロランの評価が、ソヴィエトが崩壊しロランの名が殆ど忘れられかけられている”今”と言う時代を待って漸く可能になったことにも表れている。 ロランの生涯を顧みることは、理想主義・・・と言う理想が抱える矛盾を考えることでもある。その矛盾は現代においても身近に至る所にある・・・憲法改正、震災復興、原発問題、歴史認識、領土問題、etc. etc.。 ロランの過ちから学ぶことの出来る教訓は多くあるのだろうけれど、それらの全てを学んだからと言って、それで全ての誤謬から逃れることが出来るわけでもなかろうとも思う。真実を見抜きそれに殉じる試みは必ず失敗に終わるのかも知れない。その、一方で第2次大戦後のEU結成の長く粘り強い道のりにロランの理想主義の木霊のようなものを聴くような気もするのも事実である。 そう言ったロランの理想に共感するにせよ、しないにせよ、”理想”のもつ(社会的)意味を再考させてくれるロランの歴史を記述して本書は秀逸である。

    yk .

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