ウィルコ・ジョンソンのギター・プレイの真骨頂である、切れ味鋭いカッティングが堪能出来る作品といえば、1975年にリリースされたドクター・フィールグッドの、記念すべきファースト・アルバム、英国ロック界の隠れた名プロデューサー、ヴィック・メイルがプロデュースを担当したダウン・バイ・ザ・ジェッティー - Down By The Jettyに満場一致で決まりではないだろうか。1975年というそれなりに録音技術も整い進んだご時世にあえて、モノラル録音、しかも一切のオーヴァー・ダブなしという、いわゆる一発録りで録音された生々しい音が魅力の名盤の誇り高き一枚である。ブルースやR&Bを下敷きにしながらも、ウィルコ・ジョンソンの掻きむしるようなカッティングと、破天荒なビート、リー・ブリローの味わい深いヴォーカルとハープが組み合わさったドクター・フィールグッドの既にその時点で確立された個性的なサウンドはその後のパンク・ロックにも強い影響を与えたと言えるだろう。ギター・プレイに関して言えばカッティングする右手を休める事無く6弦全てをピッキングするという凄まじいプレイがウィルコ・ジョンソンという男の唯一無比の個性を確立している。 強いてもう一つウィルコ・ジョンソンのカッティングが楽しめる盤を紹介すると、やはり76年に発表されたライヴ盤、殺人病棟 ? Stupidityになるだろうか。チャック・ベリーやルーファス・トーマスのカヴァーも交えつつ、スタジオ盤では味わえないライヴならではのヒリヒリした空気のなか、ダイレクトに響くウィルコ・ジョンソンのカッティングもまた格別である。