Anthology Of Mongolian Khoomii

歴史的録音から世界的な広がりまで驚異の喉歌ホーミーを様々な角度から紹介する２枚組！

音楽ファンの多くが神秘と感じる歌唱法のひとつは、やはりモンゴルやその周辺の伝統音楽で聴かれるホーミー（トゥヴァではフーメイ）ではないでしょうか。英語では“Throat Singing”と訳され、日本語でも“喉歌”として知られるホーミーは「喉を詰めた声による喉頭音源の生成、舌や口唇の形状を調音運動によって調節し、声道の共鳴周波数を制御することによって実現される発声法」（Wikipediaより）とされていますが、理屈だけでは理解し難い謎めいたそのサウンドは、一度聴いたら忘れることはできません。また西シベリア、モンゴル、カザフスタンにまたがるアルタイ山脈周辺で放牧などをして暮らす人々に伝わるホーミーは、当地で古くから盛んだった叙事詩の歌を装飾する目的で発達したものと言われています。そんなホーミーの歌手やグループが過去から現在に掛けて残した音源を総括した２枚組アンソロジー作品がこちら。制作はフランスの人気ワールド・ミュージック・レーベル“Buda”が担当しました。

2016年にフランスでリリースされた本作には1954年から2016年までに録音されたホーミーに関係した音楽がトータルで43曲収録されていて、そこにはそれまで未発表だったトラックが28曲も含まれています。そのうちディスク１には本プロジェクトのために収録されたフィールド録音音源のほか、当時ソ連と近い関係にあったモンゴル人民共和国時代（1924-92）の国営ラジオ番組用に収録したものや、ホーミーの歌声が入った50〜60年代の商業向けレコードなど、歴史的価値のある音源などで構成されています。

さらにディスク２の方は、90年代後半以降、地元や欧米のマーケット向けに制作された作品からピックアップされた音源が中心で、ホーミーを用いた様々な融合音楽や、実験的なアプローチを目指した音源など、ホーミーの広がりを感じさせるものが数多く収録されています。中にはホーミーを初めて取り入れた映画音楽のサウンドトラックや、ヘヴィなロックとの融合を目指したパイオニア的グループでフジロックにも出演経験のあるアルタン・ウラグの音源、さらにライス・レコードでも紹介したアルタイ・ハンガイや、ポリフォニック・ホーミーを取り入れたクスグトゥンの音源などもこちらに収録されています。加えて写真や解説が満載された47ページ・ブックレットは、高い資料的価値があります。

ホーミーの様々なスタイルや、その音楽的広がりをダイジェストに知れる、まさにホーミーの決定盤といった内容。ワールド・ミュージック・ファンであれば是非手元に置いていてほしいの１冊です。

●日本語解説／帯付き


（メーカーインフォメーションより）