Commonwealth Blues

BBC放送の「Vynyl BBC Transcription」には、“El Cuartet De Tubby Hayes”と記されていたそうだ。なんと曲のダブりはあるにしても20曲の全曲完全未発表音源が発見された。しかも、1965年のGordon Beck Trioをバックにしたワンホーン・カルテットの演奏だ。タビー・ファンにとって、近年、ＣＤ化、リマスターも含めて次々登場するタビー作品の中でも見逃せない発売となった作品。
冒頭での紹介やトランスクリプションへの記述から想像してスペイン語圏への放送用にパッケージされていた演奏家かもしれない。冒頭の“The Son is You"一曲で、麻薬禍など問題も多いタビーだがこの日のコンディションが素晴らしことが判る。伸び伸びした音色と泉から沸き出るように流れ出してくるソロのフレーズは、英国が生んだ、いや50〜60年代ヨーロッパ最高のテナーとして君臨したタビーの「伝説」を明らかにする演奏だ。“Speak Low”の長く伸びる音色はズート・シムズ絶頂期にも匹敵する驚愕のブローイングだ。暖かく柔らかく、そして、熱い。

トニー・コロンビーのバンドを卒業し、タビ−のバンドな加入、名作『100% Proof』(Rec.65-8)にも参加したGodon Beckも素直なバッキングで御大に対抗しようとしている。 しかし、タビーが凄すぎる。あふれ出るフレーズが止まらない、インスパイアーされたベックも心なしか右手が軽い。さらに明らかにジェフ・クラインは、タビーのソロのあとで、ビートが弾んで来ているのが聴き取れる。４分弱とは思えない濃い内容の演奏だ。

ジング的なテーマ・ブルースを挟んで、ＭＪＱお馴染みの�Fではタビーの非凡な才能がヴァイブラフォンの演奏を聞かせる。上手い。短く纏めながらもソロも簡潔。
�Gもヴァイブをフィーチャーしたジェントルな演奏。この作品でタビーのヴァイブを聴く方は驚くだろう。
�Hも同じくヴァイブの演奏、この曲でも簡潔に明瞭な触れずでスイングするタビーのヴァイブが聴ける。よく聴くとフレーズはテナーサックスっぽい。続くベックが霞んでしまうほどタビーのプレイがユニークだ。クラインもソロを採るがタビーのレベルが抜けている。

テーマ･ジングルを挟んで今度はフルートの演奏だ。“Alone Together”も同じように素晴らしくブルージーでジャンプする見事な演奏だ。今日のタビーは紙がかっている。本当にフレーズが流れ出るのが止まらない。しかも原メロディを生かした歌うメロディだ。ここではベックが健闘！
�L�Mもフルートの演奏が続く、お馴染みのヒット曲�Mもソロ・パートでのアイディアの弾け方が素晴らしい。しかも、全ての音程がいい。肺活量が余っている様な最後の一押しが明らかだ。
さらにジングルを挟んで�Pもフルート。演奏が凄いだけにテナーが聴きたくなってくる。
人気曲�Qヴァイブでの演奏、ここでも楽器の機能を上手く使った演奏が展開、和音での音の厚みを重ねていく。
タビーのオリジナル曲�Rもフルートで演奏される、ここではこの時代の息吹きを感じさせながらも最後はローランド・カークのように終わる。

テナー・ファンには、やや不満が残るのは致し方ない。添えほど

Tubby Hayes(ts=1,2,3,4,5,16,20,fl=11,12,13,14,15,17,vib=7,8,9,18,19,20)Gordon Beck (p)Jeff Clyne(b)Johnny Butts(ds) : Recorded in summer of 1965 at Kensington Studios in London England.

The Complete unedited and previously unreleased 1965 BBC transcription recordings.