「トーキョー アヴァンギャルドの精華」
*新宿のピットインで、「神々の骨」のライブを聴き、もの凄い衝撃を受け、その衝撃の深さが信じられなくて、「prayer」「月の歴史」とトリニテの3部作を買って繰り返し聴きこんだ。結果、さらに深くとりこになってしまったのだった。書きたいことはありすぎる。
*生と死の幻想、エロスとタナトスの深淵、それにしてもこの独創的なやさしさと生き生きとした懐かしさはどこから来るのだろう。それらが極限まで洗練された豊饒な曲想と演奏によって支えられているのだ。メシアン・サティ・シェーンベルク、クリムゾン、私の中に大好きな音色が次々と甦り、しかもそれらか混然一体となって泉のように湧き上がってくるのだ。曲想の本質は極めて現代音楽的なのにこんなにも聴きやすく飽きないのは、演奏の本質がジャズであり、自由な創造性に満ちているからだろう。四人の演奏者の力量がすごい。
*聴きこむごとに謎は深まるばかりだが、なぜか寺山修司を思い出したとき、懐かしさの一因は解けた。これは新宿アヴァンギャルドの昇華・結晶でもあるのだ。それがこれだけ極限的に洗練されると、もはやこの上なくユニークに現代日本的と言いたくなる。「カワイイ」や「スシ」を超える最新の日本ブランドに成り得る可能性も追究して、繊細な現代日本文化の宝石の一つと称えられるようになってほしい。
*作曲者のshezooさんの音楽的すそ野の広さは想像を絶し、成熟した大人の世界でもあるが、まことに不思議なことに、私はそこに風のように走りすぎる、透明でそれでいて激しい少女の影を常に感じる。この少女は、かって中也や鈴木翁二が見た同じ旅人やサーカスの情景に、激しく心を揺さぶられたのではないかと想像してしまう。彼女がどのような存在であったかはわからないが、魂の奥にまで届くような とてつもない実在感をその曲の中に感じ、ハッとすることがある。