ガンズを教えてくれたのは高校時代の友人でした、彼はアメリカ帰りのイカした奴で、「今向こうじゃコレが凄いことになってる」と渡されたのがアペタイト・フォー・デストラクション(Appetite For Destruction)でした。彼曰く「このジャケット本当は違うんだけど、差し替え食らって裏面が表に来てんだよ」なんてエピソードもなかなかに衝撃的でした。で、部活とかやって帰るわけですが、そこにあの「シャナナナナ・ニーズ・ニーズ!!」。書いていてもあの熱い感覚がよみがえるようで、友人たちがドリカムなどを貸し借りするのを横目に見ながら、登下校に聴いたものです。本当にこれがデビュー作か?と疑いたくなるような出来のアルバム、捨て曲なし、最初から最後まで聞ける本当にナイスな一枚。スラッシュとイジーがいて、スラッシュがリード・ギタリストってことはコイツの方が凄いんだな、と思いながらジャケットの小さい写真を眺めていました。そこに映っているのはちりちりの黒髪の上に黒のシルク・ハットを被り、くわえタバコ、右手にジャック・ダニエル、左手でレスポールのネックを押さえているあの姿。一度にたくさんの事をやってしまうという例のあの”スラッシュ・スタイル”(勝手に命名)です。とにかくこの時期のスラッシュをはじめとしたメンバーには、どこかいかがわしい妖艶な魅力があって、よく雑誌では”古臭い”だのと書かれているのを目にしましたが、十分に日本の高校生には刺激的なものでした。
メンバー間のトラブル、マネージメントとの問題、ドラッグ濫用の噂・・・バンドは過激さを売りにしながら、同時にその過激さに食いつぶされつつ、それでも坂道を転げ落ちるように雪ダルマ式に巨大化していきます。そしてまず脱退してしまったのがドラムのスティーブン・アドラー。ドラッグを克服できなかったスティーブンはバンドから離脱してしまい、この時にイジーは「あのスティーブンの押して引いて、っていうスイングするグルーブ感が無くなったのはバンドにとって痛かった」と語っています。結局バンドは後任に元カルトのマット・ソーラムを迎え入れてこの困難を切り抜け、91年にユーズ・ユア・イリュージョン1(Use Your Illusion 1) 、2を2枚同時リリース。毎月のようにロック雑誌に載る記事の中で、「何故2枚組にしなかったのかって?お金がないキッズは、1枚買って友達どうし貸し借りできるだろ」とアクセルが語っていたのを思い出します。
そしてこの時期からバンドはピタリと活動を止めてしまいます。そしてメンバーがどんどん減っていきます、それは繁栄を極めた一族がバラバラとなっていく過程を眺めるようです・・・。その過程はもはやみなさんご存知だと思いますので割愛します。スラッシュも脱退することになるわけですが、その原因となったとも言えるのが95年に始動したプロジェクト、スラッシュズ・スネイクピット。このバンドは元々暇つぶしのような形で始められたようで、ガンズ仲間であるドラムのマット、ギターのギルビー等も参加し和気あいあいと、なんてことは無く「やりたい事をやる環境がないから作ったのさ」などと不穏な発言を残しています。ファースト・アルバムとなったイッツ・ファイヴ・オクロック・サムホエア(Its Five O Clock Somewhere)、内容の方はかなりストレートなハードロックが炸裂しており、スラッシュ的にひずみ度:80といったところです。(スパゲッティを100とした場合)このスネイクピットですがガンズ本体がから完全に離脱した96年以降、皮肉なことにスラッシュの活動の中心となります。レーベル間のトラブル等に合い、なかなかリリースされなかった2ndエイント・ライフ・グランドもリリースされ、こちらでもスラッシュ独特のブルースを基調に据えた骨太なハードロックを展開しています。ちなみにひずみ度は75です。