Discover Who We Are

1962年、チェコ出身のベーシストRobert Balzarのピアノ・トリオ作品。このトリオは1996年に結成され、1998年『Travelling』(1988 Czech Radio Jazz Test: CD of the Year受賞)でアルバム・デビュー。2000年に『Alone』(Best Czech CD of the Year、2000 Best Group of the Year受賞)、2005年に『Overnight』(Czech Grammy Awardノミネート)という3作品をリリース。更にこの間もトリオは、女性シンガーYvonne Sanchezの『Invitation』(2002年。Czech Grammy Awardノミネート)、John Abercrombie(g)と共演した『Tales』(2008年)、Dan Barta(vo)と共演した『Theyories』(2010年。Czech Grammy Awardノミネート)など、多岐にわたるレコーディング活動と世界中のジャズ・フェステイヴァルへの出演などを行ってきた。

本作は、2005年以来、8年ぶりとなる純然たるトリオ作の第4弾となる。デビュー以来、不動の3人で活躍してきた彼らだが、2012年末にピアニストがStanislav MachaからJiri Levicekへ交代。新メンバーでの初録音である。彼は、バルザールと同じくチェコ出身の1984年生まれのピアニストで、リーダー・トリオ作『Returns』(2008年)もリリースしている。そのリリカルだが、時にアグレッシヴとなる2面性を持ったスタイルが、この新作『Discover Who We Are』でも存分に発揮されているのだ。

曲は、バルザールのオリジナル4曲、レヴィチェクのオリジナル2曲、そして3曲のカヴァーで構成。スリリング感溢れるピアノのイントロで、一体何が起こるのか予想不可能なM1。その後、メロディアスなテーマが登場し、フリーのピアノソロが展開〜そしてリズム・インし怒涛のソロ。これが聴き応え満点で、新メンバーのお手並み披露というべき大きな聴きどころだ。更にベース・ソロ、ドラム・ソロと続く大曲と化し、まさに新トリオとしての魅力をこの1曲で魅せ付けたといっても過言ではないだろう。

他、リリカルでメロディアスなピアノを前面フィーチュアした、限りなく音数を減らして静寂の美を追求したバラードM2、変拍子を効果的に交えた躍動感あるM3、バルザールの和音を多用した美しくも超絶なベース・ソロ曲M4、優しく爽やかな魅力溢れるM6、再び緊張感・スピード感満載のM7など、美しいメロディーと非4ビートによる刺激的なリズム、3人のインプロビゼーションが渾然一体となり生み出された、コンテンポラリー・ヨーロピアン・ピアノ・トリオの逸品となっている。

録音はニューヨークのシアー・サウンドで行われ、エンジニアはグラミー受賞のJames Farber(Brad Mehldau, John Scofield, Avishai Cohen)、マスタリングはMark Wilderが担当。ピアノ、ベース、ドラムが持つ魅力と各プレイヤーの細部に渡るタッチを絶妙に収録表現し、音質的にも素晴らしい出来となっている。チェコが生んだ「リリカル&スリリング」なピアノ・トリオ作の登場だ。

ROBERT BALZAR / ACOUSTIC BASS
JIRI LEVICEK/ PIANO
JIRI SLAVICEK / DRUMS