映画作家ストローブ＝ユイレ　あなたの微笑みはどこに隠れたの？

二人組の特異な映画作家であり、夫婦でもあるジャン＝マリー・ストローブとダニエル･ユイレは、北フランスのベルギー国境近くのトゥルコワンに1997年に創設されたル・フレノワ国立現代芸術スタジオで、アーティスト・イン・レジデンスとして、1999年秋のワークショップ用に『シチリア！』第３版の編集を行なった。
『あなたの微笑みはどこに隠れたの？』は、その彼らの作業過程を、『ヴァンダの部屋』（2000）のペドロ・コスタが６週間、150時間を費やして記録した素材を編集したＤＶ映画である。映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」の元寄稿者で、現在は先鋭的な映画製作・配給会社カプリッチ・フィルムを主宰するティエリー・ルナスが協力している。撮影用の照明は一切用いていない。ストローブ＝ユイレのあまりに厳格な編集作業は１日に５から10カットしか進まない。ワークショップ参加者は、初日は30人、翌日は15人、最後は僅か２人だったという。
　本作はもともとＴＶ番組『われらの時代の映画作家』のストローブ＝ユイレ篇として制作され、アルテ・フランスにより2001年７月11日に放映された。同時収録の『映画作家ダニエル・ユイレ、ジャン＝マリー・ストローブ』（72分）Cinéma, de Notre Temp : Danièle Huillet,Jean-Marie Straub, cinéastesはその放映版であり、編集が大きく異なっている。
『あなたの微笑みはどこに隠れたの？』は同じ素材に基づき、劇場公開用に再編集した長尺版である。題名は、ストローブ＝ユイレの『今日から明日へ』（96）の冒頭に出てくるフランクフルト路上の壁の落書きから採られた。2001年９月５日にヴェネツィア映画祭でプレミア上映されたが、カプリッチ・フィルムによるフランス劇場公開は2003年１月15日である。
同時発売の『シチリア！コレクターズ・エディション』ＤＶＤには、映画に先立ちストローブ＝ユイレが演出した舞台版の記録映像や、２人の助監督による２本のメイキング映像を収録しており、本作とあわせて鑑賞すれば、ストローブ＝ユイレの映画製作の発想や方法について一層理解を深めることができよう。

映画作家ユニットとして知られるジャン＝マリー・ストローブとダニエル・ユイレ夫妻のドキュメンタリー。『シチリア！』第3版の編集を行なう彼らの作業工程をたどる。映画本編とTV放送版の2ヴァージョンを収録。(CDジャーナル　データベースより)