イタリアのピアニストClaudio Filippini(1982生)の新作。メンバーは、前作「Facing North」と同じ、スウェーデンの重鎮ベーシストPalle Danielsson(1946生)と、フィンランドのドラマーOlavi Louhivuori(1981生)。 録音は、2013年4月17日〜19日です。若手とベテランで構成されたこのトリオの精神的な支柱は、Danielssonが担っていると思います。
一聴して、拍子抜けするほど素直で耳に優しい演奏に終始している、という印象を受けました。 何の気負いも衒いもなく、美しいメロディを美しいままに淡々と奏でることにこだわった、癒し系ジャズとでも言えそうな作品。
スリリングなオープニングの「Modern Times #Evolutions」 は、しかしテーマの提示のみで短く終わってしまいます。キラキラしたチェレスタの音が印象的。ピアノとの同時演奏でしょうか?
「As time Goes By」は、もちろん映画「カサブランカ」の主題歌。これを2曲目にもってくるところに、このアルバムの意図が込められているのかもしれません。映画同様、ロマンチックな演奏。 「Poses」は、綺麗なメロディを淡々と素直に奏でていく曲。 「The Sleepwalker」は、夢遊病者?のタイトル通り、ベースのボウイングから始まる幻想的な曲で、特定のリズムはありませんが、さほど抽象的でもなく、3人が繊細に演奏を繰り広げます。
「Breathing In Unison」は、穏やかなミディアムテンポで、耳に心地よいその演奏からは、ジャズというよりポピュラーに近いものを感じます。ここでもチェレスタが効果的に使われており、何となくPat Metheny Groupの世界を感じる部分も。
続く「Night Flower」も、ストレートにメロディが奏でられていく曲で、Danielssonが円熟のベースソロを披露。 「South Michigan Avenue」は、「The Sleepwalker」同様、特定のリズムを持たない曲で、ゆったりと進んでいきます。チェレスタのキラキラ音とベースの自由な感覚のソロが、ある種の雰囲気を醸し出しています。
「A Time For Love」では、ピアノが恋人たちのロマンスを語ってくれます。Danielssonが大人らしい控えめなサポートを。 「Secret Love」は、ミディアムテンポで、じっくり聴かせる曲。メロディを捻らず素直に演奏しているため、これもポピュラーソングの趣が。 「At the Dark End Of The Street」は、アルバム全体を象徴するような穏やかな曲で、メロディを美しく際立たせようとするFilippiniのピアノが印象的。 そして、アルバムは、静かに幕を閉じます。
休日に、遅めの朝食を取りながら、「今日は何をしようかな」とぼんやり考えながら聴くのに良いかもしれません。