Versao Brasileira

カエターノ･ヴェローゾの姪(ということは､マリア･ベターニアの姪でもある)にあたるシンガー､ベロ･ヴェローゾ｡1996年のデビュー以来コンスタントに作品をリリースし､飾らない自然体のヴォーカルと､カエターノにも通じる高い表現力を備えた知性派としてキャリアを積む実力者である｡2006年前作｢BELO, SAMBA!」では､本格的ルーツ･サンバへの造詣を表した作品を発表し､MPBのみならず､サンバ･ファンをも惹きつけ､サンバ･ノヴァ･シーンを形成する一人に数えられる新境地を確立した｡

そんな彼女の新作｢VERSAO BRASILEIRA」は､前作を踏襲しつつ､信仰色の濃いバイーア系アフロ･ルーツ･サウンドを組み込み､サンバを歌う喜びを自然に表現することに注力した1枚｡アフロ･ブラジル文化の理解者として知られる♀アーティスト､アナ･フラヴィアと共作したレパートリーをメインに､パーカッシヴながら､優しい聴き味のゆったりと大らかなフィーリングが包み込む｡この感触は､ドリヴァル･カイーミが愛したバイーアの世界観を思い起こさせると地元メディアでも絶賛｡先行シングルで注目されたタイトル曲M-6、若手SSWマルセロ･キンタニーリャ作のM-2､そしてUKの人気シンガー、エイミー・ワインハウスの大ヒット曲『BACK TO BLACK』のアコースティック･カヴァーで締めるラストまで､心地よく堪能｡肩書き以上に､よりシンプルなオリジナリティを以って演じることのできる､素晴らしいインタープリターである｡