●古代神話の時代、何千人もの人々の命を救ったペルシャの英雄に由来するというアラシュが音楽に対する興味を示すようになったのは、わずか2歳の時。まだヨチヨチ歩きだったにも関わらず、彼はエルビスに合わせて自分なりのダンスステップを踏むようになっていた。彼はテヘラン（イランの首都）で10歳になるまで育ったが、80年代末には両親と共にスウェーデンへ移り住んだ。

●彼の音楽に対する渇望は年を経るごとに大きくなり、大学を卒業してからは自分で曲を作ったり、プロデュースするようになる。彼は何時間、何日、さらに何か月もスタジオで過ごすようになり、いつしか彼は音楽と一つになったのである。

●アラシュのお気に入りの格言の一つに「我が人生こそ音楽、そして音楽こそ我が人生」というものがある。ある冬の晩のこと。スタジオでレコーディングをしていたアラシュは、突然声を失うという事態に直面した。誰もがすぐに治るものと思っていたが、結果は正反対だった。医者たちは、彼が再び声を取り戻すことはないだろうと告げた。「声を失った俺は一体どうしたらいいんだ。何で俺だけこんな目に逢わなきゃいけないんだ」打ちひしがれたアラシュはアルコールに溺れるようになった。彼は長い間沈黙を守っていた。しかし突然、何かが起こったのである。彼は自分の声を取り戻した。何がどうやって起きたのか誰にも分からなかった。故にアラシュ本人はそれを「奇跡」と呼んでいるのだ。

●沈黙していた間も曲作りを続けていた彼は、2004年9月に１ｓｔシングル「Boro Boro」（ペルシャ語で「我が道を行く」という意味）をリリース。この曲はスウェーデンのシングル・チャートで何と1位を獲得という大ヒットとなった。それはまるで、アラシュ本人の口癖「夢がかなうまで夢想し続けろ」が実現したような出来事だった。こうして一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたアラシュは、『Arash』（2005）『Crossfade（リミックス・アルバム）』（2006）『Donya』（2008）という3枚のアルバムをリリースし
スノーの大ヒット「Informer」のカヴァーである「Chori Chori」やレゲエ界のスーパースター＝シャギーと共演した「Donya」等ヒット・シングルを連発するTOPアーティストとして活躍している。