Awakening: 覚醒

ムガールと現代音楽の融合による静かで新しい音の世界！

旧ソ連アゼルバイジャン共和国出身のアーティストでもっとも世界的に知られている男性歌手がアリム・ガスモフ（1957- ）。同国の古典声楽〈ムガーム〉の使い手である彼は、青年期よりムガームを本格的に学び、80年代からは様々な音楽コンテストで優勝。90年代には国家を代表するアーティストとして広く認知され、99年にはラヴィ・シャンカールやヌスラット・ファテ・アリー・ハーンなども名を連ねるユネスコ最高位の音楽賞を受賞しています。そして93年に国際アルバム・デビューして以降は、〈驚異の歌声〉を持つ古典声楽家としてワールド・ミュージック・シーンにその名を轟かせたことのみならず、夭逝の天才ロック・アーティスト：ジェフ・バックリーとの異色の共演などにより、より幅広い層からの支持も得るようになりました。またライス・レコードからも複数の作品を発売しており、日本国内での知名度アップに少なからず貢献してきました。

その彼が、フランスのジャズ／インプロ／クラシック音楽のチューバ／セルパン／ベース奏者として知られるミシェル・ゴダールとの連名で2018年に発表したのがこちらの作品でした。ここではアゼルバイジャン伝統音楽の巨匠と、欧州のクラシック／ジャズのシーンで多大な功績を残してきた巨人とが、まるで対話するかのように互いの音楽に寄り添いながらインタープレイするスタイルが収録されています。アリムはもちろんタリハールを多用したムガームを、そしてミシェルはセルパンの演奏を中心に聴かせていて、さらにサルマン・ガンバロフ（ピアノ）、ラウフ・イスラモフ（ケマンチェ）という二人の実力あるアゼルバイジャン人音楽家がしっかりとバックを固めています。

ムガームで鍛え抜かれたアリムの歌声と、ミシェル・ゴダールのセルバンのくぐもった色彩感。即興性に裏打ちされた、まさに「覚醒」を促す前衛的サウンドが目白押し。そしてヴォーカル・チューンのみならず、ミシェル・ゴダールの卓越したセルバンと、透明感あるタッチのピアノ、東方的な音を紡ぐケマンチェによるインスト曲もあって、アルバムにこの上ない彩りを添えています。

なおブックレットにはドキュメンタリー映画のプロデューサーとして知られるオランダ人監督フランク・シェファーとミシェル・ゴダールとの対談が掲載。その中でシェファーは「これこそが今の本物のアヴァンギャルド」「これぞ未来に希望を抱かせる音楽だ」と彼らの音楽に大絶賛を贈っており、本作の内容の素晴らしさをアピールしています。

一貫してリリカルな静謐感が漂う、上質な1枚。その高い音楽性に痺れること間違いありません！

・日本語解説／帯付き

(メーカー・インフォメーションより)