メジャーでの初めての作品となると非常に気合が入っているものが多いイメージがあるが、このミニアルバムは良い意味で自然体というか、アンテナらしさが詰まった作品に仕上がっている。
とはいえ、1曲目にインスト曲「イダンセ街」があるのは驚いた。
リスナーから募ったという日常の音を基に音を紡いだ楽曲なのだが、これから始まるといよりかは潜っていくような惹き込む力を持っていたからだ。
そう、このミニアルバムはここから夜が始まっていくのだ。
続く「アルコール3%」。
お酒を飲んでちょっとフラフラしつつ、物思いにふけながら歩いてく姿が目に浮かぶ。
その中でも、詩で綴っている”これでいいのさ ちょうどいいのさ”という言葉が印象に残る。
アルコール3%を示した言葉ではあるが、バンドのらしさとも言える”丁度よさ”も醸しだしているようで、メジャーに行っても変わらない彼らの良さをしみじみ感じさせてくれる。
イントロから息を呑むような空気感を漂わせる「呼吸を止めないで」は、夜の世界の中で輝く星のような光を感じる。
メロディの懐かしさと歌声の優しさは、この世界観を愛おしいものに昇華させる。
「無口なブランコ」、「深海おまじない」は軽快な音色を奏でているが、歌詞では非常に寂しい情景を浮かび上がらせる。
特に「深海おまじない」は深海というタイトルの通り混沌として感じを漂わせながらも、そんな暗い世界を抜けて朝を迎えれば良いだけという前向きさに、思わず顔がほころびる。
タイトル曲でもある「モーンガータ」は存在感の強い楽曲だ。
”闇に向けて歌う”という言葉からもその信念を感じることができるが、その想いをより強く響かせるメロディと歌声に、洗練された音色と構成。
ここから始まっていくという想いが端々から滲み出ている。
そして、ここまで夜を歩いてきた彼らが遂に「ぼやけた朝陽」という軽快な疾走感と共に朝を迎えようとする。
アルバムを聴き始めたとき、ここから夜が始まっていくアルバム展開にここからどうなるのだろうと思ったが、最後に朝を迎えることで、聴き終えたときに非常に清清しい気持ちにさせてくれるのが嬉しかった。
夜から朝という流れを楽しめる1枚になってはいるが、個々の楽曲が全てシングルになれるのではないかというくらい際立っていて、それぞれの楽曲としても十分に楽しめる。
メジャー1stミニアルバム。
アンテナがここからまた始まります。