漢文脈と近代日本 角川ソフィア文庫

齋藤希史

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784044081089
ISBN 10 : 4044081085
フォーマット
出版社
発行年月
2014年05月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
272p;15

内容詳細

政治と学問、隠逸と感傷を軸とする漢文脈は、幕末の志士や、漱石・鴎外をはじめとする明治知識人たちの思考と感情の支えとなった。一方、機能化された訓読体は、文明開化のメディアとなり、新しい「文学」への道を用意する。漢文は言文一致で衰えたのか、いまなお日本文化の底に流れているのか―。大げさで古くさい文体でもなく、現代に活かす古典の知恵だけでもない、「もう一つのことばの世界」として漢文脈を捉え直す。

目次 : 序章 漢文脈とは何か―文体と思考の二つの極/ 第1章 漢文の読み書きはなぜ広まったのか―『日本外史』と訓読の声/ 第2章 国民の文体はいかに成立したのか―文明開化と訓読文/ 第3章 文学の近代はいつ始まったのか―反政治としての恋愛/ 第4章 小説家は懐かしき異国で何を見たのか―艶情と革命の地/ 終章 漢文脈の地平―もう一つの日本語へ

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • たま さん

    漢詩の詩選集(『いつかたこぶねになる日』)が面白かったのでこちらへ(2007年単行本、2014年文庫)。〈明治の知識人は漢文の教養があった〉とよく言われるが、この本は、知識の量ではなく、漢文が内包する枠組み(〈機能性と精神性〉、〈公と私〉など)が重要であるとし、それが明治の文学者の発想の根底にあって、時代の流れとともに変化してゆくさま(〈閑適と感傷〉)を論じている。論旨がすっきりしていて個々の作家論(鷗外、荷風、谷崎、芥川など)も面白い。とくに漱石は最近『草枕』を読んだところで興味深かった。

  • isao_key さん

    近代日本がそれまで長い間にわたって培ってきた漢文脈を近代日本がいかに扱ってきたかを前半では頼山陽を、後半では永井荷風を軸に探っていく。近代日本の漢文脈を考える上で外せないのは頼山陽『日本外史』だという。この本が幕末明治期のベストセラーとなったのは、武士がいかに行動すべきか、その指針を示し歴史を一つの流れで分かりやすく描き出したことが大きかった。明治期の少年たちが漢詩を作ることに熱中したのは、平仄の組み合わせによるパズル的な面白さとともに、知識量と頭の回転の速さを競うことで、聡明さを他人に誇れたからだった。

  • きさらぎ さん

    正式な文章としての漢文とその読解としての訓読文(近世)であったのが、明治には訓読文の方が、教育勅語や法律文として用いられ正式な文章となり、漢文は趣味教養の世界に押し込められていく。「士人」と「文人」とを包括する一つの世界観であった「漢文脈」「漢文世界」が次第にその包括性を失っていく過程を、齋藤氏の筆は豊富な実例で丹念に辿ってゆく。漢詩人の父を持ち漢文世界が血肉ともなり反発の元ともなった荷風と、外部から巧みに素材として漢文を「扱う」谷崎。春台と南郭、鴎外と漱石、谷崎と芥川。対比が非常に鮮やかでワクワクした。

  • ひつじ さん

    そもそも訓読文がどのように成立していったかも分かっていなかったので、それを知れただけでも十分だったが、漢文の素養が求められたのは割と最近だったというところから、漢文脈として近代の中で繋がっていく過程を描いていることが面白かった。漢文は文化を含むものであるというのは、言語そのものが文化を含んでいるので当たり前だとは思ったが、しかしその文化をもつ漢文脈を分析し、どのように近代日本と関わってきたのかの流れを解釈しているところは、私自身が漢文云々疎い部分もあり愉快な視点で読んだ。

  • ひよピパパ さん

    近代以降の文人と「漢文」との関わりを論じる。「士人的エトス/文人的エトス」「公/私」等といったキーワードを通して、近代以降の文人の果たした役割および文学の動向を跡づけている。いわば漢文を思想史的に描いた一書と言える。日本の近代文学が、漢文脈からの離脱あるいは漢文脈を否定するところから起こり、現代もその延長上にあるとする主張には、なるほどと納得。今後どのように漢文と向き合って行くべきか、考えさせられる。

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