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シンフォニスト諸井三郎畢生の名作、
ドイツ後期ロマン派直伝の重厚な大交響曲
日本人作曲家、諸井三郎は、クラシック・ファンにはスコアの楽曲分析執筆でもおなじみの存在。彼は、作曲家の諸井誠氏や財界人の諸井虔氏の父親でもあり、本業の作曲家としては、ドイツの正統的な技法を完全に身に付けた手腕の確かさと、シリアスな作風によって高い評価を得ていました。
特に、「交響的二楽章」と「交響曲第三番」は、ブルックナーやヒンデミットの作品との同質性が目立ち、マッシヴに咆哮する管弦楽の威力と、音型を重ねて前進する迫力に圧倒されます。
三楽章構成を好むなど、非ドイツ人としてドイツ流儀を重んじたフランクの交響曲に似た感触もあり、壮大でオルガン風の響きを聴いていると、諸井三郎こそ日本の生んだ最大のシンフォニストだという思いが強まります。
ことに、敗色濃厚な戦争末期に書かれた交響曲第三番は、三つの楽章に、「静かなる序曲:精神の誕生とその発展」「諧謔について」「死についての諸観念」といった重々しいテーマが設けられ、冒頭楽章の雄渾さ、スケルツォ楽章のブルックナー風の拡がり、最終楽章の、諦念と浄化に満ちた安らぎなど、ブルックナーの「第九」を強く想起させる構成の作品です。
滅び行く「大日本帝国」の中にあって、諸井三郎が音にした「日本人の白鳥の歌」と言える大作であり、マーラー「第九」の終楽章やシベリウスの後期諸作品、あるいはR.シュトラウス最晩年の傑作にも通じる、彼岸からの響きに満たされた崇高な音楽です。
諸井三郎(1903−1977)
■こどものための小交響曲 変ロ調 作品24(1943)
■交響的二楽章 作品22(1942)
■交響曲第三番 作品25(1944)
湯浅卓雄(指揮)アイルランド国立交響楽団
2002年9月、デジタル録音