台湾漫遊鉄道のふたり

楊双子

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784120056529
ISBN 10 : 412005652X
フォーマット
出版社
発行年月
2023年04月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
300p;20

内容詳細

昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴と台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り…国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。あらゆる壁に阻まれ、近づいては離れるふたりの旅の終点は―。

【著者紹介】
楊双子 : 1984年生まれ、台中市烏日育ち。本名は楊若慈、双子の姉(「楊双子」は双子の妹「楊若暉」との共同ペンネーム)。小説家、サブカルチャー・大衆文学研究家

三浦裕子 : 仙台生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。出版社にて雑誌編集、国際版権業務に従事した後、2018年より、台湾・香港の本を日本に紹介するユニット「太台本屋tai‐tai books」に参加。文芸翻訳、記事執筆、版権コーディネートなどを行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • ヴェネツィア さん

    台湾の現代文学。昭和13年からの1年間の、千鶴子(作家)の台湾各地への紀行、および台中での寄寓生活を綴る。当時、台湾は日本の植民地であった。本島人と植民者である日本人との間に生じる眼に見えない葛藤を描いていくのだが、歴史小説としての構成は相当に凝っている。読んでいて、真相はどうだったかと、ふと疑問に思いそうになるくらいに。そして、本作が優れているのは、それを感性化させるべく用意された、千鶴との百合小説としての側面である。否、むしろ、こちらこそが主題を背負っている。それは最初から最後まで小説の基調をなして⇒

  • 旅するランナー さん

    昭和13年(1938年)、日本統治下の台湾を舞台にした「美食×鉄道旅×百合」小説。魯肉飯、蚵仔煎(牡蠣オムレツ)、冬瓜盅(冬瓜丸ごとスープ蒸し)など、台湾グルメによる飯テロ小説であり、ふたりの女性の軽妙な会話を楽しめる漫画っぽさもあります。そして、本島人(台湾に住む漢人)と内地人(日本人)の関係性にも触れる歴史小説でもあります。「この世界で、独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはごさいません」という言葉に襟を正す思いです。

  • まーくん さん

    多層構造の物語の迷宮に迷い込んでしまいました。それはともかく、昭和13年、日中戦争が始まり皇民化政策が強化された日本統治下の台湾を旅する作家・青山千鶴子と本島人の通訳・王千鶴、二人の交流を描く。一年間、台中市内に住み、その地をベースに二人で台湾縦貫鉄道等に乗って北は基隆から南は高雄まで各地に講演旅行に出るのだが、行く先々で台湾特有の食べ物に出会う。この食べ物との出会いを介し、統治する側とされる側の、揺れ動く二人の微妙な心のあやを日本人作家・青山千鶴子の視点で追っていく。⇒

  • まこみや さん

    「この世界で、独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはございません」と、美島は言う。ここに作品のテーマが凝縮されている。青山千鶴子と王千鶴の関係も、大澤麗子と陳雀微の関係も、つまるところ〈内地(帝國)と本島(台湾)〉の関係の比喩であり、象徴と言えるだろう。宗主国と植民地との関係は、主人が従者にどれほど理解や親愛の情を示したところで、結局は主従関係であり、対等の友人関係にはなれないのである。最初は台湾周遊の観光資料として手に取ったが、それに止まらず、一国の、一個人のアイデンティティの問題として考えさせられた。

  • R さん

    日本統治時代、二次大戦がはじまる前くらいの台湾にて、日本の女流作家のお嬢さんが台湾鉄道に乗って、全土を旅する物語。美味しそうな台湾料理がたくさん出てくるのもいいが、当時の台湾の風俗が見える内容もとても興味深い。話は、二人の関係も超えて、対等平等とは何かを考える内容になっていて、それが安易に性別だけではないもっと根源的なものだと伝えるような内容でとてもよかった。百合要素も推しの一つだそうだが、淡いので、それよりも静かなる思想的主張が真面目に編まれた小説だった。

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人物・団体紹介

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楊双子

1984年生まれ、台中市烏日育ち。小説家、サブカルチャー・大衆文学研究家。2024年『台湾漫遊鉄道のふたり』(三浦裕子訳)が第10回日本翻訳大賞を受賞、同作の英語版が全米図書賞を受賞。現在は台湾の歴史を題材にした小説執筆に力を注いでいる

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