星のように離れて雨のように散った

島本理生

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784163914015
ISBN 10 : 4163914013
フォーマット
出版社
発行年月
2021年07月
日本
追加情報
:
229p;20

内容詳細

行方不明の父、未完の『銀河鉄道の夜』、書きかけの小説。三つの未完の物語の中に「私」は何を見い出すのか? 人生の岐路に立つ女子大学院生を通して描く、魂の彷徨の物語。

執筆に先立って著者は、以下のようなエッセイを寄せています。
=================
(前略)
 もうひとつ分からないのは、宮沢賢治のことだ。
 幼い頃、私はたぶん明確に宮沢賢治作品が嫌いだった。理不尽と唐突な怒りと自己犠牲に溢れ、常に死の気配がして、それでいて、熱くどろりとした生命力も感じる。正直、気味が悪かった。
 ただ、アニメ版の『銀河鉄道の夜』のビデオだけは繰り返し見ていた記憶がある。ますむらひろしさんのファンだったこともあるが、なにより、アニメーションと呼ぶにはあまりに深い銀河の闇に引き込まれた。
 私が一九八三年生まれで、映画が公開されたのは一九八五年なので、おそらく私が六、七歳の頃に失踪して、それ以来、行方不明の実父がまだいた頃に見ていたことも、関係しているように思う。
 だから、大人になり、宗教的な関心から賢治の作品を読み返すようになって、その面白さにようやく目覚めてからも、『銀河鉄道の夜』だけは自分の中でぽっかり浮いている作品だった。
(中略)
 私の手元には、消えた父の残した手紙が一通だけある。その文体からは、私が身内から聞いていた父の人物像とは、かなり異なる印象を受ける。

 この連載長編は、主人公の「私」と、消えた父親と、『銀河鉄道の夜』という三つの未完の物語をとおして、銀河の闇のむこうに消えたものを見つけたくて書き始めた。
 じつは数週間前まで、自分がこんな小説を書くとすら思っていなかった。ほんとうの意味で消えた父親について書こうと考えたことがなかったのだ。そしていきなり始まったということは、たぶん、そういう時期やタイミングが来たのではないかと思う。

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「私」をめぐる大いなる冒険の一つの答えが提示される物語をご期待ください。

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読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • starbro さん

    島本 理生は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本作は、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』オマージュ、春夏秋恋愛譚でした。星のように離れて、雨のように散ったのかなぁ? https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914015

  • さてさて さん

    『なんでだろうね。結婚って言われて嬉しい気持ちもあったのに、なにかが違うっていう気持ちが拭えなくて』 大学院で日本文学を専攻する主人公の春が「銀河鉄道の夜」と向き合っていく中に、ひとつの成長を見る物語。そこには、主に四人の人物と繰り返し対話する中に、前に進むための答えを見出していく春の姿がありました。「銀河鉄道の夜」を既読かどうかが物語の理解に差をつけるこの作品。読後、「銀河鉄道の夜」がとても読みたくなるこの作品。コロナ禍を背景にした物語の中に、島本理生さんらしい極めて繊細な物語を見た、そんな作品でした。

  • のぶ さん

    主人公は日本文学科大学院の原春。卒業を前に修士論文のテーマに悩んでいた。創作小説による修士論文と、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を扱った副論文を合わせて提出する事を考えていた。そして春は幼い頃に父が失踪していた。この失踪と未完の小説、それに「銀河鉄道の夜」が絡み合って物語は進行する。嫌な人は出てこない。恋人の亜紀やゼミ仲間の篠田と売野らが春を支えてくれる。話の根幹に失踪した父の存在が影を落としていて、それが春の現在の立ち位置を浮き彫りにしていた。読むほどに深いものが湧いてくるような作品だった。

  • 美紀ちゃん さん

    優しい話だった。 春と亜紀くん。 売野さんの存在がいい感じ。モヤモヤなことをなんでも相談できる相手は重要。 吉沢さんも。適切な距離をとって対話の中に明るいものを見つけてくれた。亜紀くんともこんなふうに、互いの中の優しく光る星を見つけるようなやり方をしたかったと気づく。 自分のことを客観的に話す事ができるようになった時に、「その話こそ物語と呼ぶべきもの」と吉沢さんに祝福される。 救済とは、理解のこと。

  • ひめか* さん

    文学部の院生の主人公・春の物語。宗教関係で家庭内がもめて、父が手紙を残して失踪するという暗い過去を持っているとはいえ、あまりにも面倒臭い女で好きになれない。私を愛してるってどういうこと?とか聞かれてもね…彼氏がいるのに、作家の吉沢さんにも気を取られたりとか、孤独な気持ちや寂しさを他人で埋めないと春は生きていけないのかもしれない。吉沢さんは良い人だな。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に対する考察や、自分との重ね合わせは院生らしくて良かった。周りがいい人だから救われているけど、もう少し自分に自信を持てたらいいよね。

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人物・団体紹介

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島本理生

1983年東京都生まれ。作家。2001年「シルエット」で群像新人文学賞優秀作、03年『リトル・バイ・リトル』で野間文芸新人賞、15年『Red』で島清恋愛文学賞、18年『ファーストラヴ』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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