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日本作曲家選輯 第7弾!
山田耕筰作品集
「日本の西洋音楽の父」といわれる山田耕筰は、若い頃ベルリンに留学し、カール・ヴォルフやマックス・ブルッフに師事、滞独中に、身に付けた音楽技法を駆使し、天性の豊かな感性をそそいだオーケストラ作品を幾つか完成します。
中でも、1912年に書かれた『序曲二長調』と、交響曲へ長調『かちどきと平和』は、日本人による管弦楽曲、交響曲の嚆矢となるにとどまらず、青年山田耕筰の覇気に満ちた創作意欲が十分に結実した大変聴き応えのある作品といえる仕上がりです。
交響曲『かちどきと平和』は、ロマン派の影響を多分に吸収した本格的な交響曲で、シューマンやブラームスなどのスタイルを踏襲した「急―緩―スケルツォ―急」の4楽章の形式に加え、オーケストラの編成もシューベルトの『グレート』などと同じく木管、ホルン、トランペット各2、トロンボーン3、ティンパニ1対、弦楽といった陣容となっています。
均整の取れた堅固な構造を持つこの作品ですが、独自の日本的な感覚も巧みに盛り込まれており、冒頭の粛然とした荘重なテーマなど、まさに日本人にしか書けない魅力にあふれています。
『序曲ニ長調』は、《かちどきと平和》に半年以上先立って作曲された作品で、今回が世界初録音。
卒業後もベルリンに残った山田耕筰は、この前衛芸術の拠点都市で、表現主義的芸術に触れる機会を多く持ち、同じ価値観を持つグループとの交友を深め、さらに独自の表現を追及します。
三木露風の詩に基づく交響詩『暗い扉』、斎藤佳三の詩に基づく交響詩『曼陀羅の華』。両作品は「死」をモティーフにした姉妹作として1913年に書かれており、4管編成をもつ大編成オーケストラが、《勝ちどきと平和》とは全く事なる音の魅力を伝えてくれます。作曲者いわく「ワーグナーの影響から脱却してR.シュトラウスの影響下でかかれた」この音楽、後期ロマン派の路線に日本情緒を取り込んだユニークかつ存在感のあるものとなっています。
このCDでは、厳しく妥協を知らないオーケストラ・トレーニングでどんな難曲も破綻なく演奏させることのできる指揮者、湯浅卓雄の棒の下、アルスター管弦楽団とニュージーランド交響楽団が演奏しています。安定したアンサンブルを持つ両オケは、湯浅の指示に柔軟に従うことができるため、日本的な雰囲気も的確に表現、堂々とした見事な演奏でまったく違和感がありません。
ナクソスのこのシリーズは、第1弾から一貫して録音の良さが高く評価されていますが、このCDでも遠近感と定位の見事な収録がなされています。
■序曲ニ長調(1912年作曲)(世界初録音)* (3:31)
■交響曲ヘ長調「勝ちどきと平和」(1912年作曲)
Moderato (8:45)
Adagio non tanto e poco marciale (11:21)
Poco vivace (5:47)
Adagio molto - Molto allegro e trionfante (10:20)
■交響詩「暗い扉」(1913年作曲) (10:53)
■交響詩「曼陀羅の華」(1913年作曲) (7:40)
指揮: 湯浅卓雄
アルスター管弦楽団 ニュージーランド交響楽団(序曲ニ長調)