刺青とヌードの美術史 江戸から近代へ NHKブックス

宮下規久朗

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784140911099
ISBN 10 : 4140911093
フォーマット
出版社
発行年月
2008年04月
日本
追加情報
:
19cm,235p

内容詳細

今日目にする七頭身美人のヌードとは、まったく異なる裸体表現が江戸時代に存在した。美人画や刺青画に見られる日本固有の裸体芸術が、明治期に西洋ヌードと出会い劇的に変容する様を描く異色の日本美術史。

【著者紹介】
宮下規久朗 : 1963年名古屋市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修了。兵庫県立近代美術館、東京都現代美術館学芸員を経て、神戸大学大学院人文学研究科准教授。専攻はイタリアを中心とする西洋美術史、日本近代美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • ヴェネツィア さん

    多分に示唆に富む著述だった。たしかに日本では江戸時代以前は裸体は秘められたものではなく、半ば普通に目にするものであった。したがって、春画においても女性の胸や足、手などは性的なメルクマールたりえなかった。足指は時として反り返され交接時の恍惚感を表現していたが、それとても姿態であり足そのものではなかったのである。性器ばかりが極度に強調されたのもこの故ではなかろうか。近代以降、日本は西欧流のヌード観を取り入れ、受け入れてきた。そして今があるのだが、お陰で我々はヌードやフェティッシュなものを享受できるのである。

  • ハイランド さん

    幕末明治の開国は、西洋と日本の文化の衝突でもあった。中世を経てヌードを描くにあたり、様々な意味付けが必須で、ヌードを唯の裸と分けて考えた西洋と、高温多湿の気候も関係しているだろうが、戸外での半裸が当たり前だが、それを凝視することを良しとしない文化の中、全裸ではない裸に即物的価値を込めた日本。どちらが上という議論は不毛だが、日本は結果西洋的道徳に飲み込まれていく。文明の衝突期に徒花のように様々なヌードが生まれ消えていった。特に生き人形に興味を持ったが多くが現存していないのが残念。著者初期の傑作と言える一冊。

  • syaori さん

    日本において西洋的なヌードがどのように受容されてきたのか考察した本。「闇の中に住む彼女たちに取っては、ほのじろい顔一つあれば、胴体は必要がなかった」という『陰影礼賛』的な淫靡な、または滑稽な裸の表現から、肉体そのものに美を見いだすヌードへ。明治期の芸術家たちが西洋美術に接し、それを日本的なものの中に取り入れようと努める様子は苦労が偲ばれて勉強になりました。それにもかかわらず、結局日本は「ヌードを芸術として消化吸収した」とはいえないという作者の結論は全くそのとおりで、異文化を受容する難しさを感じました。

  • 内島菫 さん

    日本人は、明治以前は人前で半裸や裸でいる機会が多く、また男女の体つきの違いに差をつけて見ることもなく、従って裸は性的な意味合いを持たず裸であってもじろじろと他人を見ないというマナーが当たり前に適用されていたという。裸が恥ずかしいとかエロいという見方は確かに一つの観念に過ぎず、貝殻を失ったヤドカリのように衣服を脱いだ人間は弱くみすぼらしいという感覚も一方である。西洋的なヌードのように、人格や人間性を剥奪したあくまで一個の物体としての肉体美を表しきってはいない日本の裸体表現を捉えるのは、思った以上に難しい。

  • gtn さん

    女性の行水や混浴に無関心であった日本人。一方で湯屋が覗き見用の双眼鏡を貸し出したり、生人形の淫靡さに興味を示す。それを、見えていても見てはならぬものを凝視することによって発生するエロティシズムと著者は説く。つまり、単純に裸体を罪と見做す欧米とは異なり、日本人は一元的に捉えることなく理知的に対処できたといえる。文化の寛容さを示す一例であり、誇りに思う。

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宮下規久朗

美術史家。神戸大学大学院人文学研究科教授・放送大学客員教授。東京大学大学院人文科学研究科修了。『カラヴァッジョ―聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞など受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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